64 / 108
第三章 転生編
国王への報告
しおりを挟む
アズラクさんと話し終えてギルドに戻ると、〈竜の牙〉の面々はいなくなっていた。依頼でも受けに行ったんだろうか。
ヒンセク国を出て、付近の森に足を運んだ。誰かテイム出来そうな魔物に会えるかな…そんな気持ちで入っていった。
◆
俺は、王都の冒険者ギルドマスターで元Aランク冒険者のアズラク。男だ。俺は今この国の国王に、謁見という名の談笑寄りの報告をするところだ。
国王で旧友のランゼル・フォン・ヒンセクが入室して来た。
国王の証である王の冠を載せた、俺と同じでガタイが良く懐の深い奴だ。波打ったやや長めの白髪に、首元が白くふわふわした赤のマントを羽織っている。
「久しいな、アズラク」
「はっ。この度は急な謁見、申し訳なく」
「よい。お主に敬語を使われるとむず痒くて仕方ない。宰相もよいな」
頷く宰相に会釈して、早速本題へ入ることにした。
「〈竜の牙〉っつぅ冒険者パーティがいるんだが、Aランクと高いから良いパーティーなのかと思ってたが、どうも違うようでな。前任のやつが何かやったかも知れん」
「〈竜の牙〉とやらは聞いたことがある。確か…攻撃こそ至高とかなんとか」
「まぁそうだな。でだ、そのパーティーを追放されたやつがいる。俺の鑑定で見ると、補助系の身体強化スキルがあった」
そう言った瞬間、ランゼルは即座に反応。「ほう」と小さく呟いた。
身体強化は自分自身にしか使えない自己強化スキルで、他の者にスキルの効果は及ばない。しかし補助系なら別だ。自己強化は出来ないが、他者にスキルの効果を与えられるのだ。だからこそ重宝されるべき存在だが、追放された。攻撃を受けたという理由で。
「そのパーティーは頭の弱い集団なのか?」
「自分は強いと錯覚してる節はある。さて、何故俺がわざわざ報告に来たのかには、理由が二つある。一つはそいつが転生者だからだ。別の世界の記憶を持ったやつがこの世界の住人に宿って、今生きてる。転生して目が覚めパーティーから追放された、そんなもん普通に考えれば何かしらしてもおかしくない。要注意人物だ、復讐があってもおかしくねぇ」
「もう一つの理由が、いやこっちのが危険だな。テイムスキルっつぅ見たこともないスキルを持ってやがる。この世界の神に貰ったらしいが、要は魔物を従えることが出来るスキルだ」
「処刑か?」
「そう、急ぐな。条件があるんだよ、まず魔物は悪とか敵意に敏感だ。ムリやり従わせるようなことは、出来ない。純粋な優しい心で魔物と接して親密度を上げた善人、これが条件だ」
「ふむ。ならば近くに悪人や敵意を持った者がいれば、その者も魔物にとっては敵となるし、優しき心を持ち続けなければならんのだな?厳し過ぎんか」
「むしろ、戦力が増える点で言えば妥当な条件だな。従える数はわからん。そう多くはないだろうが、仲間と言えども魔物に変わりはない。テイムされた魔物を討伐する者や恐怖する者もいるだろう。だが本人からすりゃ、神経すり減らして失敗覚悟で仲間にしたのに、門前払いだとか討伐されたら激怒もんだ」
「その為の報告か。その者がこの国にいる限りは下手な対応をしないよう、騎士団に通達しておこう」
こうして俺は無事、話し合いを終えて帰路についた。
タイヨウが何の魔物をテイムするかはわからん。不安しかないが当分、見守ることにしよう。
ヒンセク国を出て、付近の森に足を運んだ。誰かテイム出来そうな魔物に会えるかな…そんな気持ちで入っていった。
◆
俺は、王都の冒険者ギルドマスターで元Aランク冒険者のアズラク。男だ。俺は今この国の国王に、謁見という名の談笑寄りの報告をするところだ。
国王で旧友のランゼル・フォン・ヒンセクが入室して来た。
国王の証である王の冠を載せた、俺と同じでガタイが良く懐の深い奴だ。波打ったやや長めの白髪に、首元が白くふわふわした赤のマントを羽織っている。
「久しいな、アズラク」
「はっ。この度は急な謁見、申し訳なく」
「よい。お主に敬語を使われるとむず痒くて仕方ない。宰相もよいな」
頷く宰相に会釈して、早速本題へ入ることにした。
「〈竜の牙〉っつぅ冒険者パーティがいるんだが、Aランクと高いから良いパーティーなのかと思ってたが、どうも違うようでな。前任のやつが何かやったかも知れん」
「〈竜の牙〉とやらは聞いたことがある。確か…攻撃こそ至高とかなんとか」
「まぁそうだな。でだ、そのパーティーを追放されたやつがいる。俺の鑑定で見ると、補助系の身体強化スキルがあった」
そう言った瞬間、ランゼルは即座に反応。「ほう」と小さく呟いた。
身体強化は自分自身にしか使えない自己強化スキルで、他の者にスキルの効果は及ばない。しかし補助系なら別だ。自己強化は出来ないが、他者にスキルの効果を与えられるのだ。だからこそ重宝されるべき存在だが、追放された。攻撃を受けたという理由で。
「そのパーティーは頭の弱い集団なのか?」
「自分は強いと錯覚してる節はある。さて、何故俺がわざわざ報告に来たのかには、理由が二つある。一つはそいつが転生者だからだ。別の世界の記憶を持ったやつがこの世界の住人に宿って、今生きてる。転生して目が覚めパーティーから追放された、そんなもん普通に考えれば何かしらしてもおかしくない。要注意人物だ、復讐があってもおかしくねぇ」
「もう一つの理由が、いやこっちのが危険だな。テイムスキルっつぅ見たこともないスキルを持ってやがる。この世界の神に貰ったらしいが、要は魔物を従えることが出来るスキルだ」
「処刑か?」
「そう、急ぐな。条件があるんだよ、まず魔物は悪とか敵意に敏感だ。ムリやり従わせるようなことは、出来ない。純粋な優しい心で魔物と接して親密度を上げた善人、これが条件だ」
「ふむ。ならば近くに悪人や敵意を持った者がいれば、その者も魔物にとっては敵となるし、優しき心を持ち続けなければならんのだな?厳し過ぎんか」
「むしろ、戦力が増える点で言えば妥当な条件だな。従える数はわからん。そう多くはないだろうが、仲間と言えども魔物に変わりはない。テイムされた魔物を討伐する者や恐怖する者もいるだろう。だが本人からすりゃ、神経すり減らして失敗覚悟で仲間にしたのに、門前払いだとか討伐されたら激怒もんだ」
「その為の報告か。その者がこの国にいる限りは下手な対応をしないよう、騎士団に通達しておこう」
こうして俺は無事、話し合いを終えて帰路についた。
タイヨウが何の魔物をテイムするかはわからん。不安しかないが当分、見守ることにしよう。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる