翡翠の森

中嶋 まゆき

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・・・



《ジェイダ、お願いだ。返事をして……! 》

(マ……ロ……? )

子リスの声だ。
いつも余裕綽々な彼が、いつになく切羽詰まっている。

《ジェイダ……! 大丈夫!? 何かあったの? 》

(ううん。平気)

《……には、聞こえないけど……。ごめん、キミの助けが必要なんだ》

申し訳なさそうに、でも有無を言わせぬようでもあるマロに、何か良くないことが起きたのだと分かる。

《ちょっと、想定外のことが起きてね。面倒なことに、ロイが……》

「ジェイダ、起きて! 」

横たわったままの体を揺り動かされ、ジェイダは何とか目を開くことに成功した。

「ジ、ン? 」

だが、思考はまだはっきりしない。
それを見て余計に焦ったのか、ジンが両肩をがっしりと掴んできた。

「よく聞いて。……ロイ様がいなくなった」

「いなく、なった? 」

ジンの言葉を繰り返すと、デレクが悔しげに顔を歪めた。

「……はい。私の失態です」

《まあ、ロイにとっても、必要なことだったともとれるけどね。問題は、閉じ込められてるってことなんだ》

デレクを慰めるように、マロが言った。

(閉じ込められてる!? って、どこに? )

怠かった身体が一気に覚醒し、胸が痛いほど鳴り始める。

《分からない。どこか、地下牢みたいなとこだと思うんだけど》

探さなくては。
でも、一体どうやって?

マロと話している間も、ジンとデレクの会話が続けられる。

「ご自分を責めても仕方ありません。無理をしたロイ様がいけないのです。今はそれよりも、探さなくては」

「しかし、どうやって? 我々が大っぴらに動けば、不審なだけです」

デレクの言うことももっともだ。
地下牢のような場所ということは、この部屋の近くにいるとは思えない。
だが、招待客が関係のないところを彷徨いては、見咎められるに決まっている。

《大変だと思うけど、ジェイダしかいないんだ》

それでも、やる以外選択肢はない。

《お詫びになるか、分からないけど。ジェイダに伝えるね》

お詫びなんていい。
そんなことよりも、今は一刻も早くロイを探さないと――。

――ジェイダ――

突然、頭の中で語りかけてくる声が変わった。

(ロイ……!! )

彼を見つけるのに、少しでも有益な情報はないのか。
何でもいい。どんなに小さなことでも、手掛かりはないのか。
聞きたいことは沢山あるのに、何も出てはこなかった。
その声がしたことが、ただ、嬉しくて。

――僕は、無事――




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