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目覚ましをセットしなくても、朝はいつもはやく目が覚める。博士はまだ寝ているようで、研究所はしんとしていた。


(朝ごはんを作らないと)


ここに来て数日が経った。その間にわかったことは、博士がひどい偏食だということだ。初日は私がいるので合わせて出前をとってくれたみたいだけれど、翌日にはもうふたりで食事をとることのほうが珍しくなった。博士が食事の時間を守らないのだ。
戸棚にある栄養食品やドリンクを見るに、今までも研究に夢中になるあまり食事を疎かにしてきたことは明白だった。


ローラは決意した。研究に口出ししてはいけないと思って自制していたけれど、このままでは博士が身体を壊すのも時間の問題だ。この数日間で、レントゲンのようなものを撮ったり、髪の毛を採取されたりしていたが、博士が改心しないなら、私はこれ以上協力しないと言って脅そう、と心に決める。


というわけで、朝食を作り終わったあと、今までは起きる時間の決まっていなかった博士を強制的に起こしに行く。


(って、お部屋、勝手に入ってもいいのかな)


怒られるだろうか?と思ったが、博士が怒るところが想像できないため、まあ大丈夫だろうと結論づけてドアを開けた。


自室じゃないのか?と疑いたくなるほど異様な部屋だった。ホルマリン漬けになったなにかの肉片や、不思議な色の薬品、たくさんの分厚い本などが散乱している。ノートに途中まで書きかけた数式もなぜか放置されている。AIが掃除していたというだけあって不潔な感じはないが、とにかく散らかっている、という印象だった。


無駄に大きなベッドに近づくと、掛け布団にくるまって博士が眠っていた。こうしてみると、ごく普通の26歳の大人の男性だ。無防備で、博士という感じがしない。


くすっと笑い、ローラは優しく声をかけた。


「博士?もう朝ですよ。ごはんが出来ましたよ」
「んんん……」


寝ぼけたアルベルト博士は、寝返りを打つだけで再び寝入ってしまう。


「もう、博士ったら!起きてください」


困ったローラが揺り動かそうとしたところ、ようやく目が開いた。


「あ、起きました?」


博士は無言のまま、ローラの手首を掴むと、ベッドの中に引き込んだ。後ろから抱きしめられてしまう。


(え?え?え?!)


「待って!博士、なにを」
「ん~、そうか、今日は金曜日だったのか~」


むにゃむにゃ言いながら博士が訳のわからないことを呟く。いやいや今日は水曜日ですけど、と返しながら身体をまさぐる博士の手に反応してしまっていた。


本当はずっと触って欲しいと思っていた身体は、少しの刺激にも敏感に反応する。耳を舐められながら博士の指先が胸に直に触れた時、身体が大きく跳ねてしまった。


「は、んんっ」


拒否しようと思えばできるのに、身体はぐったりとして抵抗しようともしない。


「やぁ……博士、だめぇ」


びくびくと反応したその時、博士が明瞭な声を出した。


「あれ……シェリーじゃない?」

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