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第四章 水の楽園編
フェリス
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学園の中等部で貴族からイジメられて、登校が嫌になった。
気を紛らわす為に前から行って見たかった、飲食店へと足を運んだ。
南東の平民区に来たことがなくて、道に迷っている時、ヴァイスさんという人が助けてくれた。
ヴァイスさんは飲食店『食の棚』の従業員で、もう二百二十五歳になると言っていた。
『食の棚』の従業員の人達が、長寿だという話は本当だったんだとこの時にわかった。
『食の棚』は開店当初から木造建築で、一度も倒壊したことや建て直したこともなく、アルバ王国が建国した年から存在する場所。
私の好きなスイーツが生まれた聖地でもあるし、王国で親しまれてる食事のほとんどがこの店の発祥。
どんなところか知りたかった。
「カイト様、この子、フェリスさんは初めて来たそうだよ」
「ヴァイス…まさか、無理に連れて来たのか?」
そんな冗談を言って、わたしの緊張をほぐしてくれた。
ヴァイスさんよりもカイトさんの方が長く働いてるのかな?そう思っていると、キョトンとしたわたしにヴァイスさんが説明してくれる。
曰く、カイトさんは開店当初から働いていて、ずっと、店主代理を任されている凄い人。
建国の年からだから…九百年間も!?アクロ様もその時からの知り合いということを聞いて、更に驚いた。
「カイト様が店主代理…?なら、店主さんは誰なんですか?」
「ん?噴水広場にある像の人、アース様が店主なんだ。あの像、アース鉱石はアース様の瞳の色のように青く綺麗だから、アース鉱石ってつけられたとカイト様からも聞いた。俺が生まれるより前にあった戦いで活躍したし、他の理由でも凄い人だから像になったんだよ」
まるで子供になったかのように話すヴァイスさんは、とても嬉しそうで、好きなんだって気持ちが伝わってくる。
カイト様の主で、アクロ様の夫で、『食の棚』の店主で、王国の食文化を変えた人。
会ってない、話したこともないのに、アース様のことが気になっていた。
それから、人気スイーツのショートケーキを食べて店を後にした。
楽しい場所で安心してスイーツを堪能出来た上に、カイト様もヴァイスさんも優しくてイジメのことなんて、すっかり忘れることが出来た。
南西の平民区で一緒に住むお母さんに話すと、お母さんはアース様のことを知っていた。
エルフ族やハイエルフ族等の”人族以外の種族にとってアース様は特別な方”、そう言っていた。
人ではなく”方”と言っていたことが何故かわたしは気になった。
普通は、「あの人」「この人」って言うものだと思う。
「特別な人だったら、この子達のこと見えるのかな……」
「えぇ、見えるわ。それだけでなくあの方は、私達よりも精霊に詳しいわ。もし会うことが叶ったなら、粗相のないようにしなさい」
真剣に話すお母さんにビックリしながらも、わたしは頷いた。きっとそうすることが正しいのだと思ったから。
そして、アース様が店に訪れ、わたしは応接室で話をすることになった。
わたしは店から家まで、走って帰ることにした。
お母さんはエルフ族だからか、ポーション類を作れる錬金術師。
薬草の知識が豊富で、錬金術のスキルを持っていて、魔力が多い。お母さんにピッタリの仕事。
だから、家で作業して出来た分を商業ギルドや冒険者ギルドに売りに行ってる。
毎週決まった日に行くのと薬草採取に外へ行く以外は、ずっと家の中で作業。
「ただいま」
「おかえりなさい。あら、今日は早いわね」
良かった。今日はいる日だ。
「お母さん、話があるの。落ち着いて聞いてくれる?」
「何だか聞くのが怖いわ。先に良い話か悪い話か……」
「良い話!」
そうしてわたしは、さっきアース様と話したことやお母さんに聞くことを話した。
するとお母さんはまず、アース様との対面に驚愕して、興奮が落ち着いてから精霊について教えてくれた。
「下位精霊と上位精霊の一番の違いは…そうね、精霊魔術の規模の違いかしら。多分、アース様が心配なのはそこだと思う」
「規模?精霊魔術?どういうこと?」
「魔法は精霊魔術を劣化させたものなのよ。精霊魔術は弱い水の魔術でも、災害が起こせる程、危険なの。フェリスのように魔力量が高くて、複数の精霊に好かれている状態で、制御出来ないまま精霊魔術を使ってしまうと、学園がなくなるわ」
「お母さん、それは…笑えない」
頬を引くつかせて言うと、お母さんは真剣な目でわたしを見る。
「事実よ。だから私はあなたに精霊魔術を見せたことがないし、教えなかった。知ってしまったら、最悪の事態も危険性も知らずに、試すでしょう?」
そしてお母さんは、深呼吸をした。
次に言うこともきっと、大事なことだ。わたしはそう思って聞き逃さないようにした。
「火の精霊魔術をここで使えば、南西区なんて簡単に消し飛ぶわ。それは、他の精霊魔術でも同じなの。魔法とは規模も危険性も全く違う。あなたに、最悪の事態が起こった時の責任は取れない。それでもフェリスは、危険な下位精霊を更に危険な上位精霊にしてもらうの?」
ごめんお母さん。わたしの答えはすでに決まってるの。
「それでもわたしは、精霊のことを知りたい。知らないままより、知って関わりたい」
気を紛らわす為に前から行って見たかった、飲食店へと足を運んだ。
南東の平民区に来たことがなくて、道に迷っている時、ヴァイスさんという人が助けてくれた。
ヴァイスさんは飲食店『食の棚』の従業員で、もう二百二十五歳になると言っていた。
『食の棚』の従業員の人達が、長寿だという話は本当だったんだとこの時にわかった。
『食の棚』は開店当初から木造建築で、一度も倒壊したことや建て直したこともなく、アルバ王国が建国した年から存在する場所。
私の好きなスイーツが生まれた聖地でもあるし、王国で親しまれてる食事のほとんどがこの店の発祥。
どんなところか知りたかった。
「カイト様、この子、フェリスさんは初めて来たそうだよ」
「ヴァイス…まさか、無理に連れて来たのか?」
そんな冗談を言って、わたしの緊張をほぐしてくれた。
ヴァイスさんよりもカイトさんの方が長く働いてるのかな?そう思っていると、キョトンとしたわたしにヴァイスさんが説明してくれる。
曰く、カイトさんは開店当初から働いていて、ずっと、店主代理を任されている凄い人。
建国の年からだから…九百年間も!?アクロ様もその時からの知り合いということを聞いて、更に驚いた。
「カイト様が店主代理…?なら、店主さんは誰なんですか?」
「ん?噴水広場にある像の人、アース様が店主なんだ。あの像、アース鉱石はアース様の瞳の色のように青く綺麗だから、アース鉱石ってつけられたとカイト様からも聞いた。俺が生まれるより前にあった戦いで活躍したし、他の理由でも凄い人だから像になったんだよ」
まるで子供になったかのように話すヴァイスさんは、とても嬉しそうで、好きなんだって気持ちが伝わってくる。
カイト様の主で、アクロ様の夫で、『食の棚』の店主で、王国の食文化を変えた人。
会ってない、話したこともないのに、アース様のことが気になっていた。
それから、人気スイーツのショートケーキを食べて店を後にした。
楽しい場所で安心してスイーツを堪能出来た上に、カイト様もヴァイスさんも優しくてイジメのことなんて、すっかり忘れることが出来た。
南西の平民区で一緒に住むお母さんに話すと、お母さんはアース様のことを知っていた。
エルフ族やハイエルフ族等の”人族以外の種族にとってアース様は特別な方”、そう言っていた。
人ではなく”方”と言っていたことが何故かわたしは気になった。
普通は、「あの人」「この人」って言うものだと思う。
「特別な人だったら、この子達のこと見えるのかな……」
「えぇ、見えるわ。それだけでなくあの方は、私達よりも精霊に詳しいわ。もし会うことが叶ったなら、粗相のないようにしなさい」
真剣に話すお母さんにビックリしながらも、わたしは頷いた。きっとそうすることが正しいのだと思ったから。
そして、アース様が店に訪れ、わたしは応接室で話をすることになった。
わたしは店から家まで、走って帰ることにした。
お母さんはエルフ族だからか、ポーション類を作れる錬金術師。
薬草の知識が豊富で、錬金術のスキルを持っていて、魔力が多い。お母さんにピッタリの仕事。
だから、家で作業して出来た分を商業ギルドや冒険者ギルドに売りに行ってる。
毎週決まった日に行くのと薬草採取に外へ行く以外は、ずっと家の中で作業。
「ただいま」
「おかえりなさい。あら、今日は早いわね」
良かった。今日はいる日だ。
「お母さん、話があるの。落ち着いて聞いてくれる?」
「何だか聞くのが怖いわ。先に良い話か悪い話か……」
「良い話!」
そうしてわたしは、さっきアース様と話したことやお母さんに聞くことを話した。
するとお母さんはまず、アース様との対面に驚愕して、興奮が落ち着いてから精霊について教えてくれた。
「下位精霊と上位精霊の一番の違いは…そうね、精霊魔術の規模の違いかしら。多分、アース様が心配なのはそこだと思う」
「規模?精霊魔術?どういうこと?」
「魔法は精霊魔術を劣化させたものなのよ。精霊魔術は弱い水の魔術でも、災害が起こせる程、危険なの。フェリスのように魔力量が高くて、複数の精霊に好かれている状態で、制御出来ないまま精霊魔術を使ってしまうと、学園がなくなるわ」
「お母さん、それは…笑えない」
頬を引くつかせて言うと、お母さんは真剣な目でわたしを見る。
「事実よ。だから私はあなたに精霊魔術を見せたことがないし、教えなかった。知ってしまったら、最悪の事態も危険性も知らずに、試すでしょう?」
そしてお母さんは、深呼吸をした。
次に言うこともきっと、大事なことだ。わたしはそう思って聞き逃さないようにした。
「火の精霊魔術をここで使えば、南西区なんて簡単に消し飛ぶわ。それは、他の精霊魔術でも同じなの。魔法とは規模も危険性も全く違う。あなたに、最悪の事態が起こった時の責任は取れない。それでもフェリスは、危険な下位精霊を更に危険な上位精霊にしてもらうの?」
ごめんお母さん。わたしの答えはすでに決まってるの。
「それでもわたしは、精霊のことを知りたい。知らないままより、知って関わりたい」
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