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依存しよう。3

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……眠ってしまっていたようだ。


気が付いたら時計はもう20時半をさしていて、俺は暗い部屋の中にいた。
一瞬すべて夢だったのではないかと考えたが、そんなことはあり得ない。
現にいま自分は知らない家のソファに横たわっていて、その体には毛布がかけられている。
きっと、あの人がかけてくれたんだろう。


目をこすって伸びをしてから、電気のスイッチを求めて立ち上がった。リモコンの場所は検討もつかないので、暗闇の中、躓かないように気をつけながら手探りで壁際を探す。


この街の夜は明るいので、窓からは様々な光が差し込んでくる。それを頼りにして探したら、すぐに見つけることができた。


「あった」


スイッチを押すと、ぱっと電気がついた。そのまぶしさにわずかによろめきつつ、俺はとりあえずソファまで戻る。
この広い部屋を、どう歩いたらいいのかがいまいちわからない。
置いてあるものを自由に手にとったところで黒瀬さんは怒らないだろうが、それはなんとなく遠慮しておくことにした。


この部屋の中にあるもの……いや、この家そのものが、俺に対してよそよそしいように思える。初めて訪れる家なのだから当然だ。それは分かっているが、なんとなく寂しいのも事実だった。


早く居場所がほしい。俺を受け入れてくれる居場所が。だって少なくとも今はまだ、ここに俺の居場所はない。では【S】にはあったのかと問われれば、それはそれで答えに詰まってしまうけれど。


俺がいなくなったところで、話題になるのはきっと最初のうちだけだ。いずれ新しいリーダーが選出され、再び不良グループとして問題なく機能していくのだろう。代わりなんていくらでもいるのだから。


……それより、黒瀬さんはどこに行ったんだろう?


そう思ったとき、ちょうどシャワーの流れる音がした。
よかった、外出していたわけではなさそうだ。


あの人はどうやら風呂に入っているらしい。ひとりではないことに安心して、俺はしばし逡巡したあと、廊下に出て行った。気づけばシャワーの音が止まっていて、バスルームと思われるドアから、黒瀬さんが濡れた髪をタオルで拭きながら出てくるところだった。


「ああ、リュウくん。起きたの?」
「あ……すいません、俺、いつの間にか寝ちゃって」
「いいよ、疲れてたみたいだしね。それよりバスルームまでお出迎えしてくれるなんて、可愛いなあ」
「あ、いや……」


冷静に考えたら恥ずかしくなってきた。
べつにリビングで待っていてもよかったはずなのに、自分は何をやっているんだ。
黒瀬さんの気配がしたらなんだか安心して、変なことをしてしまった。


「あ、君もお風呂入っちゃったら? 今日は俺の着替えを貸すよ」
「え、いいんですか」
「いいに決まってるじゃないか。そのほかにも必要なものがあれば、明日にでもまとめて買いに行けばいいからさ」
「わかりました」


頷いて、俺は彼とすれ違う形でバスルームに入ろうとした。
そのとき無造作に髪を拭いていた黒瀬さんが「あ」とつぶやいて、わざわざ振り向いてほほ笑む。


「お風呂では寝ないようにね。風邪引くから」
「わ、分かってますよ!」
「ハハ、じゃあごゆっくり~」


……完全に馬鹿にされている。


俺はため息をつきながらバスルームに入り、来ていたロンTを乱暴に脱いで、洗濯カゴに放った。

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