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第14話「邂逅」⑥
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「血圧を測るから、ちょっとそこを空けてもらえんか?」繋いだ手をチラッと見て、樹にそう言った。
すると、ちいちゃんが咎めるような口調で割って入った。
「あなた?血圧はさっき測ったって、そう言ってなかった?それに、樹くんには言うことがあるはずよね?」
厳しい眼差しで祖父を一瞥すると、ちいちゃんは祖父に何か催促するように、頭を樹の方へくいっと傾けた。ちいちゃんがこうなっては、誰も逆らえるものなどいない。祖父は素直に従った。
「あー…そのー…なんだ。あれだ、昨日は志保をよく連れて来てくれたな」
そうじゃないでしょとばかりに、ちいちゃんは眉をひそめて祖父を睨みつけた。
「わかっとる…悪かったな。殴って…」祖父は頭をかきながら、小さくぺこっと頭を下げた。
「えー!おじいちゃん、樹のこと殴ったの!?」今度は私が怒る番だった。
「そうなのよ。この人ったら、何を勘違いしたのか、樹くんがあなたをしょっちゅう連れ出してると思ったみたいなのよ」
「仕方ないだろう!病室を抜け出しては次の日に寝込んでの繰り返しで、その原因がこいつかと思ったら…」
「こいつですって?」すかさず、ちいちゃんが割って入る。そして、続けて言った。
「未来のお婿さんになんて言い草なんでしょうね?」
「む、む、婿だと!?そんなこと、聞いとらんぞわしは!志保!お前!」私と樹を交互に見ながら、狼狽えている。
私と樹は顔を見合わせたが、どちらともなく目をそらした。
「まあ、とにかくだ。手術を受けるというのなら、先方にも話をせねばならん。転院の準備もな」そう言って祖父は、逃げるように病室を出て行った。
ちいちゃんは、ため息まじりに言った。
「まったく、あの人は…。孫娘のこととなるとすぐああなるんだから…。ごめんなさいね?樹くん」
「いえ。勘違いも無理ありませんから」
「あら、本当に素直でいい子ね。逃しちゃダメよ?志保ちゃん」
「ちいちゃん!」耳まで熱くなっている。きっとまだ、体調が本調子ではないのだ。そういうことにしておこう。
「じゃあ…今日はもう帰るよ」樹が立ち上がった。
「え?」引き止めたい気持ちが、思わず口をついて出る。
「何?まだ手繋いでて欲しいのか?」樹がニヤリと笑った。
「そういうわけじゃ…!また子ども扱いして……ばかばーか!」ふくれる私の頭をぽんぽんと叩くように撫でて、樹は出て行った。父と同じだった。
「それじゃあ、私も店に戻ろうかしら。明日また来るわ、志保ちゃん」そう言って、ちいちゃんも帰って行った。
「何か気を遣わせたようね」二人が出て行った後に母が言った。
「そうなのかな」本当のところはわからないが、そうしたことを自然にするくらいには、二人が優しいことは知っていた。
「今日と明日は休みにしたから、今日はここに泊まろうかしら」母が言った。
「本当!?」
仕事の鬼のような母にしては珍しいことだったが、それだけ心配をかけたということだろう。申し訳なく思った。
「ええ、だから…貴志の…あの人の話、もっと詳しく聞かせてちょうだい」そう言って母は、樹の使っていた椅子に腰掛けて、私の手を握ってくれた。もう、何も怖いものなど無かった。
そしてその日は、夜遅く、私が疲れて眠るまでずっと、二人でいろんな話をした。
すると、ちいちゃんが咎めるような口調で割って入った。
「あなた?血圧はさっき測ったって、そう言ってなかった?それに、樹くんには言うことがあるはずよね?」
厳しい眼差しで祖父を一瞥すると、ちいちゃんは祖父に何か催促するように、頭を樹の方へくいっと傾けた。ちいちゃんがこうなっては、誰も逆らえるものなどいない。祖父は素直に従った。
「あー…そのー…なんだ。あれだ、昨日は志保をよく連れて来てくれたな」
そうじゃないでしょとばかりに、ちいちゃんは眉をひそめて祖父を睨みつけた。
「わかっとる…悪かったな。殴って…」祖父は頭をかきながら、小さくぺこっと頭を下げた。
「えー!おじいちゃん、樹のこと殴ったの!?」今度は私が怒る番だった。
「そうなのよ。この人ったら、何を勘違いしたのか、樹くんがあなたをしょっちゅう連れ出してると思ったみたいなのよ」
「仕方ないだろう!病室を抜け出しては次の日に寝込んでの繰り返しで、その原因がこいつかと思ったら…」
「こいつですって?」すかさず、ちいちゃんが割って入る。そして、続けて言った。
「未来のお婿さんになんて言い草なんでしょうね?」
「む、む、婿だと!?そんなこと、聞いとらんぞわしは!志保!お前!」私と樹を交互に見ながら、狼狽えている。
私と樹は顔を見合わせたが、どちらともなく目をそらした。
「まあ、とにかくだ。手術を受けるというのなら、先方にも話をせねばならん。転院の準備もな」そう言って祖父は、逃げるように病室を出て行った。
ちいちゃんは、ため息まじりに言った。
「まったく、あの人は…。孫娘のこととなるとすぐああなるんだから…。ごめんなさいね?樹くん」
「いえ。勘違いも無理ありませんから」
「あら、本当に素直でいい子ね。逃しちゃダメよ?志保ちゃん」
「ちいちゃん!」耳まで熱くなっている。きっとまだ、体調が本調子ではないのだ。そういうことにしておこう。
「じゃあ…今日はもう帰るよ」樹が立ち上がった。
「え?」引き止めたい気持ちが、思わず口をついて出る。
「何?まだ手繋いでて欲しいのか?」樹がニヤリと笑った。
「そういうわけじゃ…!また子ども扱いして……ばかばーか!」ふくれる私の頭をぽんぽんと叩くように撫でて、樹は出て行った。父と同じだった。
「それじゃあ、私も店に戻ろうかしら。明日また来るわ、志保ちゃん」そう言って、ちいちゃんも帰って行った。
「何か気を遣わせたようね」二人が出て行った後に母が言った。
「そうなのかな」本当のところはわからないが、そうしたことを自然にするくらいには、二人が優しいことは知っていた。
「今日と明日は休みにしたから、今日はここに泊まろうかしら」母が言った。
「本当!?」
仕事の鬼のような母にしては珍しいことだったが、それだけ心配をかけたということだろう。申し訳なく思った。
「ええ、だから…貴志の…あの人の話、もっと詳しく聞かせてちょうだい」そう言って母は、樹の使っていた椅子に腰掛けて、私の手を握ってくれた。もう、何も怖いものなど無かった。
そしてその日は、夜遅く、私が疲れて眠るまでずっと、二人でいろんな話をした。
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