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第16話
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~ハルが異世界召喚されてから1日目~
不良を撒いて図書館へと向かう中、ハルはラースの首が飛ぶ光景を思い出していた。なぜ自分は彼を助けることができなかったのか。そしてラースが指差された時、自分が指差されなかったことに安堵していた。
「違う!」
内なる自分と戦うハルは気を紛らわすためかステータスウィンドウを開く。もしかしたら自分の弱さを客観視したかったのかもしれない。
ステータスを見やるとMP、SP、魔力、抵抗力の数値が2も上がっていた。教室バトル・ロワイアルだけでなく2時限目の授業でもだいぶ魔力を使っていた分ステータス上昇に影響を与えていたんだとハルは解釈した。
<図書館>
「フレデリカ先生、魔法を防御するときにはどうすれば良いんですか?」
「3つ方法があります!」
フレデリカは即答し、3本の指をピンと立てながら説明した。
ひとつ目は、避けること。
ふたつ目は、相手が放った魔法と同等の魔力を防御したいところに込めること。
みっつ目は、相手が放った魔法と同等の魔法を唱えてぶつけること。もしくは相克の属性魔法を放つことで相手の込めた魔力よりも少ない魔力で打ち消すことができる。
「そしてこれができたら格好いいんだけど、相手よりも上の階級の魔法を唱えること」
「なるほど…相克って?」
水→火
↑ ↓
土←風
光→闇
闇→光
「ポ○モンでいう弱点みたいなものか…」
「ん?ポケ○ン?」
「あ~!なんでもないです!!それよりも!!」
ハルは取り繕いながら話題を変えた。
「風属性魔法を唱える魔物ってこの辺にいたりしますか?」
「この辺に?ん~この王都をでて南に真っ直ぐ行けば魔の森っていう所があってそこに生息しているグリーンドッグという魔物がウィンドカッターを唱えてくるわ」
フレデリカは近くにあった魔物図鑑を取り出してハルに見せた。
パッとみて、毛並みが黒いと思ったが良く見ると黒の中に緑を少し混ぜたような色だっだ。四つ足で獰猛な目付き。
──このイラスト書いた人絶対ドラゴンとか好きだろ!かっこ良く書きすぎ……
図鑑の中のグリーンドッグは今にも飛び掛かってきそうな躍動感を有していた。
──よし…コイツで4日目の予行練習を……
ハルは再び4日目の出来事を思い出した。悲鳴と血、何かが焼ける臭いと音、ラースの首が宙を舞う。
「…先生は友達を失ったことありますか?」
「どうしたの?突然……」
「えっと…友達が…その…魔物に襲われて…僕が近くにいたのに…僕は怖くて友達が襲われるのをただ見ていて……ごめんなさい!変なこと言って!それじゃあ僕もう行くね!!」
ハルは急いで外へ出た。
「あっ!ハル君!!…あるわ…私も……」
フレデリカは後ろ姿のハルに向かって手を伸ばすが、その手を力無く下ろした。
<魔の森>
「グルルルルル」
毛並みは黒だがよく見ると緑が混ざっている。そして、この獰猛な目付き。グリーンドッグとエンカウントした。
前足を伸ばし、後ろ足に力が入っているのがわかる。全身の毛が逆立っているのも確認できた。
「あ~これ完全に襲ってきますね。よし!こい!」
ハルは両腕に魔力を纏った。
「そういえば魔物ってどうやって魔法唱えるんだ?」
ハルが疑問に思うと、
「バウ!!」
思考に気をとられたハルに突然、グリーンドッグは鋭い牙で噛みついてきた。ハルは咄嗟にそれを避けると、尻餅をついてしまった。
「いやうてや!魔法を撃ってこい!!」
グリーンドッグは尻餅をついたハルに再び噛みつこうとする。ハルは右脚に魔力を込めて襲ってくるグリーンドッグの右頬を蹴った。
蹴られたグリーンドッグは5メートル程吹っ飛んだ。
「ぇ~めっちゃ飛ぶ……」
グリーンドッグは四つの足でヨロヨロ立ち上がり遠吠えをした。
「いよいよか!!」
ハルは立ち上がり、再び両手に魔力を込めた。しかし、森の中からグリーンドッグの群れが現れた。その群れは、さっきまでハルと対峙していたグリーンドッグの周囲に集まる。
「だから魔法うてや!仲間を呼ぶんじゃなく……て?」
グリーンドッグの群れから魔力が立ち込める。
「「「「「「「「アォォォン」」」」」」」」
グリーンドッグ達はそれぞれ大きく口を開け、中から緑色に光る魔法陣が出現すると、そこから風の刃がハルに向かって放たれた。
「いや…撃てとは言ったけど!」
鎌鼬の群れがハルに迫ってくる。ハルはボクサーのように脇をしめて構え、拳に魔力を纏う。最初に向かってくる風を右ストレートで殴り、打ち消した後、直ぐ様左拳を前に出して追随する風を打ち消した。しかし、ハルの足元目掛けて飛んでくるウィンドカッターには対処しきれない。咄嗟にジャンプをして回避できたはいいものの、残り7つのウィンドカッターが眼前に迫る。ハルは全身を魔力で包んだ。
魔力の壁によってウィンドカッターは消失するもハルはMPを大量に消費してしまった為、少し頭がくらくらする。
──くそ、魔力を一気に使いすぎた……
グリーンドッグのウィンドカッターを打ち消したハルは気付く。
──おそらくそんなに魔力を込めなくても防御出来る……
しかしウィンドカッターでラースの首が飛ぶ映像が頭から離れない。
魔力を適量に制御するためにも訓練しなくてはならないと悟ったハルは一旦グリーンドッグの群れを前にして、逃げ出した。
──あぁ……魔力を手に纏うのも相当集中してなきゃダメだ。それもあの数のウィンドカッターを処理しながらとなると……
その夜オデッサとは会わずにルナと合流し、孤児院に泊まる。
MP、SP、筋力、魔力、抵抗力、敏捷、洞察が1ずつ上がった。実践経験の旨味を噛み締める。
~ハルが異世界召喚されてから2日目~
Bクラスに合格。アレックスとマリアと知り合う。
「ダ…ダメだよズルしちゃ…」
マリアがおどおどしながら言うと、
「いいのいいの!それよりどっかでお茶しない?」
アレックスはいつもと同じ様にハルを誘う。
「ごめん。僕これから行くところがあって……」
ハルは自己紹介だけして魔の森へ向かった。
<魔の森>
グリーンドッグaがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグbがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグcがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグdがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグeがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグfがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグgがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグhがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグiがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグjがウィンドカッターを唱えた
──こんな表記ドラ○エでも見たことないわ!
ハルは両手両足に昨日よりも少ない量の魔力を纏い、迫り来る鋭利を帯びた風に右のジャブ、左のストレート、そしてもう一度右のジャブを繰り出して打ち消すと、足元へ飛んできたウインドカッターは右足を蹴り上げて打ち消した。そして次にくる腰を狙ったウインドカッターを右の拳で叩き付けるようにして殴り、打ち消すことに成功したが、首もとに飛んでくるウインドカッターを視認すると、
スパッ
ラースの首が飛ぶ映像を思い浮かべてしまう。恐怖を払いのけるようにして全力の魔力でその残りのウインドカッターを打ち消した。
「はぁはぁ……」
MPが前回よりも減ってしまっていた。ハルはまたもグリーンドッグの群れから逃げだした。
SP値が1上がった
~ハルが異世界召喚されてから3日目~
入学式を終えるとBクラスの教室に入った。正直この中の何人かはクラスメイトに手をかけていることを考えるとゾッとする。そう思っていると隣から聞きなれた少年の声が聞こえた。
「宜しく、僕はラースだ!」
ハルはラースの顔を見ると涙がでそうになった。
「ラース……」
「なんだよ!死んだペットの名前と一緒だったか?」
「ち、違うよ!宜しく!僕はハルだ!」
この世界線でラースを死なせないことを誓うハル。
ラースと別れて孤児院の仕事をしてからマキノに本を読み聞かせるが明日の襲撃のことで頭が一杯だ。
「ハル~どうしたの?」
マキノがハルの異変に気付く。
「ちょっとね…明日やらなきゃいけないことがあるんだ……」
虚空を見つめるハルに首を傾げるマキノ。その時、
「ただいま~」
ルナが帰ってきた。
「ルナルナだぁ~」
駆け寄るマキノを抱っこするルナもハルが浮かない顔をしているのに気が付いた。
「どうしたの?」
ハルは俯きながら返事に困っていると、
「あ!わかった!明日の学校緊張してるんでしょ?本格的に授業も始まるし!でも大丈夫。ハルくん筆記試験満点だったらしいじゃない?だからハルくんなら絶対大丈夫だよ!」
「ハル~?まんてんだったのぉ?」
ハルは作り笑いを浮かべてその場をやり過ごした。
──きっと明日起こる出来事を説明しても信じてもらえないよな……
ハルは自室に閉じこもり、ベッドに横になるが寝付けずにいた。
窓から見える外の景色は澄んで見えた。日本よりも空気が綺麗なのかもしれない。街の灯りはまばらにともり、夜の世界を幻想的に写した。
ハルは水を飲もうと部屋をでると一階の食堂にルナが綺麗な満月、この世界ではヘレネと呼ばれる衛星を眺めながら物思いに耽っていた。
──そういえば変だよな?この世界の人達は三日月型の神のシンボルをクレセントと呼んでいる。クレセントは英語で三日月と言う意味の筈だ。それに、以前フレデリカ先生は『しかし!それでは非常に効率が悪いのです!1ヶ月間毎日鍛練しても1しか上がらないのです!』と言っていた。1ヶ月……月という概念がないにも拘わらず、何故1ヶ月という言葉を用いているのか……
ハルのいた地球は太陽の周りを回っていて一周するのに約365日かかる。この異世界でも太陽、ではなく日中昇るテラと呼ばれる恒星の周りをこの星は365日かけて回っているのだろうかと疑問に思った。
この世界について調べてみると365日で1年と記載されている。惑星の概念がなくとも地球のエジプト人達は365日周期で季節がまわっていると発見しているのだから、そこは不思議ではない。
──しかし何故地球と一緒なんだ?
そしてこれは異世界あるあるなのだが、ステータスウィンドウがあるのはおかしい。異世界に地球のゲームと同じ概念が存在している。これは既世界ではないかという疑問だ。これらについては追々調べていこうとハルは考えていた。
ハルはルナの元に近づいて声をかける。
「寝れないんですか?」
「あ!ハル君…ごめんね起こしちゃったかな?」
衛星ヘレネの光に照らされているルナ。思えば始めて会ったときもルナはこの神秘的な光に照らされていた。
「いえ!ただ喉が渇いて…それよりも大丈夫ですか?元気がないみたいで……」
ルナは目を伏せて言った。
「…今度また戦争に行くの……」
ルナは少し間をとってから話を続ける。
「私、今まで多くの人を助けてきたわ……」
──さっきは気付かなかったけど、ルナさんも元気がなかったのか……
ルナを何とか元気づけようとハルは明るく振る舞った。
「凄いじゃないですか!僕なんて助けられてばっかりで!ハハハ……」
ハルの乾いた笑い声が静かな空間に力なく響いた。
「そう…自分って凄い存在なんだって思ってた時期があるの、だけど私が治療した人達はまた戦いに身を投じる…そしてまた私に治されに来て、また死地に向かう…そして戻って来なくなるの……」
「……」
ハルは何も返せない。
「いっそのこと、私が治療しないでこのまま死なせてあげればいいんじゃないかって思うこともあるわ…だってまた死ぬほど痛い思いをして帰ってくるんだから…そんな死ぬような体験…1回だけでいいと思わない?」
「えっと…それは……」
ハルは何か言いたいけど上手く言葉にできない自分がもどかしい。何を言おうか考えているとルナが再び口を開く。
「戦争中は自分が自分で失くなる…そんな感覚に陥ってしまうの…ごめんねハル君…変なこと言ってしまって…ヘレネ様を見ているとなんだか不思議な気持ちになるわね…フフフ」
ルナの力ない笑顔はハルの胸に微かな痛みを感じさせた。
~ハルが異世界召喚されてから4日目~
ルナのあの虚しい笑顔が胸に残ったまま、
1時限目 魔法歴史学
2時限目 第二階級火属性魔法演習
アレックスとマリアとは手をふる程度しか接しなかった。一緒にお茶をしていたら話し掛けられるのだろうか、もしくはハルの顔がいつもより強ばっているから話し掛けにくかったのだろうか。
「どうしたぁ?体調でも悪いのか?」
スタン先生が話しかけてきた。というのもここで第二階級魔法の訓練をしてしまうとMPを消費してしまうからハルはこの授業で訓練するふりをしていてサボっていたのだ。
「ぇぇと…ちょっと座ってても良いですか?」
「構わんが、あんまり体調が優れないなら医務室に行ってても良いんだぞ?」
「大丈夫です。少し休んだら回復しますから」
3時限目 神学
──とうとう来たなこの時が……
ハルは前と同じ場所に座った。
「おーい!ハル!隣いいか?」
ラースが隣に座ろうとすると、ハルは叫んだ。
「ダメだ!!」
教室にハルの声が鳴り響く。
「へ?どうした?大声だして?」
教室内にいる生徒全員がハルに視線を向けた。
「いや…その…こっちの隣の席に座ってほしい」
ハルはラースが以前座った右隣ではなく、左隣を指定して座らせた。
「お…おう。どっちも一緒じゃん?まぁいいか……」
黒いローブを着た男が入ってくる。目尻がつり上がり、鼻が高い。口元はどこか緩んでいた。ハルは睨むようにしてその男を観察した。ゆっくりと教室の階段を下りる男、教壇に両手を広げながら置き、口を開いた。
「さぁこれから皆さんには殺し合いをして頂きます」
──始まった……
ハルの頬から嫌な汗が一筋の垂れた。
【名 前】 ハル・ミナミノ
【年 齢】 17
【レベル】 4
【HP】 61/61
【MP】 51/51
【SP】 86/86
【筋 力】 28
【耐久力】 46
【魔 力】 39
【抵抗力】 36
【敏 捷】 43
【洞 察】 40
【知 力】 931
【幸 運】 15
【経験値】 270/500
・スキル
『K繝励Λ繝ウ』『莠コ菴薙�莉慕オ�∩』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『閾ェ辟カ縺ョ鞫ら炊』『感性の言語化』』第一階級水属性魔法耐性(中)』『恐怖耐性(中)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』
・魔法習得
第一階級火属性魔法
ファイアーボール
ファイアーウォール
第一階級水属性魔法
──
第一階級風属性魔法
──
不良を撒いて図書館へと向かう中、ハルはラースの首が飛ぶ光景を思い出していた。なぜ自分は彼を助けることができなかったのか。そしてラースが指差された時、自分が指差されなかったことに安堵していた。
「違う!」
内なる自分と戦うハルは気を紛らわすためかステータスウィンドウを開く。もしかしたら自分の弱さを客観視したかったのかもしれない。
ステータスを見やるとMP、SP、魔力、抵抗力の数値が2も上がっていた。教室バトル・ロワイアルだけでなく2時限目の授業でもだいぶ魔力を使っていた分ステータス上昇に影響を与えていたんだとハルは解釈した。
<図書館>
「フレデリカ先生、魔法を防御するときにはどうすれば良いんですか?」
「3つ方法があります!」
フレデリカは即答し、3本の指をピンと立てながら説明した。
ひとつ目は、避けること。
ふたつ目は、相手が放った魔法と同等の魔力を防御したいところに込めること。
みっつ目は、相手が放った魔法と同等の魔法を唱えてぶつけること。もしくは相克の属性魔法を放つことで相手の込めた魔力よりも少ない魔力で打ち消すことができる。
「そしてこれができたら格好いいんだけど、相手よりも上の階級の魔法を唱えること」
「なるほど…相克って?」
水→火
↑ ↓
土←風
光→闇
闇→光
「ポ○モンでいう弱点みたいなものか…」
「ん?ポケ○ン?」
「あ~!なんでもないです!!それよりも!!」
ハルは取り繕いながら話題を変えた。
「風属性魔法を唱える魔物ってこの辺にいたりしますか?」
「この辺に?ん~この王都をでて南に真っ直ぐ行けば魔の森っていう所があってそこに生息しているグリーンドッグという魔物がウィンドカッターを唱えてくるわ」
フレデリカは近くにあった魔物図鑑を取り出してハルに見せた。
パッとみて、毛並みが黒いと思ったが良く見ると黒の中に緑を少し混ぜたような色だっだ。四つ足で獰猛な目付き。
──このイラスト書いた人絶対ドラゴンとか好きだろ!かっこ良く書きすぎ……
図鑑の中のグリーンドッグは今にも飛び掛かってきそうな躍動感を有していた。
──よし…コイツで4日目の予行練習を……
ハルは再び4日目の出来事を思い出した。悲鳴と血、何かが焼ける臭いと音、ラースの首が宙を舞う。
「…先生は友達を失ったことありますか?」
「どうしたの?突然……」
「えっと…友達が…その…魔物に襲われて…僕が近くにいたのに…僕は怖くて友達が襲われるのをただ見ていて……ごめんなさい!変なこと言って!それじゃあ僕もう行くね!!」
ハルは急いで外へ出た。
「あっ!ハル君!!…あるわ…私も……」
フレデリカは後ろ姿のハルに向かって手を伸ばすが、その手を力無く下ろした。
<魔の森>
「グルルルルル」
毛並みは黒だがよく見ると緑が混ざっている。そして、この獰猛な目付き。グリーンドッグとエンカウントした。
前足を伸ばし、後ろ足に力が入っているのがわかる。全身の毛が逆立っているのも確認できた。
「あ~これ完全に襲ってきますね。よし!こい!」
ハルは両腕に魔力を纏った。
「そういえば魔物ってどうやって魔法唱えるんだ?」
ハルが疑問に思うと、
「バウ!!」
思考に気をとられたハルに突然、グリーンドッグは鋭い牙で噛みついてきた。ハルは咄嗟にそれを避けると、尻餅をついてしまった。
「いやうてや!魔法を撃ってこい!!」
グリーンドッグは尻餅をついたハルに再び噛みつこうとする。ハルは右脚に魔力を込めて襲ってくるグリーンドッグの右頬を蹴った。
蹴られたグリーンドッグは5メートル程吹っ飛んだ。
「ぇ~めっちゃ飛ぶ……」
グリーンドッグは四つの足でヨロヨロ立ち上がり遠吠えをした。
「いよいよか!!」
ハルは立ち上がり、再び両手に魔力を込めた。しかし、森の中からグリーンドッグの群れが現れた。その群れは、さっきまでハルと対峙していたグリーンドッグの周囲に集まる。
「だから魔法うてや!仲間を呼ぶんじゃなく……て?」
グリーンドッグの群れから魔力が立ち込める。
「「「「「「「「アォォォン」」」」」」」」
グリーンドッグ達はそれぞれ大きく口を開け、中から緑色に光る魔法陣が出現すると、そこから風の刃がハルに向かって放たれた。
「いや…撃てとは言ったけど!」
鎌鼬の群れがハルに迫ってくる。ハルはボクサーのように脇をしめて構え、拳に魔力を纏う。最初に向かってくる風を右ストレートで殴り、打ち消した後、直ぐ様左拳を前に出して追随する風を打ち消した。しかし、ハルの足元目掛けて飛んでくるウィンドカッターには対処しきれない。咄嗟にジャンプをして回避できたはいいものの、残り7つのウィンドカッターが眼前に迫る。ハルは全身を魔力で包んだ。
魔力の壁によってウィンドカッターは消失するもハルはMPを大量に消費してしまった為、少し頭がくらくらする。
──くそ、魔力を一気に使いすぎた……
グリーンドッグのウィンドカッターを打ち消したハルは気付く。
──おそらくそんなに魔力を込めなくても防御出来る……
しかしウィンドカッターでラースの首が飛ぶ映像が頭から離れない。
魔力を適量に制御するためにも訓練しなくてはならないと悟ったハルは一旦グリーンドッグの群れを前にして、逃げ出した。
──あぁ……魔力を手に纏うのも相当集中してなきゃダメだ。それもあの数のウィンドカッターを処理しながらとなると……
その夜オデッサとは会わずにルナと合流し、孤児院に泊まる。
MP、SP、筋力、魔力、抵抗力、敏捷、洞察が1ずつ上がった。実践経験の旨味を噛み締める。
~ハルが異世界召喚されてから2日目~
Bクラスに合格。アレックスとマリアと知り合う。
「ダ…ダメだよズルしちゃ…」
マリアがおどおどしながら言うと、
「いいのいいの!それよりどっかでお茶しない?」
アレックスはいつもと同じ様にハルを誘う。
「ごめん。僕これから行くところがあって……」
ハルは自己紹介だけして魔の森へ向かった。
<魔の森>
グリーンドッグaがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグbがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグcがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグdがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグeがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグfがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグgがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグhがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグiがウィンドカッターを唱えた
グリーンドッグjがウィンドカッターを唱えた
──こんな表記ドラ○エでも見たことないわ!
ハルは両手両足に昨日よりも少ない量の魔力を纏い、迫り来る鋭利を帯びた風に右のジャブ、左のストレート、そしてもう一度右のジャブを繰り出して打ち消すと、足元へ飛んできたウインドカッターは右足を蹴り上げて打ち消した。そして次にくる腰を狙ったウインドカッターを右の拳で叩き付けるようにして殴り、打ち消すことに成功したが、首もとに飛んでくるウインドカッターを視認すると、
スパッ
ラースの首が飛ぶ映像を思い浮かべてしまう。恐怖を払いのけるようにして全力の魔力でその残りのウインドカッターを打ち消した。
「はぁはぁ……」
MPが前回よりも減ってしまっていた。ハルはまたもグリーンドッグの群れから逃げだした。
SP値が1上がった
~ハルが異世界召喚されてから3日目~
入学式を終えるとBクラスの教室に入った。正直この中の何人かはクラスメイトに手をかけていることを考えるとゾッとする。そう思っていると隣から聞きなれた少年の声が聞こえた。
「宜しく、僕はラースだ!」
ハルはラースの顔を見ると涙がでそうになった。
「ラース……」
「なんだよ!死んだペットの名前と一緒だったか?」
「ち、違うよ!宜しく!僕はハルだ!」
この世界線でラースを死なせないことを誓うハル。
ラースと別れて孤児院の仕事をしてからマキノに本を読み聞かせるが明日の襲撃のことで頭が一杯だ。
「ハル~どうしたの?」
マキノがハルの異変に気付く。
「ちょっとね…明日やらなきゃいけないことがあるんだ……」
虚空を見つめるハルに首を傾げるマキノ。その時、
「ただいま~」
ルナが帰ってきた。
「ルナルナだぁ~」
駆け寄るマキノを抱っこするルナもハルが浮かない顔をしているのに気が付いた。
「どうしたの?」
ハルは俯きながら返事に困っていると、
「あ!わかった!明日の学校緊張してるんでしょ?本格的に授業も始まるし!でも大丈夫。ハルくん筆記試験満点だったらしいじゃない?だからハルくんなら絶対大丈夫だよ!」
「ハル~?まんてんだったのぉ?」
ハルは作り笑いを浮かべてその場をやり過ごした。
──きっと明日起こる出来事を説明しても信じてもらえないよな……
ハルは自室に閉じこもり、ベッドに横になるが寝付けずにいた。
窓から見える外の景色は澄んで見えた。日本よりも空気が綺麗なのかもしれない。街の灯りはまばらにともり、夜の世界を幻想的に写した。
ハルは水を飲もうと部屋をでると一階の食堂にルナが綺麗な満月、この世界ではヘレネと呼ばれる衛星を眺めながら物思いに耽っていた。
──そういえば変だよな?この世界の人達は三日月型の神のシンボルをクレセントと呼んでいる。クレセントは英語で三日月と言う意味の筈だ。それに、以前フレデリカ先生は『しかし!それでは非常に効率が悪いのです!1ヶ月間毎日鍛練しても1しか上がらないのです!』と言っていた。1ヶ月……月という概念がないにも拘わらず、何故1ヶ月という言葉を用いているのか……
ハルのいた地球は太陽の周りを回っていて一周するのに約365日かかる。この異世界でも太陽、ではなく日中昇るテラと呼ばれる恒星の周りをこの星は365日かけて回っているのだろうかと疑問に思った。
この世界について調べてみると365日で1年と記載されている。惑星の概念がなくとも地球のエジプト人達は365日周期で季節がまわっていると発見しているのだから、そこは不思議ではない。
──しかし何故地球と一緒なんだ?
そしてこれは異世界あるあるなのだが、ステータスウィンドウがあるのはおかしい。異世界に地球のゲームと同じ概念が存在している。これは既世界ではないかという疑問だ。これらについては追々調べていこうとハルは考えていた。
ハルはルナの元に近づいて声をかける。
「寝れないんですか?」
「あ!ハル君…ごめんね起こしちゃったかな?」
衛星ヘレネの光に照らされているルナ。思えば始めて会ったときもルナはこの神秘的な光に照らされていた。
「いえ!ただ喉が渇いて…それよりも大丈夫ですか?元気がないみたいで……」
ルナは目を伏せて言った。
「…今度また戦争に行くの……」
ルナは少し間をとってから話を続ける。
「私、今まで多くの人を助けてきたわ……」
──さっきは気付かなかったけど、ルナさんも元気がなかったのか……
ルナを何とか元気づけようとハルは明るく振る舞った。
「凄いじゃないですか!僕なんて助けられてばっかりで!ハハハ……」
ハルの乾いた笑い声が静かな空間に力なく響いた。
「そう…自分って凄い存在なんだって思ってた時期があるの、だけど私が治療した人達はまた戦いに身を投じる…そしてまた私に治されに来て、また死地に向かう…そして戻って来なくなるの……」
「……」
ハルは何も返せない。
「いっそのこと、私が治療しないでこのまま死なせてあげればいいんじゃないかって思うこともあるわ…だってまた死ぬほど痛い思いをして帰ってくるんだから…そんな死ぬような体験…1回だけでいいと思わない?」
「えっと…それは……」
ハルは何か言いたいけど上手く言葉にできない自分がもどかしい。何を言おうか考えているとルナが再び口を開く。
「戦争中は自分が自分で失くなる…そんな感覚に陥ってしまうの…ごめんねハル君…変なこと言ってしまって…ヘレネ様を見ているとなんだか不思議な気持ちになるわね…フフフ」
ルナの力ない笑顔はハルの胸に微かな痛みを感じさせた。
~ハルが異世界召喚されてから4日目~
ルナのあの虚しい笑顔が胸に残ったまま、
1時限目 魔法歴史学
2時限目 第二階級火属性魔法演習
アレックスとマリアとは手をふる程度しか接しなかった。一緒にお茶をしていたら話し掛けられるのだろうか、もしくはハルの顔がいつもより強ばっているから話し掛けにくかったのだろうか。
「どうしたぁ?体調でも悪いのか?」
スタン先生が話しかけてきた。というのもここで第二階級魔法の訓練をしてしまうとMPを消費してしまうからハルはこの授業で訓練するふりをしていてサボっていたのだ。
「ぇぇと…ちょっと座ってても良いですか?」
「構わんが、あんまり体調が優れないなら医務室に行ってても良いんだぞ?」
「大丈夫です。少し休んだら回復しますから」
3時限目 神学
──とうとう来たなこの時が……
ハルは前と同じ場所に座った。
「おーい!ハル!隣いいか?」
ラースが隣に座ろうとすると、ハルは叫んだ。
「ダメだ!!」
教室にハルの声が鳴り響く。
「へ?どうした?大声だして?」
教室内にいる生徒全員がハルに視線を向けた。
「いや…その…こっちの隣の席に座ってほしい」
ハルはラースが以前座った右隣ではなく、左隣を指定して座らせた。
「お…おう。どっちも一緒じゃん?まぁいいか……」
黒いローブを着た男が入ってくる。目尻がつり上がり、鼻が高い。口元はどこか緩んでいた。ハルは睨むようにしてその男を観察した。ゆっくりと教室の階段を下りる男、教壇に両手を広げながら置き、口を開いた。
「さぁこれから皆さんには殺し合いをして頂きます」
──始まった……
ハルの頬から嫌な汗が一筋の垂れた。
【名 前】 ハル・ミナミノ
【年 齢】 17
【レベル】 4
【HP】 61/61
【MP】 51/51
【SP】 86/86
【筋 力】 28
【耐久力】 46
【魔 力】 39
【抵抗力】 36
【敏 捷】 43
【洞 察】 40
【知 力】 931
【幸 運】 15
【経験値】 270/500
・スキル
『K繝励Λ繝ウ』『莠コ菴薙�莉慕オ�∩』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『閾ェ辟カ縺ョ鞫ら炊』『感性の言語化』』第一階級水属性魔法耐性(中)』『恐怖耐性(中)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』
・魔法習得
第一階級火属性魔法
ファイアーボール
ファイアーウォール
第一階級水属性魔法
──
第一階級風属性魔法
──
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加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
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もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
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そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
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異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。
チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。
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