31 / 196
賭け
1
しおりを挟む・・・
そして、その日はやってきた。
(……全然、眠れなかった)
寝返りを打つのすら飽きていて、天井を見つめたままの目が、今頃になって眠らせてくれと主張する。
無理もない。
会談が今日開かれると知ったのは、何と昨日のことである。それも、
『言っておくが、明日だからな。何の準備もないだろうが、心づもりだけはしておけ』
という、アルフレッドの一言だけ。
『何で、言ってくれないの!? 』
いきなり言われても困る。
掴みかかりそうなジェイダを面倒くさそうに見ると、彼はしっしっと手で払った。
『文句なら、ロイに言え』
それだけ言うと、後は取り合ってもらえなかったのだが。
「聞いてなくて、よかったかも」
早々に知らされていれば、もう何日も眠れない日が続いたのかもしれない。
もしかすると、ロイはそれを心配して黙っていたのだろうか。
(……まさかね)
ベッドの上で、ずっとぐずっていても仕方ない。
とてつもなく長い夜が終わり朝がくれば、もう逃げることはできないのだ。
覚悟を決めて、ふんわりとした布団を蹴飛ばした。行儀は悪いが、何となくスッキリする。
支度を終えたジェイダの前に現れた二人は、王子様そのものだ。
正装しているせいだろうか、知り合いの顔を見て緊張は解れるどころか、高まるばかり。
「ジェイダ」
ガチガチに固まった姿に苦笑すると、ロイがそっと手を繋いできた。
「大丈夫」
温かい。
空気が冷たいから、そう感じるのだろうか。
そんな言い訳をしながら、ついその温もりを求めてしまう。
恥ずかしいのにとても離すことなどできず、ただロイに引っ張られて歩いた。
何度か角を曲がったり、真っ直ぐなようで迂回するような通路を歩いて連れて行かれた部屋には、大臣らしき男が数人。
中でも若い男と目が合った。
彼は二人の手を不愉快そうにちらりと見、すぐに正面へと視線を移す。
彼らにしてみれば、ロイの考えは夢物語のようなものなのかもしれなかった。
得体の知れない小娘など連れて来られ、さぞかし頭が痛いのだと思う。
それどころか、重要な席に居合わせるなど。
「……来たよ」
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね
いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。
しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。
覚悟して下さいませ王子様!
転生者嘗めないで下さいね。
追記
すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。
モフモフも、追加させて頂きます。
よろしくお願いいたします。
カクヨム様でも連載を始めました。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
盗賊少女に仕込まれた俺らの使命は×××だぞ!
halsan
ファンタジー
一人は、魔王に処女膜ぶち抜かれたのちに記憶を消され、その後勇者との大恋愛の末にタナボタで王妃にまで登りつめた娘から産まれた王子様。
もう一人は、娘と娘の友達との久々の真剣勝負に身体が火照ってしまった夫婦が、年甲斐もなく頑張ってしまった結果、見事に命中して産まれた一応魔法エリートの少年。
この物語は、たまたま別大陸に飛ばされた二人がお目付け役である五色の乙女たちやその他のバケモノ共から解放された幸運に感謝をしながら、彼女たちに仕込まれた様々なゲス知識で無双を開始するものである。
某大手サイトで「盗賊少女に転生した俺の使命は勇者と魔王に×××なの!」の続編として書いたのですが、赤紙が来ましたのでこちらにて改めて連載します。
よろしくお願いします。
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
孤児だけどガチャのおかげでなんとか生きてます
兎屋亀吉
ファンタジー
ガチャという聞いたことのないスキルが発現したせいで、孤児院の出資者である商人に売られてしまうことになったアリア。だが、移送中の事故によって橋の上から谷底へと転落してしまう。アリアは谷底の川に流されて生死の境を彷徨う中で、21世紀の日本に生きた前世の記憶を得る。ガチャって、あのガチャだよね。※この作品はカクヨムにも掲載しています。
スキル「超能力」を得て異世界生活を楽しむ
黒霧
ファンタジー
交通事故で死んでしまった主人公。しかし女神様の導きにより、異世界に貴族として転生した。なぜか前世の記憶を持って。そこで超能力というスキルを得て、異世界生活を楽しむ事にする。
小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる