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第四章 水の楽園編
理由
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「ご、ごめんなさい」
止めど止めども溢れる涙。
フェリスは、しばらくの間涙を流して謝罪した後、僕に向き直った。
目元が赤くなり、鼻も少し赤い。
何故かはわからないが、僕の胸がズキッと痛んだので、涙を流した理由を尋ねてみた。
彼女は、しばし考えた後、コクンと頷き打ち明けてくれた。
「わ…たしは、お母さんがエルフ族でお父さんが、人族なんです。わかりにくいんです…けど、お父さんの血が強かったのか、身体が他の子と変わらなくて、でも、種族はエルフ族ってなってて……」
「お母さんの近くに、精霊がいるのを小さい頃に知って、でも、人族には見えないらしくて、それで……」
なるほど、話してくれてるおかげで、段々わかってきたぞ。
不登校になったのは、働いてるからじゃないんだな。
と、考えている間もフェリスの話は続く。
「学園の…中等部で、精霊達と触れ合っていたら、他の子達から気味悪がられて。白い目で見られるなら…まだ良いんです。中には、わたしをイジメて来る子が、いて…貴族の子だったから、何も、出来なくて……」
それで不登校になった、と話してくれたフェリスは微かに身体を震わせていた。
人族には見えない精霊が見えていて、遊んでたら一方的に気味悪がられ、イジメの対象になった。
しかも貴族の子が主犯なら、平民である彼女が訴えても、否定されれば彼女が嘘をついたことにされてしまう。
彼女の名前と精霊達が支えになってくれたら、立ち直れるかも知れないな。
「フェリスは、精霊についてどこまで知ってるんだ?」
「えっと、この子達は下位精霊で念話でしか意思疎通が出来ないことと、上位精霊は言葉も使えるくらいです。お母さんが教えてくれました」
「フェリスのお母さんの傍にいたのは、上位精霊かな?」
「はい」
「精霊達を下位から上位の精霊にすることが、僕には、出来る。ただしフェリス、君がしっかりと下位精霊と上位精霊の違いを理解してないと、最悪の場合、周囲の人が犠牲になる」
目を輝かせたフェリスはすぐに、青くなり、震える声でこう言った。
「お母さん…に、聞いても良い、ですか?その、この子達と念話じゃなくて、話したい気持ちは、あるか…ありますから」
「そうだなぁ。あと、無理に学園に行く必要はないし、学園に通わなくても生きていけるんだから、気にしなくて良い」
僕の言葉に、唖然としてから、ふふっと笑みをこぼすフェリス。
うんうん。笑ってる方が良いよ。
少し警戒が薄れたからか、彼女の方から質問された。
「アース様は、学園でどんなことを教えてるんですか?」
「戦闘訓練」
「?」
「冒険科のC~Sクラスの生徒で、僕の一回の攻撃に耐えた子達に、戦闘訓練を教える予定。今日の…それもついさっき、校庭で終えたばかりだよ。自己紹介しかやってないけどね」
「わたしもアース様の授業、受けてみたいです」
僕の言葉にフェリスは笑みを浮かべて言った。
「授業を受けたい?学園に通うことになるけど……」
「それは…もし会ったら嫌です、けど、色んなこと知りたいです」
「まずは、フェリスのお母さんに、下位精霊と上位精霊をちゃんと聞くこと。違いを理解し正しくあること」
「わかりました」
フェリスは初めの時より、かなり話すのがスムーズになった。
やっぱり緊張してたのが大きいと思う。
あとは、イジメに対する恐怖。そのせいで学園に通わず、店にこもりっきりに。
頼りなのは、精霊か……。
「じゃあ、一旦話は終わり。今日はもう家に戻っても良いよ。それと、僕は明日の二限目に、学園で青空教室だから夕方頃に来てくれる?」
「はい。あの、話、ありがとうございます…失礼します」
そう言って、フェリスは部屋から出て行った。
恐らく走って帰るのだろう。転ばないでもらいたい。
止めど止めども溢れる涙。
フェリスは、しばらくの間涙を流して謝罪した後、僕に向き直った。
目元が赤くなり、鼻も少し赤い。
何故かはわからないが、僕の胸がズキッと痛んだので、涙を流した理由を尋ねてみた。
彼女は、しばし考えた後、コクンと頷き打ち明けてくれた。
「わ…たしは、お母さんがエルフ族でお父さんが、人族なんです。わかりにくいんです…けど、お父さんの血が強かったのか、身体が他の子と変わらなくて、でも、種族はエルフ族ってなってて……」
「お母さんの近くに、精霊がいるのを小さい頃に知って、でも、人族には見えないらしくて、それで……」
なるほど、話してくれてるおかげで、段々わかってきたぞ。
不登校になったのは、働いてるからじゃないんだな。
と、考えている間もフェリスの話は続く。
「学園の…中等部で、精霊達と触れ合っていたら、他の子達から気味悪がられて。白い目で見られるなら…まだ良いんです。中には、わたしをイジメて来る子が、いて…貴族の子だったから、何も、出来なくて……」
それで不登校になった、と話してくれたフェリスは微かに身体を震わせていた。
人族には見えない精霊が見えていて、遊んでたら一方的に気味悪がられ、イジメの対象になった。
しかも貴族の子が主犯なら、平民である彼女が訴えても、否定されれば彼女が嘘をついたことにされてしまう。
彼女の名前と精霊達が支えになってくれたら、立ち直れるかも知れないな。
「フェリスは、精霊についてどこまで知ってるんだ?」
「えっと、この子達は下位精霊で念話でしか意思疎通が出来ないことと、上位精霊は言葉も使えるくらいです。お母さんが教えてくれました」
「フェリスのお母さんの傍にいたのは、上位精霊かな?」
「はい」
「精霊達を下位から上位の精霊にすることが、僕には、出来る。ただしフェリス、君がしっかりと下位精霊と上位精霊の違いを理解してないと、最悪の場合、周囲の人が犠牲になる」
目を輝かせたフェリスはすぐに、青くなり、震える声でこう言った。
「お母さん…に、聞いても良い、ですか?その、この子達と念話じゃなくて、話したい気持ちは、あるか…ありますから」
「そうだなぁ。あと、無理に学園に行く必要はないし、学園に通わなくても生きていけるんだから、気にしなくて良い」
僕の言葉に、唖然としてから、ふふっと笑みをこぼすフェリス。
うんうん。笑ってる方が良いよ。
少し警戒が薄れたからか、彼女の方から質問された。
「アース様は、学園でどんなことを教えてるんですか?」
「戦闘訓練」
「?」
「冒険科のC~Sクラスの生徒で、僕の一回の攻撃に耐えた子達に、戦闘訓練を教える予定。今日の…それもついさっき、校庭で終えたばかりだよ。自己紹介しかやってないけどね」
「わたしもアース様の授業、受けてみたいです」
僕の言葉にフェリスは笑みを浮かべて言った。
「授業を受けたい?学園に通うことになるけど……」
「それは…もし会ったら嫌です、けど、色んなこと知りたいです」
「まずは、フェリスのお母さんに、下位精霊と上位精霊をちゃんと聞くこと。違いを理解し正しくあること」
「わかりました」
フェリスは初めの時より、かなり話すのがスムーズになった。
やっぱり緊張してたのが大きいと思う。
あとは、イジメに対する恐怖。そのせいで学園に通わず、店にこもりっきりに。
頼りなのは、精霊か……。
「じゃあ、一旦話は終わり。今日はもう家に戻っても良いよ。それと、僕は明日の二限目に、学園で青空教室だから夕方頃に来てくれる?」
「はい。あの、話、ありがとうございます…失礼します」
そう言って、フェリスは部屋から出て行った。
恐らく走って帰るのだろう。転ばないでもらいたい。
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