いつかまた、バス停で。

おぷてぃ

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第17話「待つことしか」②

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    そんなこともあって、日中は内心穏やかではなかった。授業の内容もなかなか頭に入らず、誰の呼びかけにも反応は鈍かった。
「.......やま...」
「高山っ!」
    隣の席の西野が俺の肩を揺らすまで、教科書の一点を見つめて手術の結果のことばかり考えていた。
「高山!呼ばれてるって!さっきから」
「え?」

「高山ぁ...いいご身分だなぁ?俺の授業は聞くに値せんか?それとも、大それた夢は諦めたのか?あ?」
「いえ、そういうわけじゃ...」
    古文の飯田先生は生活指導も受け持っていたが、何かにつけて俺の進路に難癖をつけては『現実を見ろ』『身のほどを知れ』と、そんなことばかり言ってくるので、あまり好きになれないでいた。

「なら、ここ!現代語に訳してみろ!」
「......わかりません...」
    恐らくそれほど難しいようには感じなかったが、今は兎にも角にも志保のことで頭がいっぱいだった。飯田先生はそら見たことかと鼻をならして授業を再開した。

「ふん...いいかおまえら。こいつみたいに上の空で授業を聞いて、受験がうまくいくなんて思うなよ?あまちゃんは一人で充分だ」
    そう言って俺を一瞥した。正直悔しかったが、その通りだとも思ったので俺は何も言い返せなかった。席に座り直すと、西野が制服の肘のあたりを引っ張りながらひそひそと話しかけてきた。

「高山、気にすることないよ。あいつ、学年主任になれなかったからって、周りにあたり散らしてるって噂なんだから」
    俺と同じ陸上部に所属する西野は、そう言って口を尖らせた。気持ちの真っ直ぐなところがある彼女にしてみれば、飯田先生のああした湿度のあるもの言いも受け入れがたいものがあるのだろう。
    なだめようと口を開きかけたが、こちらに気付いた飯田先生の咳払いでそれも止めることにした。
    学校が終わると一目散に千鶴さんの店に急いだ。途中、飛び出してきた車に危うく轢かれそうになって、寿命が縮んだかと思った。

「ばかやろう!どこに目ぇ付けてやがんだ!」
「すみません!」
    怒声とクラクションを背中に受けて、休むことなく足を動かす。ようやく店が見えてきた。滑り込むようにして、店の前に自転車を止める。足が重い。息を整えて、店の引き戸を開けた。
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