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きみと、したいコト。

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……っていうのは、正直結構な嘘だけど。
それよりも幸せが勝っているのは、好きな人だからだ。
実くんじゃなかったら、もしも、あの時会ったのが彼じゃなかったら。
この想いは味わうことができなかった。


「みのりくん……? 」


高揚しているのは私だけなのか、なぜか彼のテンションが低い。


「わたし……」

「違う。俺」

「へ……? 」


何かおかしかったかな。
ものすごく下手――いや、上手いはずもないけど。
とにかく、終始彼のリードで事は進んだと思う。
でも、申し訳ないけど、年の功とかなくてビギナーで……!それは実くんも重々承知なはずで。
もしかして、あれ? スタイルとか?
それも、まあ大方予想ついたと思うのですが、予想よりがっかりさせたということは、もしかして何か垂れ――……。


「……何をどこまで考えてるのか知らないけど、一華さんじゃないって。だから、俺」


今更どうしようもないのに、布団の中のバストを確認しようとすると、呆れたようなすまなそうな顔をして言った。


「本当ごめん。あんなに、がっつくつもりじゃなかったんだけど。一華さんがよすぎ」

「……っ、気にしないで!? 」


それで、何で拗ねてるんだろ。
ううん、落ち込んでる?


「だって。彼女が初めてなのに、あんな、がんがん」

「……だから、全然……!気にすることないから。何よりだし……! 」


(…………なにより………合ってるけど)


「そう? でもなー、優しくしたかったんだよ。はぁぁぁ、すごい自己嫌悪。……って、こういうのも初めてか。どんだけ、俺の初めて奪うつもり? お姉さん」


ころんと横になって、そっちを向いてた私の顔のすぐそこで上目遣いに見上げられる。


「……やさしかったよ? 」


がんが……じゃない、何度も名前を呼びながら求められるのは嬉しかった。
呼ぶ声が、じょじょに甘さと可愛さと、色気の配分が変化していくのもドキドキした。


「時々、“さん”が抜けるのも、ドキッとした。優しいのも、その、よかったって言ってくれるのもう、嬉しいから。心配だったし……私に合わせて、みのりくんが」


指先がそっと唇を撫で、閉じさせる。
ただそれだけなのに、びっくりして今度は私が見上げると、その目はもう大人の男性。


「……やっぱり、敵わないな。今はまだ、一華さんの方が大人だけど。その差、早く埋めていきたい」

「……そうかな」


実くんの可愛いいところ、好きだし。
私、全然年上らしいとこ、ないけど。
大好きだから、変わってほしくなんてないけど、彼はもどかしいのかな。


「年下ぶってたの。一華さんが、そういうのに弱いの知ってたから。落としたい時は、年下だってこと最大限利用してたけど……いざ、付き合えたら、ちょっと切なくなっちゃった。これからはさ」


――もっと、男でいくね?



「ってことで、これからもよろしく」


目の前の睫毛につられて、つい、目を瞑ると。


「一華」


待機モードの唇より、ふいに感じた耳が熱い。
予想どおりの反応だったのか、楽しそうに笑って――今度はちゃんと、唇も甘やかしてくれた。


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