【R18】孤高の王子は夜伽の乙女に恋をする。

猫足

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1.王子ユダはため息をつく。

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……つまらない人生だな。


と思うけれど、それを口に出すことは自分と関わってくれている人たちに対する冒涜になるから言いたくない。王子ユダはため息をついた。


言いたくない、でも、たしかに思っている。


欲しいものを苦労して手に入れるプロセスこそが人生の醍醐味だともし彼が口にすれば、国中の人たちがこぞって非難するだろう。


この国では、いくら手を伸ばしても欲しいものに指先すら触れられず死んでいく人間がほとんどだからである。王族だけが例外だ。こんなことを言えば、なに不自由なく贅沢に暮らしておいて、プロセスだなんだと偉そうに語るなと、きっと怒鳴られてしまうだろう。


でもそれは、なに不自由ないことの恐ろしさを知らないから言えることでもある。


ユダはいつも願っている。絶対に手に入らないものが欲しい、と。
でも一生手に入らないままでは悔しいから、絶対に手に入らないものを、努力の果てに手に入れたい。


欲しいと思い、得るために努力をし、やっと手に入れたという感動がないから、大切にできないのだと思う。
いつか欲しいものを自分の力で手に入れたら、彼は自分が変われるような気がしている。


「……よろしくお願いします、ユダ様」


夜、ベッドに横になっていると、部屋の入り口が細く開き、女が呼びかけてくる。このルーティンにも慣れたものだ。求める時は呼び込み、求めない時は帰せばいい。ただそれだけだった。


「ああ、よろしく。突っ立ってないで、こっちにきて脱げ」
「は、はい」


素っ気ない対応に困惑しているのか、それでもユダに失礼のないよう、女はそろそろと部屋に入って来た。


下卑た意味ではなく、これは文字通りの性処理である。王族の男児は18歳になると毎晩夜伽の女があてがわれるのだ。


女は服をすべて脱ごうというそぶりを見せたが、ユダがそれを制した。必要ないからだ。スカートの中からショーツだけを脱がせると、ベッドの脇の棚に常備しているローションを手に取った。これがあれば前戯は必要ない。


そう思って手を伸ばしてみたら、なにもしていないのにそこはもう濡れていた。


「ユダ様、恥ずかしいです……」


思わず舌打ちが出た。純情ぶってはいるが夜伽を担当する女は無論処女ではない。なぜなら王族を満足させる必要があるからで、それにはさまざまなテクニックが求められるからだ。
もちろん必要な役割だし、自分も利用している身なので感謝はしている。ただ、じゃあ心を込めて抱くのかと言われればそれとこれとは別だった。排泄に心は必要ない。


「挿れるぞ」


溜まったら出すだけなのだ。理由はただ、男であるから。それ以上でも以下でもないし、この行為に処理以外の意味はない。だから下着以外脱ぐ必要がないし、抱き合ってキスをしたり、愛を囁きあったりする必要もない。


ユダの硬くて熱いそれが、女の柔らかい場所に沈んでいく。ぐちゅ、ぐちゅ、と、結合部からいやらしい音が漏れている。


「あっ、ユダ様、あぁん、気持ちいい……大きいです……」
「いちいちうるさい。声を出すな」


苛立ちながら乱暴に突いた。感情は無のまま、頭と心に反してこの儀式を願っていた身体を楽にしてやるため、排泄という一点を目的にして腰を動かし続ける。


それでも気持ちいいらしく、ユダが達するまでに女は二度果てた。愛を懇願するように絡みついて来たが、必要以上の接触はしたくないため振り払った。


終わると感謝の意を告げて帰らせる。身体に溜まったもやもやはいくぶん晴れたものの、染みついた憂鬱は完全には晴れない。そしてまたため息をつく。


これが、ユダ王子18歳の日常だ。

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