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第五章 覚醒める拳士
第八節 懐 刀
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「会長……」
男が、すりガラス越しに声を掛けて来た。
紀田は興を削がれたような顔をして、
「何だ?」
「美野秋葉の一件ですが、少々不味い事になりました」
「不味い事?」
「美野の母親に送り付けたビデオディスクが奪われ、その女を追わせました。ディスクを盗んだ女は、渋江杏子。年齢は二〇歳。東京の大学に通う、美野秋葉の同級生。両親は東京在住で、父親は大学病院に勤務するドクター、母親は町のクリニックに勤める看護師」
「そんな事は分かっている」
「その追手の五人が、気を失った状態で発見されました」
「何……? その渋江とかいう女が、五人をやったのか」
「それはないかと思われます。恐らく、渋江に協力した何者かがいるのではと」
「この町の人間じゃねぇな……」
水門市に於いて、勝義会と池田組の名前は絶対だ。チンピラを見たらそのどちらかだと思えというのは暗黙の了解であるし、そのどちらに対しても逆らう事は上策ではない。
だから、渋江杏子を攫おうとした追手に刃向かった人間がいるとすれば、この町に住んでいる人間ではないと紀田勝義は判断した。
「詳細はまだ掴めていません。しかし――」
「しかし?」
「五人を倒した手腕から、かなりの手練れだと思われます」
「――お前が言うのなら、そうなんだろうな」
紀田は、ぞろりと眼を開かせた。
「はい。……如何致しましょう」
「如何、だと」
「ディスクの映像が出回っては、勝義会の存続に関わるかと。この町の事だけであればまだしも、水門市を離れ、警視庁などに持ち込まれては流石に警察も我々を放置する訳にはいかなくなるでしょう」
「それが分かっているなら、早くディスクを回収しに行け。その女を捕まえて、追手の連中を倒した奴を探し出せ」
「は――直ちに。で、渋江と、その協力者の処遇は」
「女の方は生かして連れて来い。協力者が男なら殺して良いぞ」
「分かりました」
「それから、桃城――酒を持って来い」
紀田勝義は、すりガラスの向こうに入る男――桃城に言った。
「酒?」
「飛びっきりの奴だ」
「分かりました」
桃城は少しの間、脱衣場から姿を消し、手にワインボトルを持ってやって来た。
すりガラスのドアをスライドさせて、服を着たまま浴場に入って来たのは、鉄のような冷たい皮膚をした男であった。
剃刀の光を眼に湛えている。口は横一文字に結ばれていた。
サテン生地の紫のシャツを着ており、ゆったりとした木綿の黒いズボンを穿いている。
「ロマネコンティの一五年もの……」
「そんな事はどうだって良いんだ」
桃城が運んで来たワインボトルを、紀田勝義は無造作に受け取った。彼の見下ろしていた三人は、桃城がボトルを取って戻って来るまでに態勢を変えている。
紀田に向かって、尻を突き出す形で四つん這いになっていた。真ん中にいる女の肛門は溢れ出て来る糞によって盛り上げられている。
紀田勝義は受け取った高級ワインの封を切ると、一口含んでから、やおら椅子から立ち上がった。そうして尻を向けた三人に歩み寄ってゆき、左端の男の肛門に、ワインを注ぎ込んでゆく。
直腸粘膜が熟成されたアルコールを吸収し、少年はすぐにへたり込んでしまった。
紀田は右端の男にも、同じ事をやった。
そして中央の緊縛された女には、肛門と女性器にそれぞれワインを注いでしまう。
空になったボトルを桃城に返した紀田は、三人を引き起こすと、再び絡み合わせた。
今度は、前に入れていた少年に女の尻を使わせ、女の尻を使っていた少年は、もう一人の少年の尻にねじ込むように言ったのだ。
女、男、男の順番で、三人が背後から繋がって並んでいる。
命の危険さえ感じる程に酔いの回った三人を見下ろして、紀田は満足げに笑った。
桃城は鉄のように硬い表情で、その光景を眺めていた。
男が、すりガラス越しに声を掛けて来た。
紀田は興を削がれたような顔をして、
「何だ?」
「美野秋葉の一件ですが、少々不味い事になりました」
「不味い事?」
「美野の母親に送り付けたビデオディスクが奪われ、その女を追わせました。ディスクを盗んだ女は、渋江杏子。年齢は二〇歳。東京の大学に通う、美野秋葉の同級生。両親は東京在住で、父親は大学病院に勤務するドクター、母親は町のクリニックに勤める看護師」
「そんな事は分かっている」
「その追手の五人が、気を失った状態で発見されました」
「何……? その渋江とかいう女が、五人をやったのか」
「それはないかと思われます。恐らく、渋江に協力した何者かがいるのではと」
「この町の人間じゃねぇな……」
水門市に於いて、勝義会と池田組の名前は絶対だ。チンピラを見たらそのどちらかだと思えというのは暗黙の了解であるし、そのどちらに対しても逆らう事は上策ではない。
だから、渋江杏子を攫おうとした追手に刃向かった人間がいるとすれば、この町に住んでいる人間ではないと紀田勝義は判断した。
「詳細はまだ掴めていません。しかし――」
「しかし?」
「五人を倒した手腕から、かなりの手練れだと思われます」
「――お前が言うのなら、そうなんだろうな」
紀田は、ぞろりと眼を開かせた。
「はい。……如何致しましょう」
「如何、だと」
「ディスクの映像が出回っては、勝義会の存続に関わるかと。この町の事だけであればまだしも、水門市を離れ、警視庁などに持ち込まれては流石に警察も我々を放置する訳にはいかなくなるでしょう」
「それが分かっているなら、早くディスクを回収しに行け。その女を捕まえて、追手の連中を倒した奴を探し出せ」
「は――直ちに。で、渋江と、その協力者の処遇は」
「女の方は生かして連れて来い。協力者が男なら殺して良いぞ」
「分かりました」
「それから、桃城――酒を持って来い」
紀田勝義は、すりガラスの向こうに入る男――桃城に言った。
「酒?」
「飛びっきりの奴だ」
「分かりました」
桃城は少しの間、脱衣場から姿を消し、手にワインボトルを持ってやって来た。
すりガラスのドアをスライドさせて、服を着たまま浴場に入って来たのは、鉄のような冷たい皮膚をした男であった。
剃刀の光を眼に湛えている。口は横一文字に結ばれていた。
サテン生地の紫のシャツを着ており、ゆったりとした木綿の黒いズボンを穿いている。
「ロマネコンティの一五年もの……」
「そんな事はどうだって良いんだ」
桃城が運んで来たワインボトルを、紀田勝義は無造作に受け取った。彼の見下ろしていた三人は、桃城がボトルを取って戻って来るまでに態勢を変えている。
紀田に向かって、尻を突き出す形で四つん這いになっていた。真ん中にいる女の肛門は溢れ出て来る糞によって盛り上げられている。
紀田勝義は受け取った高級ワインの封を切ると、一口含んでから、やおら椅子から立ち上がった。そうして尻を向けた三人に歩み寄ってゆき、左端の男の肛門に、ワインを注ぎ込んでゆく。
直腸粘膜が熟成されたアルコールを吸収し、少年はすぐにへたり込んでしまった。
紀田は右端の男にも、同じ事をやった。
そして中央の緊縛された女には、肛門と女性器にそれぞれワインを注いでしまう。
空になったボトルを桃城に返した紀田は、三人を引き起こすと、再び絡み合わせた。
今度は、前に入れていた少年に女の尻を使わせ、女の尻を使っていた少年は、もう一人の少年の尻にねじ込むように言ったのだ。
女、男、男の順番で、三人が背後から繋がって並んでいる。
命の危険さえ感じる程に酔いの回った三人を見下ろして、紀田は満足げに笑った。
桃城は鉄のように硬い表情で、その光景を眺めていた。
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