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ホストで……らしい。3

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「僕、もう限界です」


いつもの店でラーメンを啜っていた夜のことだ。スバルがふいに手を挙げ、高らかに宣言をした。
その猛然とした様子に圧倒され、俺は慌てて箸を置く。


「どうした? 限界って何が……」
「たまに会うだけじゃもう無理!! なんとしても連休とるから優也も有給使って!! 僕とずっと一緒にいてよ!!最近、一緒にいる時間が短くてさみしいんだよ!!」
「待て、わかった、落ち着けって」


毛を逆撫でた猫のようにフーッと肩で息をするスバルを、どうどうとなだめる。以前もこんなことがあったとはいえ、相変わらず唐突すぎて驚いた。今の今まで、全然関係ないゲームの話なんかしていたはずだったのに、一体どうしたというのだ。


「安心しろよ。お前は不満を感じているのが自分だけだと思っているかもしれないが、俺だって同じ気持ちだ」
「ほんと……? 僕の機嫌とるために言ってるわけじゃないの?」


スバルが疑わしげな上目遣いでこちらを見てくる。かわいい。
俺は再度箸を持ち、ラーメンの汁に浮かぶメンマをつまんで断言してやった。


「ほんとだって。その証拠に、俺はひそかに温泉旅行を計画してんだよ。連れてってやろうと思って。しかも、すでに下調べは済んでいる」
「え、それほんと? 優也がそんなことしてくれるなんて……」


怒涛のような不機嫌はどこへやら、感動で声を震わせているスバルを見て、俺は満足した。そろそろ日程の相談を持ちかけようと思っていたところだったので、むしろちょうどよかったくらいだ。


「楽しみだなー。温泉入って浴衣着て、美味しいご飯食べてお酒飲んで。時間も気にしなくていいし、いっぱいイチャイチャできるね!」


心底嬉しそうなスバルの発言にラーメンを吹き出しそうになる。イチャイチャという言葉であらぬことを考えてしまうのは、俺の心が穢れているせいか?

浴衣をはだけさせ、酔って頬を赤らめるスバルの姿が脳裏をかすめて、やばいと思い一瞬でかき消した。

そういうことがしたいから温泉旅行を計画したわけではないのに、なぜか後ろめたい気持ちが湧き起こってくる。

暗澹たる気分を振り払うように、俺はスマホの画面をスバルに見せた。


「とりあえず宿はここがいいかなって思うんだけど」
「わー!有名なとこじゃん。大きいし綺麗だし、いいね」
「それで、部屋はこれかこれかこれかなと。どれがいい?」
「部屋に露天風呂ついてるんだってよ! ここがいいな」


心臓が跳ね上がる。自分の中にある下心を嫌でも意識せずにはいられない。スバルには欲情しないと断言したあの日が、はるか昔のことのように思える。


……俺は変態か? いやいや、相手が男だからおかしなことになっているだけで、むしろこれが普通だよな?


「じゃあここ予約しとくよ、いつ休みとる?」などと張りついた笑顔で尋ねながら、相変わらず読めないスバルの心の中を想像する。
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