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ヒメの章
開拓暦58?年?月、三角地帯、北方城壁防衛軍基地
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痛い。
頭が痛い。
ぎゅうぎゅう絞めつけられ、何万もの針で刺され、どくんっ、どくんっ――と心臓が鳴り、はあはあと喘ぎが零れ、そして浮遊感――。
思えば、あれが全てが変わった瞬間だった。
キリエ・リーがキリエ・シュナイダーになった瞬間だった。
「……りえ、キリエ、おい」
「んあ」
目が覚めると、キリエは寮の勉強机に突っ伏していた。二段ベッドの下段からトルンが足を伸ばし、キリエの椅子をぐらぐら揺らしている。
「涎、垂れてんぞ」
「ぅわっ」
慌てて袖で教科書を拭く。トルンが汚ねえと顔を顰めて、キリエはうるさいと返した。ふうふうと乾かしていると、唐突に時間が気になり、壁にかけられた時計を見る。まだ四時だ。キリエは振り返ってトルンに提案した。
「外行かね?」
「お前、宿題あるから行かないって、さっき言ってただろ」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
そういうトルンは終わっているようで、ベッドに仰向けになって『マグ・カルチャー』を読んでいる。キリエは舌打ちしてから、ふと首を捻った。
「おれ、木の上で昼寝してなかったっけ」
「そういう夢でも見たのか?」
「いや……そうなのかな……?」
「どっちだよ」
トルンは白い目になって寝返りを打ち、キリエに背を向けて『マグ・カルチャー』に没頭しだす。キリエは口をへの字にして、しぶしぶ机に向かった。ほじくれば出てきそうなもやもやはあったが、特に気に留めることはなかった。
「シュナイダー」
初め、自分が呼ばれているとは思わなかった。
「でさ、ペンダの奴何言うのかと思ったら」
「キリエ、ニクマルが」
「そう、ニクマルが、ニクマルが、て繰り返してんの」
「シュナイダーッ」
「あれ? トルン、なんで知ってんの?」
「違う。キリエ、ニクマルが」
「え?」
「シュナイダーッ!!」
「いだだだだだだだだだだだだっ!?」
いきなり背後から頭を鷲掴みにされてキリエは悲鳴を上げた。トルンが変わらぬ淡々とした口調で言った。
「お前に無視されて物凄く怒っている」
「早く言えよ!?」
頭を抱えながら叫ぶと、その上にヨアヒム先生が何かを乗せてきた。
「実家からだ。寮に戻るまで開けるんじゃないぞ」
慌てて受け取ると、茶色い紙に包まれた四角い箱で、上面に貼られた白い紙にキリエ・シュナイダーと書かれてあった。トルンが鼻を近付け、顔をほころばせる。
「よっしゃ。アップルパイだな。これ、俺好きなんだよな。……キリエ?」
「えっ?」
「なに、ぼーっとしてんだよ?」
トルンが怪訝、というよりは不安そうな顔を向けてきて、キリエは首を傾げた。
「いや、別になんでもないけど……。なんだよ?」
「お前最近大丈夫か? よくぼけっとしてるし、ニクマルが呼んでも気づかないし、自分の名前なのに書き間違えてるし。なんかあったら早めに言えよ」
「分かってるって」
「来週は実習だし。俺、死にたくねえからな」
「いややめろよ、不吉過ぎんだろ」
「それ、俺の台詞だからな? まあ、ニクマルもいるから大丈夫だとは思うけどさ」
「だから、なんもないって」
キリエは笑ってトルンの肩を叩いたが、トルンは怪しそうに念を押してきた。
「本当だな?」
「本当」
「なら、いいけど」
トルンの視線が離れると、キリエはひそかに胸を撫で下ろした。頭の中に複数の記憶がごちゃ混ぜになっていて、それでたまに混乱するんだなんて、とても言えなかった。
「これ、部屋に置いてくるわ。トルン、先行ってて」
「急げよ。次、ニクマルだぜ」
「げっ。忘れてた」
うええと顔を顰めてから、キリエは笑って踵を返した。最初は小走りで、だが、角を曲がった途端に全速力で駆け出す。寮の自分の部屋に入るなり実家からの包みを破り開けた。アップルパイの箱の上に小さなメモみたいな手紙が添えてある。思わず手が震えた。
『Dear, Kyrie』
始まりは以前と変わらず向こう側の言葉だった。以前は祖母の友人であったメアリーがそれを書いていたが、今はメアリーはいない。他に思い当たる人物は一人しかいなかった。愛しているわという言葉と共にそれは書いてあった。
『Mom』
「母さん……」
キリエはその三文字を穴が開くほど見つめた。次第に口角が持ち上がり、我慢できず雄叫びを上げた。
手紙は手帳に挟んで机の引き出しにしまった。
ずちゃぴちゃずちゃじゅちゃずずずるびちゃぴちゃ……
「はっ、はっ、はっ、……」
「ふっ、っはあ、はっ、……」
後ろを振り返ると、角を曲がりきれずにイェローズが倉庫に激突してオレンジ色の何かを撒き散らしていた。イェローズは北西側によく見られる怪物だ。オレンジ色の若干粘り気のある皮膚で城壁を登ってくる。通常は四足歩行だが人間のように立つこともでき、それ故に前肢の爪が長く鋭く発達していた。現役の白兵にとっては数が多いだけで楽な相手だ。そんな教科書通りの言葉が頭に浮かんだ時、前を行くトルンがちっくしょうと吐き捨てた。
「行き止まりだ。キリエ、こっちだ!」
「あ、ああ!」
第一城壁と第三城壁の間の三角地帯は噂通りの迷路だった。ヨアヒム先生の言った通りに戻ったはずなのに、気がついたら最初に通った道がなくなっていた。そこから二人の迷走が始まった。
どうやら、イェローズは手負いのようだ。手負いの獣こそ危ないというが、もしかしたら自分たちでもなんとかできるかもしれない。逃げながらそんなことを思ったが、それ以前に今の二人には武器がなかった。キリエは歯噛みし、次の角を曲がった。
「うわっ!?」
後ろにいたはずのイェローズが待ち構えていた。ぐるりと倉庫の周りを回って戻ってきてしまったらしい。飛びかかってくるイェローズに咄嗟に持っていた砂糖の袋を投げつける。袋は爪に引っかかって破け、中身がイェローズにかかった。イェローズは身を捩り、べちゃ! と地面に落下した。キリエは目を丸くした。
「効いてる……?」
イェローズは苦しげに地面を転がり、オレンジゼリーに嵌め込んだような黒い目が恨めし気にこちらを睨んでいる。つい覗き込もうとしてしまった時だった。
「キリエッ!」
トルンがキリエの腕を引くのと同時に、イェローズが跳ね上がった。間一髪だった。再び走りながら、キリエはトルンに謝った。
「ごめんっ、トルン!」
「全くだ! あとでジュース奢れよ!」
「オレンジか!?」
「たりめえだ! と、」
トルンが唇の前に人差し指を立てた。耳を澄ませる。すると、微かに自分たちを呼ぶ声がした。ヨアヒム先生だ。キリエも声を張り上げて叫んだ。
「先生っ!! こっちだ!! ニクマル!!」
「おい、キリエ。俺今気付いたんだけど」
トルンは目の前の倉庫の屋根を指さすと、真顔で告げた。
「最初っから砂糖なんて捨てて、倉庫をよじ登っちゃえば早かったんじゃねえか?」
「今更だよ! 本当に今更だよ、てめえ!」
もうそんなことをしている暇はない。余裕なんてこれっぽっちもないのだ。なのに、キリエの口元には自然と笑みが浮かんできていた。
「ふふっ、はっ、あははっ」
「なに笑ってんだよ!」
「トルンこそ!」
「俺はただな!」
「うん!」
「お前と一緒で、すっげえ心強いと思っただけなんだよ!」
「そっか!」
「ああ!」
「おれもだよ!」
その数秒後、イェローズの鋼のような爪がトルンを貫いた。
母のいる世界を始めて憎んだ瞬間だった。
どうして。
どうして。
どうして。
罰が当たったんだ。
母さんが生き返ったことを喜んだから。
どうして、ばあちゃんがいなかったことになってる?
どうして、死者再生法がない?
おれはトルンを生き返らせる方法を知っているのに。
どうして、トルンは燃やされているんだ?
「きみ、大丈夫かい?」
「あ……?」
いつの間にか、キリエは火葬場にぽつんと取り残されていた。
「だ、大丈夫です。すみません」
「そうかい? それじゃ、ここもう閉めてもいいかな?」
「はい。今、出ます」
鞄を持って外に出ると、もう真っ暗でぽっかりと青白い太陽が浮かんでいた。中央に戻るための馬車はどこにも見当たらない。完全に置いて行かれたらしい。管理人が鍵をかけてからキリエの横に立ち、同様に見回してあーあと言った。
「きみ、マックスさんのとこだろう? さっき出たばかりだから、ぼくの馬で行けば追いつくかもしれないけど……。どうする?」
「それじゃあ、お願いし……今、なんて?」
「え?」
首を傾げる管理人にキリエは詰め寄った。
「今、マックスさん、て言いましたよね? ――今日は何日ですか?」
「ええ? えーと」
管理人は戸惑いながらも時計を出して教えてくれた。キリエは愕然とした。
教えられたのは、トルンが死ぬ前日の日付だった。
キリエはぐっと唇を引き結び、拳を握った。管理人に礼を言うと、中央ではなく北へと走り出した。火葬場はカルト地区の端にあり、北方城壁まではそれほど離れてはいない。二人が三角地帯に入ったのは明日の午前中だから十分間に合う。驚きはだんだんと興奮に変わり、キリエは高笑いしながら北へ北へと駆けていった。
城壁内にはすんなりと入ることができた。キリエは男子階の自分が使った部屋に入ると、右側のベッドに眠る自分をつついた。
「おい、おい」
「……んん……?」
真夜中だったが、“キリエ”はすぐに起きてくれた。キリエは“キリエ”に顔を近付けると、これから起きることを早口で伝えた。“キリエ”はやや寝ぼけ眼だったが、しっかりと頷いてくれた。これでいい。これで“キリエ”とトルンは三角地帯に行かなくなる――……
数時間後、三角地帯で泣きじゃくる自分の姿を見た。
そしてその直後、キリエは夜明け前の三角地帯にいた。
「先生っ、先生っ」
再び男子階まで駆け上がり、今度は自分の部屋ではなくヨアヒム先生の部屋のドアを叩いた。
「先生!」
「誰だ、こんな時間に……」
ヨアヒム先生はキリエの顔を見た途端にドアを閉めようとした。慌てて足をねじこみ、キリエは顔を突っ込んだ。
「待って、先生。大事な話があるんだ。聞いてくれ」
「聞いてくれじゃない」
「くださいっ」
ヨアヒム先生は眉を顰め、しかし中に入れてくれた。やっぱりだ。ヨアヒム先生は厳しい筋肉達磨だが、決して生徒を裏切らない。キリエはこれから起こることを話し、自分とトルンを三角地帯に送らないでくれと頼んだ。ヨアヒム先生は疑わしげな目をしていたが、キリエが必死に懇願すると、溜め息を吐いて頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。
「分かったから、早く寝ろ。眠れないならここにいてもいいが」
キリエは安心で涙が溢れそうなのを堪えながら返した。
「汗臭そうなので遠慮しときます」
「貴様あっ!」
ヨアヒム先生は二人を三角地帯に送らなかった。
それなのに、トルンはまた死んだ。
キリエはまた夜明け前の三角地帯にいた。
似たようなことを何度か繰り返し、もう三角地帯に入るのを阻止するのは無理だった。キリエは倉庫を探し回って手頃な武器を見つけると、それを逃げる時に使った道に置いておいた。数時間後、二人はそこを通らずにまたトルンだけが死んだ。今度はいろいろな場所に仕掛けた。見回りに来た兵士に回収されてしまった。次は見回りの後に仕掛け、二人は気付いてくれたが、使う前に死んだ。その次は使ってくれたが、イェローズも武器に気付いてしまい利用された。武器ではなく木の板を立てかけ、倉庫を乗り越えられるようにした。追いつかれた。危険だが、追いかけられている二人の前に武器を落とした。駄目だった。自分で武器を持ってイェローズを足止めしようとした。できなかった。それでも何度も挑戦した。何度も何度もキリエは敗れ、そのたびに時間は巻き戻り、絶望に落とされ、
「うっ、あっ、あああああああああああああああああああああああああああああーっ!!!」
何十何百回目の夜明け前の三角地帯。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!」
キリエは自分を殴った。諦めようとしている自分を叱咤した。しかし、限界なのも事実だった。
「ああ、あ、ああぁあああぁ……」
のろのろと起き上がると、城壁を出た。半ば足を引きずりながら街道を辿る。もはや頼れる人物は二人しかいなかった。可能性があるのは二人だけだった。
不死身の王〈永遠王〉と〈罪負い女王〉なら、もしかしたら――……
「キリエ、前に出んなっつったろ」
キリエはオレンジ味の飴を舐め、三角地帯に続くドアの脇にもたれかかっていた。
「ごめん」
俯くキリエにクリスは舌打ちし、隣に立った。
「謝るんなら、最初からやれや。……何をそんなに急いでんの」
「おれ、急いでる?」
「焦ってる」
「そっか……」
北軍兵でここに近付く人はあまりいない。キリエに気を遣って、必要最低限は近付かないようになっているのが暗黙の了解だった。だから、キリエはたまにここに一人で来た。踏み込んでくるのは相棒のクリスくらいだった。
「今日も入らんか?」
「……うん」
あれから、三角地帯には一度も入っていなかった。扉を開けることさえできなかった。ただ、オレンジ味のものはよく食べた。まるで、イェローズを噛み砕き、貪るようによく口にした。
「キリエ、ほんまにここに来ると人が変わるな。……怒る気失せるわ」
クリスは溜め息を吐いて、ずるずると床に座り込んだ。さりげなくキリエの隣に。キリエも腰を下ろした。
「そうかな」
「ああ。すんごい変わる。……なあ、そろそろ前見ろよ」
「前……?」
意味が分からず、目を伏せる。前なら見ていた。いつでも見ていた。メアリーに、〈薔薇の魔女〉に打ち勝つ日を。
「強くなりたい」
「強いだろ」
「まだ足りないんだ。もっと強くならないと」
でないと、あの魔女には勝てない。
「あのなあ、それ以上強くなったら、ついて行けんだろ」
「じゃあ組み合わせを変えてもらおう」
「ふざけんな、ボケ。死ね。死ね、カス。誰がやるか」
「意味分かんない」
「もんのすんごい明白だろ」
そう言っていたクリスは、ある日の戦闘で死んだ。
「クリス……?」
そうして胸に迫ってきた苦しみと寂しさで、自分がいかにクリスに助けられていたかを知った。クリスの死因は首の骨の骨折だった。死者再生法があれば生き返った傷だった。
城壁上から散骨するとき、皆は泣きながら笑っていた。ありがとうと手を振っていた。キリエは逃げ出した。三角地帯への入り口の手前で床に転がって咽び泣いた。慰めてくれる者はいなかった。その人は死んでしまった。キリエは泣き疲れて何もできなくなるまで叫び暴れていた。
顔に白い粉がかかった。
三角地帯へのドアが開け放たれていた。
這ったままドアの元まで行くと、白い粉がまた微かに濡れた頬についた。見上げれば、遥か遠くの城壁上から撒かれた骨が空中できらきらと輝いていた。
「クリスは……」
キリエは蹲った。
「死んでも、おれを慰めてくれるんだな……」
数年ぶりの三角地帯は、あの頃と何一つ変わっていなかった。
その後、キリエは次の相棒と上手くいかず、相棒なしの遊軍、支援枠として若干持て余されて、西軍への応援として異動することになる。
「改めまして。北軍から来ました、キリエ・シュナイダーと言います。第二小隊を立て直すまでの間だけですが、よろしくお願いします」
「ヒメです。シュノー地区出身です」
「シュノーのヒメか。覚えやすくていいですね」
黒い髪の不思議な女の子だった。
ただ、黒い髪を不思議だとは思わなかった。
向こう側ではよくある色だったから。
「ヒメ……」
ここはひたすら白い。
大地も、家も、服も、人間も。
あの色を求めて、おれは手を伸ばした。
頭が痛い。
ぎゅうぎゅう絞めつけられ、何万もの針で刺され、どくんっ、どくんっ――と心臓が鳴り、はあはあと喘ぎが零れ、そして浮遊感――。
思えば、あれが全てが変わった瞬間だった。
キリエ・リーがキリエ・シュナイダーになった瞬間だった。
「……りえ、キリエ、おい」
「んあ」
目が覚めると、キリエは寮の勉強机に突っ伏していた。二段ベッドの下段からトルンが足を伸ばし、キリエの椅子をぐらぐら揺らしている。
「涎、垂れてんぞ」
「ぅわっ」
慌てて袖で教科書を拭く。トルンが汚ねえと顔を顰めて、キリエはうるさいと返した。ふうふうと乾かしていると、唐突に時間が気になり、壁にかけられた時計を見る。まだ四時だ。キリエは振り返ってトルンに提案した。
「外行かね?」
「お前、宿題あるから行かないって、さっき言ってただろ」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
そういうトルンは終わっているようで、ベッドに仰向けになって『マグ・カルチャー』を読んでいる。キリエは舌打ちしてから、ふと首を捻った。
「おれ、木の上で昼寝してなかったっけ」
「そういう夢でも見たのか?」
「いや……そうなのかな……?」
「どっちだよ」
トルンは白い目になって寝返りを打ち、キリエに背を向けて『マグ・カルチャー』に没頭しだす。キリエは口をへの字にして、しぶしぶ机に向かった。ほじくれば出てきそうなもやもやはあったが、特に気に留めることはなかった。
「シュナイダー」
初め、自分が呼ばれているとは思わなかった。
「でさ、ペンダの奴何言うのかと思ったら」
「キリエ、ニクマルが」
「そう、ニクマルが、ニクマルが、て繰り返してんの」
「シュナイダーッ」
「あれ? トルン、なんで知ってんの?」
「違う。キリエ、ニクマルが」
「え?」
「シュナイダーッ!!」
「いだだだだだだだだだだだだっ!?」
いきなり背後から頭を鷲掴みにされてキリエは悲鳴を上げた。トルンが変わらぬ淡々とした口調で言った。
「お前に無視されて物凄く怒っている」
「早く言えよ!?」
頭を抱えながら叫ぶと、その上にヨアヒム先生が何かを乗せてきた。
「実家からだ。寮に戻るまで開けるんじゃないぞ」
慌てて受け取ると、茶色い紙に包まれた四角い箱で、上面に貼られた白い紙にキリエ・シュナイダーと書かれてあった。トルンが鼻を近付け、顔をほころばせる。
「よっしゃ。アップルパイだな。これ、俺好きなんだよな。……キリエ?」
「えっ?」
「なに、ぼーっとしてんだよ?」
トルンが怪訝、というよりは不安そうな顔を向けてきて、キリエは首を傾げた。
「いや、別になんでもないけど……。なんだよ?」
「お前最近大丈夫か? よくぼけっとしてるし、ニクマルが呼んでも気づかないし、自分の名前なのに書き間違えてるし。なんかあったら早めに言えよ」
「分かってるって」
「来週は実習だし。俺、死にたくねえからな」
「いややめろよ、不吉過ぎんだろ」
「それ、俺の台詞だからな? まあ、ニクマルもいるから大丈夫だとは思うけどさ」
「だから、なんもないって」
キリエは笑ってトルンの肩を叩いたが、トルンは怪しそうに念を押してきた。
「本当だな?」
「本当」
「なら、いいけど」
トルンの視線が離れると、キリエはひそかに胸を撫で下ろした。頭の中に複数の記憶がごちゃ混ぜになっていて、それでたまに混乱するんだなんて、とても言えなかった。
「これ、部屋に置いてくるわ。トルン、先行ってて」
「急げよ。次、ニクマルだぜ」
「げっ。忘れてた」
うええと顔を顰めてから、キリエは笑って踵を返した。最初は小走りで、だが、角を曲がった途端に全速力で駆け出す。寮の自分の部屋に入るなり実家からの包みを破り開けた。アップルパイの箱の上に小さなメモみたいな手紙が添えてある。思わず手が震えた。
『Dear, Kyrie』
始まりは以前と変わらず向こう側の言葉だった。以前は祖母の友人であったメアリーがそれを書いていたが、今はメアリーはいない。他に思い当たる人物は一人しかいなかった。愛しているわという言葉と共にそれは書いてあった。
『Mom』
「母さん……」
キリエはその三文字を穴が開くほど見つめた。次第に口角が持ち上がり、我慢できず雄叫びを上げた。
手紙は手帳に挟んで机の引き出しにしまった。
ずちゃぴちゃずちゃじゅちゃずずずるびちゃぴちゃ……
「はっ、はっ、はっ、……」
「ふっ、っはあ、はっ、……」
後ろを振り返ると、角を曲がりきれずにイェローズが倉庫に激突してオレンジ色の何かを撒き散らしていた。イェローズは北西側によく見られる怪物だ。オレンジ色の若干粘り気のある皮膚で城壁を登ってくる。通常は四足歩行だが人間のように立つこともでき、それ故に前肢の爪が長く鋭く発達していた。現役の白兵にとっては数が多いだけで楽な相手だ。そんな教科書通りの言葉が頭に浮かんだ時、前を行くトルンがちっくしょうと吐き捨てた。
「行き止まりだ。キリエ、こっちだ!」
「あ、ああ!」
第一城壁と第三城壁の間の三角地帯は噂通りの迷路だった。ヨアヒム先生の言った通りに戻ったはずなのに、気がついたら最初に通った道がなくなっていた。そこから二人の迷走が始まった。
どうやら、イェローズは手負いのようだ。手負いの獣こそ危ないというが、もしかしたら自分たちでもなんとかできるかもしれない。逃げながらそんなことを思ったが、それ以前に今の二人には武器がなかった。キリエは歯噛みし、次の角を曲がった。
「うわっ!?」
後ろにいたはずのイェローズが待ち構えていた。ぐるりと倉庫の周りを回って戻ってきてしまったらしい。飛びかかってくるイェローズに咄嗟に持っていた砂糖の袋を投げつける。袋は爪に引っかかって破け、中身がイェローズにかかった。イェローズは身を捩り、べちゃ! と地面に落下した。キリエは目を丸くした。
「効いてる……?」
イェローズは苦しげに地面を転がり、オレンジゼリーに嵌め込んだような黒い目が恨めし気にこちらを睨んでいる。つい覗き込もうとしてしまった時だった。
「キリエッ!」
トルンがキリエの腕を引くのと同時に、イェローズが跳ね上がった。間一髪だった。再び走りながら、キリエはトルンに謝った。
「ごめんっ、トルン!」
「全くだ! あとでジュース奢れよ!」
「オレンジか!?」
「たりめえだ! と、」
トルンが唇の前に人差し指を立てた。耳を澄ませる。すると、微かに自分たちを呼ぶ声がした。ヨアヒム先生だ。キリエも声を張り上げて叫んだ。
「先生っ!! こっちだ!! ニクマル!!」
「おい、キリエ。俺今気付いたんだけど」
トルンは目の前の倉庫の屋根を指さすと、真顔で告げた。
「最初っから砂糖なんて捨てて、倉庫をよじ登っちゃえば早かったんじゃねえか?」
「今更だよ! 本当に今更だよ、てめえ!」
もうそんなことをしている暇はない。余裕なんてこれっぽっちもないのだ。なのに、キリエの口元には自然と笑みが浮かんできていた。
「ふふっ、はっ、あははっ」
「なに笑ってんだよ!」
「トルンこそ!」
「俺はただな!」
「うん!」
「お前と一緒で、すっげえ心強いと思っただけなんだよ!」
「そっか!」
「ああ!」
「おれもだよ!」
その数秒後、イェローズの鋼のような爪がトルンを貫いた。
母のいる世界を始めて憎んだ瞬間だった。
どうして。
どうして。
どうして。
罰が当たったんだ。
母さんが生き返ったことを喜んだから。
どうして、ばあちゃんがいなかったことになってる?
どうして、死者再生法がない?
おれはトルンを生き返らせる方法を知っているのに。
どうして、トルンは燃やされているんだ?
「きみ、大丈夫かい?」
「あ……?」
いつの間にか、キリエは火葬場にぽつんと取り残されていた。
「だ、大丈夫です。すみません」
「そうかい? それじゃ、ここもう閉めてもいいかな?」
「はい。今、出ます」
鞄を持って外に出ると、もう真っ暗でぽっかりと青白い太陽が浮かんでいた。中央に戻るための馬車はどこにも見当たらない。完全に置いて行かれたらしい。管理人が鍵をかけてからキリエの横に立ち、同様に見回してあーあと言った。
「きみ、マックスさんのとこだろう? さっき出たばかりだから、ぼくの馬で行けば追いつくかもしれないけど……。どうする?」
「それじゃあ、お願いし……今、なんて?」
「え?」
首を傾げる管理人にキリエは詰め寄った。
「今、マックスさん、て言いましたよね? ――今日は何日ですか?」
「ええ? えーと」
管理人は戸惑いながらも時計を出して教えてくれた。キリエは愕然とした。
教えられたのは、トルンが死ぬ前日の日付だった。
キリエはぐっと唇を引き結び、拳を握った。管理人に礼を言うと、中央ではなく北へと走り出した。火葬場はカルト地区の端にあり、北方城壁まではそれほど離れてはいない。二人が三角地帯に入ったのは明日の午前中だから十分間に合う。驚きはだんだんと興奮に変わり、キリエは高笑いしながら北へ北へと駆けていった。
城壁内にはすんなりと入ることができた。キリエは男子階の自分が使った部屋に入ると、右側のベッドに眠る自分をつついた。
「おい、おい」
「……んん……?」
真夜中だったが、“キリエ”はすぐに起きてくれた。キリエは“キリエ”に顔を近付けると、これから起きることを早口で伝えた。“キリエ”はやや寝ぼけ眼だったが、しっかりと頷いてくれた。これでいい。これで“キリエ”とトルンは三角地帯に行かなくなる――……
数時間後、三角地帯で泣きじゃくる自分の姿を見た。
そしてその直後、キリエは夜明け前の三角地帯にいた。
「先生っ、先生っ」
再び男子階まで駆け上がり、今度は自分の部屋ではなくヨアヒム先生の部屋のドアを叩いた。
「先生!」
「誰だ、こんな時間に……」
ヨアヒム先生はキリエの顔を見た途端にドアを閉めようとした。慌てて足をねじこみ、キリエは顔を突っ込んだ。
「待って、先生。大事な話があるんだ。聞いてくれ」
「聞いてくれじゃない」
「くださいっ」
ヨアヒム先生は眉を顰め、しかし中に入れてくれた。やっぱりだ。ヨアヒム先生は厳しい筋肉達磨だが、決して生徒を裏切らない。キリエはこれから起こることを話し、自分とトルンを三角地帯に送らないでくれと頼んだ。ヨアヒム先生は疑わしげな目をしていたが、キリエが必死に懇願すると、溜め息を吐いて頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。
「分かったから、早く寝ろ。眠れないならここにいてもいいが」
キリエは安心で涙が溢れそうなのを堪えながら返した。
「汗臭そうなので遠慮しときます」
「貴様あっ!」
ヨアヒム先生は二人を三角地帯に送らなかった。
それなのに、トルンはまた死んだ。
キリエはまた夜明け前の三角地帯にいた。
似たようなことを何度か繰り返し、もう三角地帯に入るのを阻止するのは無理だった。キリエは倉庫を探し回って手頃な武器を見つけると、それを逃げる時に使った道に置いておいた。数時間後、二人はそこを通らずにまたトルンだけが死んだ。今度はいろいろな場所に仕掛けた。見回りに来た兵士に回収されてしまった。次は見回りの後に仕掛け、二人は気付いてくれたが、使う前に死んだ。その次は使ってくれたが、イェローズも武器に気付いてしまい利用された。武器ではなく木の板を立てかけ、倉庫を乗り越えられるようにした。追いつかれた。危険だが、追いかけられている二人の前に武器を落とした。駄目だった。自分で武器を持ってイェローズを足止めしようとした。できなかった。それでも何度も挑戦した。何度も何度もキリエは敗れ、そのたびに時間は巻き戻り、絶望に落とされ、
「うっ、あっ、あああああああああああああああああああああああああああああーっ!!!」
何十何百回目の夜明け前の三角地帯。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!」
キリエは自分を殴った。諦めようとしている自分を叱咤した。しかし、限界なのも事実だった。
「ああ、あ、ああぁあああぁ……」
のろのろと起き上がると、城壁を出た。半ば足を引きずりながら街道を辿る。もはや頼れる人物は二人しかいなかった。可能性があるのは二人だけだった。
不死身の王〈永遠王〉と〈罪負い女王〉なら、もしかしたら――……
「キリエ、前に出んなっつったろ」
キリエはオレンジ味の飴を舐め、三角地帯に続くドアの脇にもたれかかっていた。
「ごめん」
俯くキリエにクリスは舌打ちし、隣に立った。
「謝るんなら、最初からやれや。……何をそんなに急いでんの」
「おれ、急いでる?」
「焦ってる」
「そっか……」
北軍兵でここに近付く人はあまりいない。キリエに気を遣って、必要最低限は近付かないようになっているのが暗黙の了解だった。だから、キリエはたまにここに一人で来た。踏み込んでくるのは相棒のクリスくらいだった。
「今日も入らんか?」
「……うん」
あれから、三角地帯には一度も入っていなかった。扉を開けることさえできなかった。ただ、オレンジ味のものはよく食べた。まるで、イェローズを噛み砕き、貪るようによく口にした。
「キリエ、ほんまにここに来ると人が変わるな。……怒る気失せるわ」
クリスは溜め息を吐いて、ずるずると床に座り込んだ。さりげなくキリエの隣に。キリエも腰を下ろした。
「そうかな」
「ああ。すんごい変わる。……なあ、そろそろ前見ろよ」
「前……?」
意味が分からず、目を伏せる。前なら見ていた。いつでも見ていた。メアリーに、〈薔薇の魔女〉に打ち勝つ日を。
「強くなりたい」
「強いだろ」
「まだ足りないんだ。もっと強くならないと」
でないと、あの魔女には勝てない。
「あのなあ、それ以上強くなったら、ついて行けんだろ」
「じゃあ組み合わせを変えてもらおう」
「ふざけんな、ボケ。死ね。死ね、カス。誰がやるか」
「意味分かんない」
「もんのすんごい明白だろ」
そう言っていたクリスは、ある日の戦闘で死んだ。
「クリス……?」
そうして胸に迫ってきた苦しみと寂しさで、自分がいかにクリスに助けられていたかを知った。クリスの死因は首の骨の骨折だった。死者再生法があれば生き返った傷だった。
城壁上から散骨するとき、皆は泣きながら笑っていた。ありがとうと手を振っていた。キリエは逃げ出した。三角地帯への入り口の手前で床に転がって咽び泣いた。慰めてくれる者はいなかった。その人は死んでしまった。キリエは泣き疲れて何もできなくなるまで叫び暴れていた。
顔に白い粉がかかった。
三角地帯へのドアが開け放たれていた。
這ったままドアの元まで行くと、白い粉がまた微かに濡れた頬についた。見上げれば、遥か遠くの城壁上から撒かれた骨が空中できらきらと輝いていた。
「クリスは……」
キリエは蹲った。
「死んでも、おれを慰めてくれるんだな……」
数年ぶりの三角地帯は、あの頃と何一つ変わっていなかった。
その後、キリエは次の相棒と上手くいかず、相棒なしの遊軍、支援枠として若干持て余されて、西軍への応援として異動することになる。
「改めまして。北軍から来ました、キリエ・シュナイダーと言います。第二小隊を立て直すまでの間だけですが、よろしくお願いします」
「ヒメです。シュノー地区出身です」
「シュノーのヒメか。覚えやすくていいですね」
黒い髪の不思議な女の子だった。
ただ、黒い髪を不思議だとは思わなかった。
向こう側ではよくある色だったから。
「ヒメ……」
ここはひたすら白い。
大地も、家も、服も、人間も。
あの色を求めて、おれは手を伸ばした。
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