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◆記憶

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抱きしめて首すじに舌を這わせると、その細く白い喉が嬌声とともに震える。興奮に肌がぞわりと粟立った。


人間も吸血鬼も本質は同じだ。
愛する相手とひとつになりたいと願う。快楽の中で溶け合い混ざり合い、いっしょくたになりたいと。本能には抗えない。


「ああ、エディ…」


甘くかすれた声。それが耳の奥で反芻されたまやかしなのか、現実のものなのか、混濁する意識の中ではもはや判断できない。しかしやわらかそうな桃色の唇は、たしかに名前を呼んだ。


殺されてもいいからあなたとひとつになりたい。溶け合う寸前、そう囁いたのはだれだ?


欲望のまま、絹のような肌に牙を突き立てる。永遠になればいい。いまこの瞬間が。永遠に。



頭痛がする。頭の中に羽虫が飛び交っている。雑音。砂嵐。ショートする。眠る、ひたすらに。死にたい。死ねないのならいつまでも眠っていたい。起きたくはない。現実を受け入れたくない。化け物になんかなりたくなかった。この血を体内に受け入れたときから自分は化け物だったのか、彼女を殺したとき真の化け物になったのか、どちらか分からない。どちらでもいい。善を手放したか、悪を飲み込んだか。両者は似ているようで異なる。


頭痛がする。愛とはなんだ。あの唇は、愛していると言った。愛していたはずだ。だれよりもなによりも。どうして。


頭痛がする…手を伸ばす。


救われたいとずっと願っている。
いもしない神に懇願している。
俺を救ってくれ。

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