瞬間移動して暴く彼女

檻中 箱猫 (おりなか はこねこ)

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生かされた命

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 穂高さんは自分の生きる可能性を捨てて、私に瞬間移動という一番確実に逃げられる術を授けてくれた。といことは、穂高さんの死が確定したということだ。

私は、穂高さんには何か他に作戦があるのではないかと考えてみたが厳重な警備の上に常に外に行けない仕組み、誰も外の構造がどうなっているかなんて何年前かの記憶で、鮮明に覚えているはずがないだろう。

穂高さんだって、最後に見たのは10年以上前だ。でも一応聞いておく。

「穂高さん、瞬間移動教えちゃっていいんですか?」

ズバリ単刀直入に聞く。

自分の命を削ってくれている理由、それは確かめておかなければならない。

「いいんだよ、俺、最後は桜と一緒にいるって決めてたんだ。それに、聞かれていなくても、今日の夜に瞬間移動教えてたよ、なんなら寝てるときにタトゥー掘って、朝にいなくなったら雰囲気出たかも~。」

私は涙を浮かべた。

穂高さんは私に最終的に瞬間移動を伝授してこの世を去ろうとしてたらしく、最後に会いたい人に選んでくれていた。

穂高さんは私のことを一番大事に思ってくれていた唯一の人だ。将来どんなことがあっても忘れないと心に誓った。

「私なんかこの牢屋にいる人しか知らなくて、瞬間移動覚えても使えないですよ?」

次に聞きたかったことをすぐさま聞いた。

私の考えは、どっちも生きることだ。牢屋を出ても穂高さんと一緒にいたい。一人で生きれるわけがないし、穂高さんなら色々知ってそうで、将来的には、穂高さんも一人の女の人として結婚して子供を産んで、という生活を誰よりもしてほしかった。死刑というのはあまりにも残酷だろう。

世間の人たちからすれば、沢山の命を奪った殺人犯だが、私からすれば、命の恩人であり、親同然だ。

このまま穂高さんが釈放されたとしても世間の人たちはよく思わないのはわかってる。でもそんな人たちは、穂高さんを詳しくは知らないし、なんで殺したかなんて警察の人に言っただけで、公表はされない。

警察も仕事上同情したりもできない。誰もわかってあげられないまま、犯罪の内容で死刑判決が下されたのだろう。

「知ってる。桜が瞬間移動持ってても逃げられないってことでしょ?それなら、桜なんの犯罪もしてないんだから、釈放はされると思うよ。桜の両親が危険な犯罪者だったってことで隔離されてるんだから、殺されるわけない!」

真剣に私のことを考えてくれる穂高さんに、今日中にできるだけの感謝を伝えようと心に決めた。

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