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第九章 野獣の饗宴
第二節 絶 望
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杏子は、その映像をUSBメモリとSDカードに、それぞれコピーした。幸い、コピーガードの掛かっていないものであったから、インターネットカフェのパソコンで簡単に複製する事が出来た。
それを回収出来なければ、杏子をどのようにしても、勝義会に警察の捜査が及ぶのは時間の問題である。
「言え! 言わねぇか!」
男は杏子の頭を両側から掴み、前後にぶんぶんと振り回した。
下半身へのダメージに加え、脳をぐらぐらと揺らされて、杏子は酷く消耗した。
それでも、気丈に男たちを睨み付けて、口を割ろうとしなかった。
「この女ァ、意外と強情だぜ」
「友情ってやつかい。今時、泣かせるねぇ」
「あんな雌豚の為に、身体ァ張るなんてよぅ」
「雌豚か! 確かにな」
「初めはあんなに泣き喚いていたのに、最後の方にゃあ自分から入れて欲しがっていたぜ」
男たちは、その時の事を思い出しながら嗤った。
彼らに心身共に傷付けられて、生きてゆく希望を失い、自ら命を絶った秋葉を、死して尚も辱めようとする男たち。
杏子には彼らが人間とは思えなかった。
自分を匿ってくれた、弥名倉橋のホームレスたちは、社会からつまはじきにされながらも、彼らなりの社会を持ち、そして他人を傷付ける事を嫌った。
明石雅人も、世間一般での生活はとても出来ない精神性を持っていたが、それでも、弱者をいたぶる悪人たちへの怒りは本物だったと思う。
ケダモノだ。
一人の女を騙して、囲んで、犯して、いたぶって、その死さえも愚弄する男たちに対して杏子が抱いた思いは、殺意と表現する事さえ軽々しい程の強烈な憎悪である。
「お前もそうしてやろうか」
男の一人が、杏子の片方の乳房を抓り上げた。
杏子は胸が大きい。メジャーをぐるりと回してみれば、一メートルは超えてしまうかもしれない。それでいてスライムのように柔らかかった。
男が無骨な指を喰い込ませれば、そのまま呑み込んでしまいそうである。
そしてぐぃっと引っ張られると、そのまま引き千切れてしまいそうでもあった。
「そりゃ良いや!」
「お友達と同じ部屋で、同じようにやってやるよ」
「へ、今日は運が良いぜ。雌豚……いや、雌牛二匹、花びら大回転だ」
男はそう言うと、散乱した鉄パイプを足で退かして、その陰に倒れていた一人の女を引っ張り出した。
杏子と同じように、服は下着に至るまで身に着けていない。その代わりとでも言うかのように、全身に紫色の痣が刻み込まれていた。
杏子より歳は上だろう。お腹の肉が緩んでいる。
杏子と同じくらいの乳房には、一際色濃く鷲掴みにされた痕が残っていた。
全身の力がすっかり抜け落ちており、垂れ下がった前髪で隠れた表情は虚ろである。
それが、元池田組の情婦で、今はスナック“わかば”を経営する女主人であり、そして拷問の末に、杏子を弥名倉橋のホームレスたちが匿っていると推測した里中いずみである事を、杏子は知らない。
だが、彼女も亦、激しい恥辱の目に遭ったものだという事は、はっきりと分かった。
両手の指の先が、赤黒く染められている。太腿の辺りにも、同じような液体が凝り固まった痕が見受けられた。
秋葉のように、腕や脚、顔の骨などを折られた様子はないのだが、外からは見えない場所にも苛烈な責め苦を与えられたのだという事は見て取れる。
唾を呑み込む杏子の前に、意識を失った里中いずみは引きずり出された。うつ伏せになった彼女はぴくりとも動かず、男が足を使って仰向けにしてもやはり身じろぎ一つしなかった。
「おら!」
と、男が革靴でお腹を踏み付けると、がは……と息を吹き出して、身体を跳ねさせて痙攣するのだが、それきりだ。
「お前もこうなるんだぜ」
男の一人が、杏子の後ろに回って、両肩を掴んで立ち上がらせる。しかし痺れた足が、痛め付けられた脛や腿がまともに身体を支えられず、台になっていた建築用コンクリブロックをドミノ倒しにしながら、床にへたり込んだ。
「それが嫌なら、さっさとディスクの在り処を白状する事だなァ……」
男たちは、それぞれ壁に掛けられていた鈍器を、床に転がっていた鉄管を、倒れたコンクリートブロックを拾い上げながら、杏子を囲んだ。
杏子に逃げ場はなかった。
血涙を堪えながら見た秋葉の凌辱映像と、その死にざまを脳裏に蘇らせ、自分の肉体に迫る最期の時を感じながら、杏子は一人の男の姿を思い出した。
だが、自分の窮地を救ってくれるやもしれない男の記憶は、生臭い鉄の匂いと、鮮烈な赤色を飛び散らせたものにすり替えられて――救いは、絶望的だった。
それを回収出来なければ、杏子をどのようにしても、勝義会に警察の捜査が及ぶのは時間の問題である。
「言え! 言わねぇか!」
男は杏子の頭を両側から掴み、前後にぶんぶんと振り回した。
下半身へのダメージに加え、脳をぐらぐらと揺らされて、杏子は酷く消耗した。
それでも、気丈に男たちを睨み付けて、口を割ろうとしなかった。
「この女ァ、意外と強情だぜ」
「友情ってやつかい。今時、泣かせるねぇ」
「あんな雌豚の為に、身体ァ張るなんてよぅ」
「雌豚か! 確かにな」
「初めはあんなに泣き喚いていたのに、最後の方にゃあ自分から入れて欲しがっていたぜ」
男たちは、その時の事を思い出しながら嗤った。
彼らに心身共に傷付けられて、生きてゆく希望を失い、自ら命を絶った秋葉を、死して尚も辱めようとする男たち。
杏子には彼らが人間とは思えなかった。
自分を匿ってくれた、弥名倉橋のホームレスたちは、社会からつまはじきにされながらも、彼らなりの社会を持ち、そして他人を傷付ける事を嫌った。
明石雅人も、世間一般での生活はとても出来ない精神性を持っていたが、それでも、弱者をいたぶる悪人たちへの怒りは本物だったと思う。
ケダモノだ。
一人の女を騙して、囲んで、犯して、いたぶって、その死さえも愚弄する男たちに対して杏子が抱いた思いは、殺意と表現する事さえ軽々しい程の強烈な憎悪である。
「お前もそうしてやろうか」
男の一人が、杏子の片方の乳房を抓り上げた。
杏子は胸が大きい。メジャーをぐるりと回してみれば、一メートルは超えてしまうかもしれない。それでいてスライムのように柔らかかった。
男が無骨な指を喰い込ませれば、そのまま呑み込んでしまいそうである。
そしてぐぃっと引っ張られると、そのまま引き千切れてしまいそうでもあった。
「そりゃ良いや!」
「お友達と同じ部屋で、同じようにやってやるよ」
「へ、今日は運が良いぜ。雌豚……いや、雌牛二匹、花びら大回転だ」
男はそう言うと、散乱した鉄パイプを足で退かして、その陰に倒れていた一人の女を引っ張り出した。
杏子と同じように、服は下着に至るまで身に着けていない。その代わりとでも言うかのように、全身に紫色の痣が刻み込まれていた。
杏子より歳は上だろう。お腹の肉が緩んでいる。
杏子と同じくらいの乳房には、一際色濃く鷲掴みにされた痕が残っていた。
全身の力がすっかり抜け落ちており、垂れ下がった前髪で隠れた表情は虚ろである。
それが、元池田組の情婦で、今はスナック“わかば”を経営する女主人であり、そして拷問の末に、杏子を弥名倉橋のホームレスたちが匿っていると推測した里中いずみである事を、杏子は知らない。
だが、彼女も亦、激しい恥辱の目に遭ったものだという事は、はっきりと分かった。
両手の指の先が、赤黒く染められている。太腿の辺りにも、同じような液体が凝り固まった痕が見受けられた。
秋葉のように、腕や脚、顔の骨などを折られた様子はないのだが、外からは見えない場所にも苛烈な責め苦を与えられたのだという事は見て取れる。
唾を呑み込む杏子の前に、意識を失った里中いずみは引きずり出された。うつ伏せになった彼女はぴくりとも動かず、男が足を使って仰向けにしてもやはり身じろぎ一つしなかった。
「おら!」
と、男が革靴でお腹を踏み付けると、がは……と息を吹き出して、身体を跳ねさせて痙攣するのだが、それきりだ。
「お前もこうなるんだぜ」
男の一人が、杏子の後ろに回って、両肩を掴んで立ち上がらせる。しかし痺れた足が、痛め付けられた脛や腿がまともに身体を支えられず、台になっていた建築用コンクリブロックをドミノ倒しにしながら、床にへたり込んだ。
「それが嫌なら、さっさとディスクの在り処を白状する事だなァ……」
男たちは、それぞれ壁に掛けられていた鈍器を、床に転がっていた鉄管を、倒れたコンクリートブロックを拾い上げながら、杏子を囲んだ。
杏子に逃げ場はなかった。
血涙を堪えながら見た秋葉の凌辱映像と、その死にざまを脳裏に蘇らせ、自分の肉体に迫る最期の時を感じながら、杏子は一人の男の姿を思い出した。
だが、自分の窮地を救ってくれるやもしれない男の記憶は、生臭い鉄の匂いと、鮮烈な赤色を飛び散らせたものにすり替えられて――救いは、絶望的だった。
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