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〈番外編〉ホストなのになぜかお客さんに恋をしてしまい困ってます10

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愛衣さんは本当にかわいい。本人にそう言うと、夕陽には負けるよ~などと笑いで返されてしまうが、本当にかわいい。


少し前、同棲をしようという話が出た。出たと言っても僕が勝手に言い出したことで、愛衣さんは「夕陽はまだ若いんだからそんなこと考えなくても……」と言って僕のことを傷つけた。


「でも僕、愛衣さんとずっと一緒にいたいと思ってるんです」
「そりゃ私もそうだけど。でも、あんたはまだ若いんだから心変わりするかもしれないでしょ」
「そんな男だと思うんですか!?」
「思うわけじゃないけど……ちょっと、そんな打ちひしがれた顔しないでよ」


これまでの自分の誠意が伝わっていなかったショックで僕は泣きそうになり、その顔を見て愛衣さんは笑った。笑って、こう言った。


「ならまあ私も、夜は辞めないとね」


僕はその言葉に耳を疑って、思わず愛衣さんの肩を掴んでしまった。


「えっ、本当に?」
「ちゃんと付き合うのにずるずる夜続けるのも良くないかなって。そういう人が皆だめなわけじゃないけど、私は線引きしっかりできなさそうだからさ。貯金もあるし、昼職でもなんとかやっていけると思う」


ちゃんと付き合う、という言葉にジーンとしてしまった。今まではちゃんと付き合っていなかったのか? という小さな疑問は残るものの、そんなことはどうでもいい。愛衣さんが僕のことを信用してくれたのだ。


「なんでまたそんな顔してんのよ」
「う、嬉しくて……」
「馬鹿じゃないの」


愛衣さんの口調は強めだが、顔には照れ笑いが浮かんでいた。こういうところが本当にかわいい。


「僕も辞めたいけど、もうちょっとお金貯めたいのでホスト続けさせて下さい……」


今辞めてもそこそこの生活はしていけるだろうが、将来のことを考えると心許ない。いつかスバルさんが、僕が独立したら新しいお店を手伝ってくれる? と声をかけてくれたことがある。いずれ現場を退いて、管理職に回ってほしいと言うことだった。そのためにも、僕個人がもう少しまとまったお金を作らなければならない。


「夕陽は線引きちゃんとできるタイプでしょ? 全然かまわないよ」
「愛衣さんって、僕が売れてもヤキモチ妬いてくれないもんな……」
「まだまだお子ちゃまだね。自分の男がモテることほど嬉しいことなんかないんだから」


愛衣さんがそう言って笑い、僕は、やっぱりこの人と結婚したいと強く思った。まだ若造だと馬鹿にされても、さっさと一人前になって、愛衣さんに頼ってもらえるような大人の男になるのだ。


これが少し前の出来事。内覧をいくつかこなして、今、ようやく住む家が決まったところだ。僕たちの未来はきっと明るい。




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