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ホストと喧嘩したらしい。3

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結局、夕飯を共にすることなくスバルは帰って行った。振替で休みになったと言っていたから、日曜日は仕事になるのだろう。ということは最短でも来週の日曜日までは会えない可能性が高い。うまくいっているときは気にならなかった生活パターンの不一致が、ここにきて響いている。


仲直りなんかできるのだろうか。


恋人いない歴は長いわ、いた時期も喧嘩は面倒なので避けてきたわで、こんなことになってしまい、俺は絶望していた。そもそもこれは喧嘩なのだろうか。俺の一方的な嫉妬ではないか。でも、友達と言い切られた手前、あっさり謝るのもどうも釈然としない。


そんなことを悶々と考えながら家に着き、部屋着になったところで携帯が鳴った。
スバルか! と思ってろくに名前も確認せず飛びついたら、相手は哀子で落胆した。


『ちょっと。そこまであからさまにガッカリしなくてもいいんじゃないの? 失礼なんですけど』
「悪い……そんなつもりじゃなかったんだが」
『まあ、大した報告じゃないんだけどさ。店、辞めることにしたから、言っておこうと思って』
「はっ!?」


思わず部屋の中で立ち上がってしまった。哀子は大学に入学してからずっとキャバクラで働いている。中退してそのまま水商売に本腰を入れているので、それ以外の仕事をしている姿が思い浮かばなかった。


「どうしたんだよ急に!?」
『別に。高校生の時にとった資格、簿記とか色々あるから、事務みたいな仕事をしてみるのもいいかなって思って。まあすぐには辞められないから、あと三ヶ月はキャバ嬢だけどね』
「そうなのか……まあ、応援するけど……」
『そういうことだから、昼職のことでなんかあったら相談に乗ってね。じゃあまた!』


要件は本当にそれだけだったらしく、電話はすぐに切られた。その後も数秒間、携帯を手にしたままで、まじかよ、と思考停止に陥る。
夕陽くんのことを思い出し、これはすぐスバルに伝えなければ、と思った。
夕陽くん、あと三ヶ月で哀子と会えなくなってしまうから、手を打つなら今だ!と教えなければ。


そう思って携帯の画面を触ったところで、スバルと険悪である現状を思い出し踏みとどまった。


……俺は馬鹿か。


意地を張るのも大概にしたい。さっきは悪かった、ヤキモチやいちゃったよ、なんて、軽い調子で電話をかけることができたらどんなにいいだろう。
俺ではなく月島さんだったらきっと、そういうことをうまくやるだろうなと思い、死にたくなった。学生時代のスバルはどんなだったのだろう。月島さんと、どういう付き合いをしていたのだろう。


知りたくないような、知りたいような、不可解な気持ちが波のように押し寄せて溺れそうになる。月島さんにそれとなく探りを入れてみるか……と思ったけれど、うまくやれる自信はない。やっぱりやめておこう。


俺は自分の嫉妬心を封じるかのように、ベッドの上に転がっていたポチを、クローゼットの中に封印した。
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