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賭け
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しおりを挟む「そうですね。特に異存はありません」
「キース!! 」
見覚えのある顔が、スッと前に出る。あの男だ。
ロイやキャシディの手前控え目である反面、彼の発言権の大きさが窺える。
「何より、クルルの乙女の予言です。彼女をどうするかは、我々ではなくクルルに一任すべきでしょう」
嬉々とした声だ。
転がり込んできた提案を、喜んでいるのが伝わる。
それだけでも恐ろしいのに、ひどく冷たい声。
「ですが、クルルの民である彼女が、ここまで言ってくださるのです。けして反故にはなさいませんよう」
「無論だ」
その返事を聞いた途端、キースはまた一歩下がる。もう用はないということだろう。
「……待ってくれ、キャシディ! 三日なんて!! 」
「反対しているのは、お前だけだ。祈り子本人を含めてな」
(……ロイ)
どうして、そんなに必死になってくれるのだろう。
いつもと、少し違う口調。
いつもと全く違う、表情。
それを見て辛いのに、涙が出そうなくらい嬉しい。
「もし、その女が死んだとして、痛くも痒くもないだろう? お得意の口からでまかせかと思いきや、まさか本気で惚れているのか? 」
「……言った通り、ジェイダは僕の大切な人だ。女の子ひとりの命をそんな理由で奪って、お前が何を得られる。キャシディ」
彼らしくない乱暴な言葉が、締め付けられた心を緩めていく。
「なるほど。お前の意図は不明だが……国の為に敵国の王子をたぶらかしたのなら、乙女も大したものだ」
女性を馬鹿にした言い方に、かっとなるロイを押し戻した。
「……意図なんてありません。彼らは本気で二国をどうにかしようと思っている。実現してほしいと思いました」
「本当にそんな力があるのなら、何故もっと早く使わなかった? 森で男と遊んでいる場合でもあるまいに」
もう怖くはなかった。
クルルの王子が、この深刻すぎる問題を真剣に取り合ってくれない。
その失望感の方が、ずっとずっと大きいのだ。
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