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第四章 戦いの狼煙
第一節 杏子と秋葉
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渋江杏子にとって初めての水門市訪問は、決して気持ちの良い理由ではなかった。
杏子はそこで、友人の死を知る事となったのだ。
友人の名前は、美野秋葉。
学費を滞納した事で大学をやめる事となり、実家のある水門市へ帰って行った。
秋葉は両親が歳を取ってから出来た子供であり、両親は周りから見ると若い祖父母のようでさえあった。
だからなのか、両親は秋葉を良く可愛がって大事に育て、秋葉も優しいと言うよりは甘いに近しい父母の愛を一身に受けて、真面目で素直な、そして何処か抜けた所のある女性として育った。
幼い頃から、暴力団の台頭や警察の汚職などが身近であった水門市で育ち、実直な性格に育って来た秋葉は、町の現状を打開したいと考えるようになった。その一つの手段として、真実を世間に伝える報道者となる事を目指し、その勉強をするべく東京に出る事を決めた。
両親は、愛娘が実家を離れる事を心配したものの、その気高い志に感動して、彼女への全面的な支援を約束した。
秋葉と杏子が知り合ったのは、この大学での事である。
その一年後、秋葉の許に不幸な知らせが届いた。父親が知人に騙されて借金の連帯保証人になり、その知人が姿を晦ませて、美野家の財産のほぼ全てが取り押さえられてしまったのである。
両親は借金を返す為に必死に働いたが、父が心臓を患って鬼籍に入り、母も精神的なショックから痴呆症に加えて夫と同じ心臓の病に倒れた。
秋葉は学校をやめて暫く、キャバレーやソープランドで働いてその金を実家に送っていたのだが、母が危篤であると知って水門市へ戻った。
それが悲劇の始まりであった。杏子は未だに、その時に一緒に付いて行ってやれなかった事を悔やんでいる。
実家に戻った秋葉は母の介護をしながら、昼はスーパーで、夜はキャバレーで休む間もなく働き、治療費用を捻出しようとした。だがその他にも様々な部位に病気を発症した母の生命を維持するには、とてもそれだけでは足りなかった。秋葉の精神も次第に摩耗して行った。
そこに、当時、池田組よりも権力を大きくしていた勝義会の接触があった。
曰く、勝義会のトップである紀田勝義が、秋葉の事を気に入り、愛人にならないかと誘いを掛けて来たのである。
そうすれば、母親の治療代を出す事は容易いと唆したのだ。
女と男の欲望渦巻く夜の世界で生きてゆくには、秋葉は素直過ぎた。勝義会のエージェントの言葉を真に受けた秋葉は、紀田勝義の事を義侠心溢れる偉丈夫と勘違いして、一も二もなくその誘いに乗った。
だが、秋葉が紀田勝義から与えられた境遇は、紀田勝義にとって何をしても良い道具のような女というものであった。
紀田勝義は自分の部屋へやって来た秋葉を、その日の内に強姦し、抵抗する彼女を抑え付けて腕や脚の骨を折り、人間の尊厳を踏み躙った。その後、部下たちに輪姦させている所をビデオに撮らせ、その映像を彼女の前で流しながら更なる凌辱を加えた。
秋葉は一日も経たない内に精神を崩壊させ、帰宅する事が許された五日後、自ら命を絶った。
杏子は定期的に秋葉と連絡を取っており、これが途絶えたのを不審に思って、水門市へやって来た。そしてその場で、秋葉の死を知った。
病床にあった秋葉の母親が、呼吸器と点滴を手放せない車椅子姿で喪主を務める姿は、痛ましくて見ていられないくらいであった。
杏子は暫くの間、秋葉の母の身の回りの世話をした。葬儀の折には多少の親戚が集まったものの、無一文に近しい秋葉の母の面倒を見る人間はいなかったのだ。
杏子が買い出しの為に家を空けた間に、秋葉の母は死んでいた。
眼を剥き、歯の残っていない口を噛み締めて、鼻血をこぼしながらの変死を遂げたのだった。
自宅のテレビが付けっ放しになっていた。そこに映っていたのは、秋葉が勝義会の者たちによって凌辱され、心身共に破壊された記録であった。
秋葉の母の遺体の傍には、可愛らしいラッピングが施されていたと思しき紙箱が置かれていた。これには手紙が添付されており、ピンク色に花で縁取られた便箋に、無機質な文字が印刷されていた。
お母さん、先立つ不孝をお許し下さい。
でも、どうか寂しがらないで。
ここに私の人生を記録したビデオを残していきます。
哀しい時や苦しい時、これを見て私の事を思い出して下さい。
秋葉
それは秋葉の死後に、秋葉からのものとして送られて来たものであるらしい。秋葉の母は、娘の死から数日が経ち、その友人である杏子の甲斐甲斐しい世話に心をほぐされた所で、漸く娘の残したメッセージを受け入れられるようになったのだ。
だがそれは、秋葉を騙った何者かによる邪悪な策謀であった。溺愛していた娘を喪い、失意の底にある老いた母親に対して、その最愛の娘の尊厳が蹂躙される映像を送り付けるなどと。
杏子は血の涙を流さんばかりに眼を見開き、どうしようもない苦痛と憎悪の中で、秋葉が悲鳴と共に暴虐の限りを尽くされる映像を観た。そしてその犯人たちが紀田勝義の命令で動く勝義会の人間である事を知り、すぐにでも警察に届けを出そうとした。
そこに、来客があった。杏子は嫌な予感がして、台所の裏口へ隠れた。
杏子はそこで、友人の死を知る事となったのだ。
友人の名前は、美野秋葉。
学費を滞納した事で大学をやめる事となり、実家のある水門市へ帰って行った。
秋葉は両親が歳を取ってから出来た子供であり、両親は周りから見ると若い祖父母のようでさえあった。
だからなのか、両親は秋葉を良く可愛がって大事に育て、秋葉も優しいと言うよりは甘いに近しい父母の愛を一身に受けて、真面目で素直な、そして何処か抜けた所のある女性として育った。
幼い頃から、暴力団の台頭や警察の汚職などが身近であった水門市で育ち、実直な性格に育って来た秋葉は、町の現状を打開したいと考えるようになった。その一つの手段として、真実を世間に伝える報道者となる事を目指し、その勉強をするべく東京に出る事を決めた。
両親は、愛娘が実家を離れる事を心配したものの、その気高い志に感動して、彼女への全面的な支援を約束した。
秋葉と杏子が知り合ったのは、この大学での事である。
その一年後、秋葉の許に不幸な知らせが届いた。父親が知人に騙されて借金の連帯保証人になり、その知人が姿を晦ませて、美野家の財産のほぼ全てが取り押さえられてしまったのである。
両親は借金を返す為に必死に働いたが、父が心臓を患って鬼籍に入り、母も精神的なショックから痴呆症に加えて夫と同じ心臓の病に倒れた。
秋葉は学校をやめて暫く、キャバレーやソープランドで働いてその金を実家に送っていたのだが、母が危篤であると知って水門市へ戻った。
それが悲劇の始まりであった。杏子は未だに、その時に一緒に付いて行ってやれなかった事を悔やんでいる。
実家に戻った秋葉は母の介護をしながら、昼はスーパーで、夜はキャバレーで休む間もなく働き、治療費用を捻出しようとした。だがその他にも様々な部位に病気を発症した母の生命を維持するには、とてもそれだけでは足りなかった。秋葉の精神も次第に摩耗して行った。
そこに、当時、池田組よりも権力を大きくしていた勝義会の接触があった。
曰く、勝義会のトップである紀田勝義が、秋葉の事を気に入り、愛人にならないかと誘いを掛けて来たのである。
そうすれば、母親の治療代を出す事は容易いと唆したのだ。
女と男の欲望渦巻く夜の世界で生きてゆくには、秋葉は素直過ぎた。勝義会のエージェントの言葉を真に受けた秋葉は、紀田勝義の事を義侠心溢れる偉丈夫と勘違いして、一も二もなくその誘いに乗った。
だが、秋葉が紀田勝義から与えられた境遇は、紀田勝義にとって何をしても良い道具のような女というものであった。
紀田勝義は自分の部屋へやって来た秋葉を、その日の内に強姦し、抵抗する彼女を抑え付けて腕や脚の骨を折り、人間の尊厳を踏み躙った。その後、部下たちに輪姦させている所をビデオに撮らせ、その映像を彼女の前で流しながら更なる凌辱を加えた。
秋葉は一日も経たない内に精神を崩壊させ、帰宅する事が許された五日後、自ら命を絶った。
杏子は定期的に秋葉と連絡を取っており、これが途絶えたのを不審に思って、水門市へやって来た。そしてその場で、秋葉の死を知った。
病床にあった秋葉の母親が、呼吸器と点滴を手放せない車椅子姿で喪主を務める姿は、痛ましくて見ていられないくらいであった。
杏子は暫くの間、秋葉の母の身の回りの世話をした。葬儀の折には多少の親戚が集まったものの、無一文に近しい秋葉の母の面倒を見る人間はいなかったのだ。
杏子が買い出しの為に家を空けた間に、秋葉の母は死んでいた。
眼を剥き、歯の残っていない口を噛み締めて、鼻血をこぼしながらの変死を遂げたのだった。
自宅のテレビが付けっ放しになっていた。そこに映っていたのは、秋葉が勝義会の者たちによって凌辱され、心身共に破壊された記録であった。
秋葉の母の遺体の傍には、可愛らしいラッピングが施されていたと思しき紙箱が置かれていた。これには手紙が添付されており、ピンク色に花で縁取られた便箋に、無機質な文字が印刷されていた。
お母さん、先立つ不孝をお許し下さい。
でも、どうか寂しがらないで。
ここに私の人生を記録したビデオを残していきます。
哀しい時や苦しい時、これを見て私の事を思い出して下さい。
秋葉
それは秋葉の死後に、秋葉からのものとして送られて来たものであるらしい。秋葉の母は、娘の死から数日が経ち、その友人である杏子の甲斐甲斐しい世話に心をほぐされた所で、漸く娘の残したメッセージを受け入れられるようになったのだ。
だがそれは、秋葉を騙った何者かによる邪悪な策謀であった。溺愛していた娘を喪い、失意の底にある老いた母親に対して、その最愛の娘の尊厳が蹂躙される映像を送り付けるなどと。
杏子は血の涙を流さんばかりに眼を見開き、どうしようもない苦痛と憎悪の中で、秋葉が悲鳴と共に暴虐の限りを尽くされる映像を観た。そしてその犯人たちが紀田勝義の命令で動く勝義会の人間である事を知り、すぐにでも警察に届けを出そうとした。
そこに、来客があった。杏子は嫌な予感がして、台所の裏口へ隠れた。
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