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ヒメの章
開拓暦586年1月、第一城壁、西方城壁防衛軍基地(―Penda Acton2)
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そして、三日が経った。
その前日の夕方から段々と光量を落としていった太陽は、七時頃にはその輝きをほぼ失い、やがて完全に世界は闇に包まれた。〈月夜〉が始まった。
「ねえ、ヒメ! すごいよ!」
見張りを終えて戻ってきたミリアが、ヒメの手を握ってぶんぶん上下に振った。
「外、真っ暗! 本当になあんにも見えないの!」
「見張りって、今日は外に出ないんだよね?」
〈月夜〉で活動する怪物はいないが、城壁に明かりがついていればそれを目印にやってこないとも限らない。だから、この日だけは灯りを入れず、見張りも外ではなく中で待機するだけとなっていた。
ミリアは首を縦に振った。
「だから、こっそりよ。私、軍に入る前はお母さんに絶対駄目って言われてたから、これまで見たことがなくて。本当、びっくりした。あの『マグ・カルチャー』の表紙みたいに、ちょっとはぼんやりしてるのかと思ってた」
「それ、私も思ってた」
だよねーと女子特有の高い笑い声が弾ける。ペンダが黙ってそれを眺めていると、キリエがおれもと割って入った。
「おれも、こんなに身動き取れないほどだとは思わなかった。ペンダは?」
「あ、ああ、俺も」
いきなりだったので驚いたが、ペンダは心の中でキリエを拝み倒した。ペンダみたいなごついのが会話に入るのと、キリエみたいな優男が入るのとでは天と地ほどの差がある。
「初めて見たのは地区学校に入る前だったから、怖くてちょっとちびった気がする」
だというのに、焦って妙なことまで口走ってしまい、ペンダはしまったと慌てて口を噤んだ。しかし、女子二人は小便ネタを気にした様子はなく、えー、と笑った。
「全然怖がりになんて見えませんよ?」
「うん」
「そ、そんなことないよ?」
ほっとして返すと、キリエが肩を組んでくる。
「こいつのびびり、学校中で有名だったんだからな」
「ええっ!」
「そうなのっ!?」
「こ、誇張すんな!」
「事実だろ。肝試しで気絶したくせに」
「うそ、意外!」
「そうなの?」
ヒメが見上げてきて、ペンダはうっと詰まる。二人の身長差だとちょうど上目遣いになって、ものすごく心臓に悪かった。
「気絶っていうかな。その、ちょっと記憶が吹っ飛んだだけで……」
「どうして?」
「……た、たまたま振り返ったら、職員寮の窓のカーテンが開いてて」
「?」
「け、ケツが、風呂上がりのニクマルのケツがあったんだ……!」
「「…………」」
一瞬の沈黙の後、ヒメとミリアは盛大に噴き出した。
「に、ニクマル先生っ……!」
「怖い! それは怖い!」
ひいひいと腹を抱え体をくの字に折る。引かれないか少し不安だったから、ペンダはほっと胸を撫で下ろした。
「ははっ、だよなー!」
「……つまり、お前は消灯の後に寮を抜け出したということだな?」
「!? ふごっ!!」
頭のてっぺんに拳骨を落とされ、ペンダはその場にうずくまった。いつの間にか、こめかみを引き攣らせたヨアヒム先生がいた。
「せっ、せんせい……いたんですか」
「たった今来たところだ」
ヨアヒム先生はキリエの軍服の襟首を掴むと、ずるずる引きずりだした。
「招集だ。行くぞ」
「え、おれだけ?」
「第二隊だけで会議だ。ほら、自分の足で歩け」
「はいはい、了解です。痛っ」
キリエはそれじゃと手を振り、ペンダには小さく親指を立てていなくなった。そんな親指を立てられても困るのだが、せっかくくれたチャンスを無駄にはすまいと、ペンダは何とかもう一度会話に食い込むために気合を入れ直した。
すると、ミリアがポケットから懐中時計を取り出した。
「もうすぐ第三隊の訓練時間じゃない?」
「え? あ、本当だ」
「全く。いい加減、時計買いなよ」
「買ったけど、なくしちゃって」
「もう、分かったから、急いで急いで」
ミリアはヒメとペンダの背中を押す。じゃあねと走り出すヒメの後に続きながらちらりと振り返ると、ミリアはぺろりと舌を出してウインクをしてきた。ペンダは真っ赤になって慌てて顔を逸らした。ばれている。
屋内訓練場に着くと、まだ第一隊が使っていた。壁にかかっている時計を見ると、まだ三十分近くあった。
「あれ? ずれてたのかな」
ヒメは首を傾げたが、すぐにペンダを手招きして外に出た。
「ここで待ってよ」
「あ、ああ」
壁に二人並んで寄りかかる。久し振りに二人きりになって、ペンダは鼓動が速くなっていくのを感じた。
あんなに決意したにも関わらず、ペンダはまだヒメに言えていなかった。
よくよく考えれば、今、ヒメは微妙な立場にいるのだ。新種――コーラショと一番交戦しているためによく隊長から呼び出しを受けるし、訓練の時も作戦の中枢として行動していて、常にペンダと一緒にいるわけではない。空いている時間は亡くなった第二小隊の遺品整理をしたり、ペレの世話やリハビリの手伝いをミリアとしている。忙しいのだ。二人きりになんて、そうそうなれるわけがない。
それに、とペンダは思う。
今、この話をするのは、ヒメの負担を増やすだけなのではないかと。
急ぎではないのだ。なら、コーラショとの戦いが終わってからでも遅くはないはずだ。
「……」
そこまでつらつらと考えを巡らせてから、ペンダは勢いよく頭を振った。ヒメがびくりとして肩を跳ね上げた。
「虫? 刺された?」
「っあー……、いや、刺されてはいない。ごめんごめん」
「そっか」
よかったと微笑むヒメに、ペンダは胸をぎりぎりと引き千切られるような心地がした。引き千切っているのはペンダ自身だ。自分で自分の首を絞めるよりも、ずっと苦しく、ずっと痛い。心のどこかで、今だ、言ってしまえと囁く声がする。そうしたい。だが、そうできない。
あんな話を聞いてしまったら、もう、できない。
「つか、あいつおせえな……」
告白を決意した後。時計を確認し、首を捻る。そろそろ大浴場も混んで入場制限がかかってしまう頃だ。手早く着替えとタオルをかき集め、キリエの分も探そうとしたが、さすがに人のものに手を付けるのは憚られて、逡巡の後にペンダは自分の分だけ持って部屋を出ることにした。
「おう、ペンダ、風呂か? 一緒に行くか?」
「いや、キリエ探してから行くわ」
「それなら、さっき休憩室で見たぜ」
「まじ? あんがとなー」
隣室の同僚に礼を言い、休憩室へと足を向ける。一言かけてから先に行こうと決めて、男子階なのをいいことにパンツに指をひっかけ、くるくる回しながら歩いた。
休憩室に入ると、キリエとヨアヒム先生はすぐに見つかった。二人は一番奥の席でカードを手に睨み合いをしていて、ただの遊びとは思えない迫力が漂っている。そのせいか他の隊員達はみんな離れた場所に座っていた。話しかけにくい雰囲気にたじろぐも、気を取り直して二人に近付く。
「おい、キリエ――」
「あの新種、コーラショと言ったか。お前が言い出したらしいな」
ヨアヒム先生の低い声が耳を打ち、ペンダの足が止まった。コーラショ。初めて聞く名前だった。翌日の集会で知らされる内容だったが、この時のペンダはまだ何も知らなくて、先に聞いてしまっていいものなのか悩んでいる間に話はどんどん進んでいった。
「言い出したというか、思い出したんですよ。父の記録にあったのを」
「アベル・シュナイダーの記録はすべて国が管理していると思っていたが」
「さすがに日記までは持って行かないでしょう。読んでいても外見の特徴くらいしか書いてなかったんで、報告するまでのことはないと判断したんじゃないですか」
「外見だけ、な」
ヨアヒム先生はキリエの手からカードを一枚抜き取り、自分の分からも一枚取って山に捨てる。ババ抜きだろうか。
「それにしては、随分と上手く戦っていたらしいが」
「勘ですよ。それに、ヒメからも話は聞いてたし」
「本当にそれだけか」
ヨアヒム先生の声がぐっと低くなり、凄みが増す。ペンダは思わず背筋を伸ばしてしまったが、キリエの様子を見てそんなものは頭から吹っ飛んでいった。キリエは全く、それこそ不自然なほどに、動じることはなく、にこやかにヨアヒム先生の手札から一枚カードを取っていった。
「はい、上がり。おれの勝ちっ」
「シュナイダー」
「これで五分五分ですよ。どうします、もう一戦行きます?」
「話を逸らすんじゃない、シュナイダー」
ヨアヒム先生はいらだったようにキリエの手からカードの束を奪うと、しかし机にそっと置いた。いつもなら叩きつけてもよさそうなものを、静かに、まるで神経を逆立てないように、慎重に置く。
「シュナイダー。四年、いや、もうすぐ五年だ。いまさら時効だろう。上司に言えとまでは言わない。誰か、一人でも信頼している奴に言ったらどうだ」
五年。目眩を呼び起こす数字に、足元がぐらついた。そのことを思い出していたばかりだったのに、深くは考えようとしていなかったことをまざまざと理解させられて、ペンダは自分の考えの甘さを痛感させられた。
五年という数字は大きくもあり、小さくもある。あっという間に過ぎ去ってしまうものであり、それでいてかけがえのない年月。ペンダも意識せずとも、どこかで時効という言葉を考えていたのかもしれない。既に次の段階は始まっている。その手助けをするべきではないか。そう、呑気に考えていた。
それは部外者の視点だ。
「先生」
ようやく口を開いたキリエは、相変わらず穏やかな表情だった。
それはそれは、ぞっとするほどに穏やかな。
「全くもう、誰に何を言えって言うんですか」
笑い声が頭の中にこだまする。ただ空っぽの音だけが頭の中を反射して響いて、ペンダは吐き気を覚えた。上っ面だけの言葉には何もない、そのはずなのに、ペンダの心臓をがりがりと削り取っていく。
耐えきれず、反転して休憩室を逃げ出していた。
五年前。
おれは何も知らず、知ろうともせず、ただひたすら自分のことばかりを考えて生きていた。
だって、仕方ないじゃないか。あの頃の俺はもやしで、どうしようもない劣等生で、どうすれば卒業できるのか、どうすれば城壁で生き残れるのかに必死で。そもそも、あの時、俺は別の場所にいた。他の事にかまけてる余裕なんかこれっぽっちもなかったんだ――
だが、知ってしまった。
ペンダでは何の助けにもならないことを、悟ってしまった。
「なあ、ヒメ」
「なに?」
ヒメが小首を傾げながらペンダを見上げてくる。たったそれだけのことに幸せを感じた。感じてしまった。だから、ペンダは我慢することにした。今は、このままでいい。このまま、一緒に会話することさえできれば。
「キリエがこっちに来る前の話って、知ってるか?」
「北軍の鬼」
「そうそう。それ、なんでそう言われてるか知ってる?」
「強いから?」
「それだけじゃないんだ」
ヒメの首がさらに傾き、だんだん体ごと下へと下がっていく。ペンダは途中で手を差し込んでストップをかけながら、正解を言った。
「あいつ、一人で戦ってるんだと」
「え?」
元々つぶらな瞳が、さらに丸くなる。ペンダは頷いた。
「意味わかんねえよな。一人で怪物と戦うなんて。でも、事実らしい。軍学校時代の同期に確認したし、他の奴らの間にもだんだん広まってきてる……。あいつは最初の相棒が死んでから、ずっと、誰とも組まずに戦ってきたらしいんだ」
怪物と戦う時は、槍と盾といった二人組を最小単位としている。そうでなければ、簡単に死んでしまうからだ。たった一人で向かうなんて、無謀に等しい。
それを可能としている。それだけの実力がキリエにはある。だとしても、やはり大局を見据えるならば、誰かと組むのが堅実で安全なやり方だ。
だから、北軍隊士達は呼んだ。勇ましくも酔狂な気違いとして、鬼の名を。
「……もしかして、キリエが送られてきたのって」
「たぶんな」
戦力や士気高揚のためだけではない。中途半端な穴を埋めるのに最適だったからというだけでもない。おそらく、キリエの扱いに北軍は手に余らせていた。キリエは故北軍軍団長アベル・シュナイダーの息子だ。北軍は学生時代からキリエに目を付けていて、卒業するなりさっさと引き抜いた。だから、いまさら放逐することもできなかったのだろう。今回のタイミングは、北軍にとっても非常にちょうどよかったのだ。
知らず、拳に力がこもる。こんな大事な話を、他の隊員の噂から聞くまでペンダは全く知らなかった。知ろうともしなかった。学生時代からの友人という地位に胡坐をかいて、何もかも知った気になっていた。
こんな自分に、キリエを助ける資格なんてなにもない。
「じゃあ」
ふっと微笑んだ気配がして、ペンダは振り返った。
「キリエ、こっちに来れてよかったね。きっと、いい息抜きになれたんじゃないかな」
ヒメはにっこりとし、少し背伸びをすると、ペンダの頭をよしよしと撫でた。たったそれだけのことに、何故か肩の力が抜けて、ペンダは無性に泣きたくなった。
「……だな」
それからの時間は他愛もないおしゃべりに費やした。その間に、ペンダの心は決まっていった。
訓練が終わると今度は全体会議があり、それで一日の予定は終了した。キリエと合流し、いつもより早い夕食を取って、そこでヒメとは別れた。
「……」
ヒメはまたペレの所に行くらしい。早足でいなくなるヒメの後ろ姿をぼーっと目で追っていると、突然、キリエに脇腹をつつかれた。
「ぶげっ。なんだよ」
口を押さえながら睨むと、キリエはやれやれと首を振る。
「その様子じゃ、言えなかったんだろ」
「? 何を?」
「だから、告白、できなかったんだろ?」
ぽかんとするペンダに気付かず、キリエは続ける。
「せっかく、二人きりにしてやったのに、お前ってやつは……。本当に情けないなあ。そんなんじゃ、他の奴にとられるぞ?」
「おっ、おう……?」
「確かに、こんな状況でどうかとは思うけどさ、言わないと伝わんないんだから。特にヒメには」
「……おう」
ペンダの暗い声に、キリエは慌てたように肩をばしばし叩いてくる。
「まあ、気にすんなよ。お前ならいけるって。脱もやし化したんだから」
「……それは関係ねえだろ」
「あるって」
明るいキリエの声がやけに耳について仕方がない。ペンダにはそんな資格はないと分かっていたが、それでももはや耐えきれなかった。
「キリエは、どうなんだよ」
「え?」
キリエの手を払いのけ、逆にその肩を掴む。
「キリエはどう思ってんだよ、あいつのこと」
「どうって……。そりゃ、良い奴だと」
「友達じゃあねえのか」
何故か一瞬言葉に詰まり、しかしすぐに頷く。
「そりゃ、もちろん。だから、ペンダとくっついたらすごくいいだろうなって」
「あいつと同じくらいか?」
「あいつ?」
「お前は、あいつと同じくらいヒメのことを信頼してるんじゃ――」
その瞬間、今度こそ、キリエの顔が歪んだのをペンダは見逃さなかった。
「キリエ、」
「もしかして、俺がライバルになるんじゃないかって気にしてるのか? そんなわけないだろ。ヒメはただの友達だよ」
だが、キリエはやんわりとペンダの手を外して歩きだした。
「だから、早く言えよー。おれ、いつまでここにいるか分かんないんだし……」
「分かってんだろ、誰のことだか!」
思わず振り向かせ、胸ぐらを掴んでいた。周囲の視線が集まるが、ペンダは構わずキリエを睨みつけた。キリエは困ったように頭を掻いた。
「ごめん、ペンダ。――部屋に行こう」
どこか有無を言わせぬ響きに、ペンダは舌打ちして従う。食堂に近いこの場所はあまりにも人目が多い。部屋に戻ると、キリエは再び謝った。
「ごめん、ペンダ。でも、あんまり人に知られたい話じゃないからさ」
「……俺こそ、悪かった」
少し落ち着いてきて、ばつの悪さを覚えながらもペンダも小さく返す。それぞれのベッドに向かい合うように座り、ややあってから、キリエは戸惑うように口を開いた。
「ペンダの言う通りだ。おれはまだ、忘れられない」
僅かに俯くキリエに、ほら見ろとペンダは思った。ところが、キリエはすぐに顔を上げ、にっこり笑ってみせたのだった。
「でも、大丈夫だ。だって、忘れることなんか絶対にできないし、したくもない」
ヨアヒム先生に見せたあの笑顔。不自然なほどに歪みのない、にっこりとしか表現しようのない顔。
誰か、一人でも信頼している奴に言ったらどうだ。
誰に何を言えって言うんですか。
拒絶の二字が、ペンダの脳裏をぐるぐる回った。
「心配かけてごめんな」
やっぱり、俺は信頼されていなかったらしい。
「…………そっか」
ペンダの笑みは相当引き攣っていたに違いない。それでも、キリエは完璧な笑顔を貫いていた。
馬鹿野郎と心の中で呟いた。糞野郎、畜生、ボケ、カス、馬鹿、阿呆と何度も何度も繰り返す。言葉にしたいのに、それは不可能で、ペンダは思い切りベッドに飛び込んで布団を頭から被った。暫くしてから、キリエが灯りを消したのが分かった。
「いよいよ、明日か」
キリエの声が聞こえる。独り言かと思ったが、一応返した。
「そうだな」
「おれだけ別、か」
寝返りの音。そっと布団から目だけをのぞかせる。
キリエがこちらを見ているような気がした。
「ペンダ、ヒメを頼んだ」
「……何言ってんだよ、当たり前だろ」
返事は、なかった。
そして、長い夜は明ける。
その前日の夕方から段々と光量を落としていった太陽は、七時頃にはその輝きをほぼ失い、やがて完全に世界は闇に包まれた。〈月夜〉が始まった。
「ねえ、ヒメ! すごいよ!」
見張りを終えて戻ってきたミリアが、ヒメの手を握ってぶんぶん上下に振った。
「外、真っ暗! 本当になあんにも見えないの!」
「見張りって、今日は外に出ないんだよね?」
〈月夜〉で活動する怪物はいないが、城壁に明かりがついていればそれを目印にやってこないとも限らない。だから、この日だけは灯りを入れず、見張りも外ではなく中で待機するだけとなっていた。
ミリアは首を縦に振った。
「だから、こっそりよ。私、軍に入る前はお母さんに絶対駄目って言われてたから、これまで見たことがなくて。本当、びっくりした。あの『マグ・カルチャー』の表紙みたいに、ちょっとはぼんやりしてるのかと思ってた」
「それ、私も思ってた」
だよねーと女子特有の高い笑い声が弾ける。ペンダが黙ってそれを眺めていると、キリエがおれもと割って入った。
「おれも、こんなに身動き取れないほどだとは思わなかった。ペンダは?」
「あ、ああ、俺も」
いきなりだったので驚いたが、ペンダは心の中でキリエを拝み倒した。ペンダみたいなごついのが会話に入るのと、キリエみたいな優男が入るのとでは天と地ほどの差がある。
「初めて見たのは地区学校に入る前だったから、怖くてちょっとちびった気がする」
だというのに、焦って妙なことまで口走ってしまい、ペンダはしまったと慌てて口を噤んだ。しかし、女子二人は小便ネタを気にした様子はなく、えー、と笑った。
「全然怖がりになんて見えませんよ?」
「うん」
「そ、そんなことないよ?」
ほっとして返すと、キリエが肩を組んでくる。
「こいつのびびり、学校中で有名だったんだからな」
「ええっ!」
「そうなのっ!?」
「こ、誇張すんな!」
「事実だろ。肝試しで気絶したくせに」
「うそ、意外!」
「そうなの?」
ヒメが見上げてきて、ペンダはうっと詰まる。二人の身長差だとちょうど上目遣いになって、ものすごく心臓に悪かった。
「気絶っていうかな。その、ちょっと記憶が吹っ飛んだだけで……」
「どうして?」
「……た、たまたま振り返ったら、職員寮の窓のカーテンが開いてて」
「?」
「け、ケツが、風呂上がりのニクマルのケツがあったんだ……!」
「「…………」」
一瞬の沈黙の後、ヒメとミリアは盛大に噴き出した。
「に、ニクマル先生っ……!」
「怖い! それは怖い!」
ひいひいと腹を抱え体をくの字に折る。引かれないか少し不安だったから、ペンダはほっと胸を撫で下ろした。
「ははっ、だよなー!」
「……つまり、お前は消灯の後に寮を抜け出したということだな?」
「!? ふごっ!!」
頭のてっぺんに拳骨を落とされ、ペンダはその場にうずくまった。いつの間にか、こめかみを引き攣らせたヨアヒム先生がいた。
「せっ、せんせい……いたんですか」
「たった今来たところだ」
ヨアヒム先生はキリエの軍服の襟首を掴むと、ずるずる引きずりだした。
「招集だ。行くぞ」
「え、おれだけ?」
「第二隊だけで会議だ。ほら、自分の足で歩け」
「はいはい、了解です。痛っ」
キリエはそれじゃと手を振り、ペンダには小さく親指を立てていなくなった。そんな親指を立てられても困るのだが、せっかくくれたチャンスを無駄にはすまいと、ペンダは何とかもう一度会話に食い込むために気合を入れ直した。
すると、ミリアがポケットから懐中時計を取り出した。
「もうすぐ第三隊の訓練時間じゃない?」
「え? あ、本当だ」
「全く。いい加減、時計買いなよ」
「買ったけど、なくしちゃって」
「もう、分かったから、急いで急いで」
ミリアはヒメとペンダの背中を押す。じゃあねと走り出すヒメの後に続きながらちらりと振り返ると、ミリアはぺろりと舌を出してウインクをしてきた。ペンダは真っ赤になって慌てて顔を逸らした。ばれている。
屋内訓練場に着くと、まだ第一隊が使っていた。壁にかかっている時計を見ると、まだ三十分近くあった。
「あれ? ずれてたのかな」
ヒメは首を傾げたが、すぐにペンダを手招きして外に出た。
「ここで待ってよ」
「あ、ああ」
壁に二人並んで寄りかかる。久し振りに二人きりになって、ペンダは鼓動が速くなっていくのを感じた。
あんなに決意したにも関わらず、ペンダはまだヒメに言えていなかった。
よくよく考えれば、今、ヒメは微妙な立場にいるのだ。新種――コーラショと一番交戦しているためによく隊長から呼び出しを受けるし、訓練の時も作戦の中枢として行動していて、常にペンダと一緒にいるわけではない。空いている時間は亡くなった第二小隊の遺品整理をしたり、ペレの世話やリハビリの手伝いをミリアとしている。忙しいのだ。二人きりになんて、そうそうなれるわけがない。
それに、とペンダは思う。
今、この話をするのは、ヒメの負担を増やすだけなのではないかと。
急ぎではないのだ。なら、コーラショとの戦いが終わってからでも遅くはないはずだ。
「……」
そこまでつらつらと考えを巡らせてから、ペンダは勢いよく頭を振った。ヒメがびくりとして肩を跳ね上げた。
「虫? 刺された?」
「っあー……、いや、刺されてはいない。ごめんごめん」
「そっか」
よかったと微笑むヒメに、ペンダは胸をぎりぎりと引き千切られるような心地がした。引き千切っているのはペンダ自身だ。自分で自分の首を絞めるよりも、ずっと苦しく、ずっと痛い。心のどこかで、今だ、言ってしまえと囁く声がする。そうしたい。だが、そうできない。
あんな話を聞いてしまったら、もう、できない。
「つか、あいつおせえな……」
告白を決意した後。時計を確認し、首を捻る。そろそろ大浴場も混んで入場制限がかかってしまう頃だ。手早く着替えとタオルをかき集め、キリエの分も探そうとしたが、さすがに人のものに手を付けるのは憚られて、逡巡の後にペンダは自分の分だけ持って部屋を出ることにした。
「おう、ペンダ、風呂か? 一緒に行くか?」
「いや、キリエ探してから行くわ」
「それなら、さっき休憩室で見たぜ」
「まじ? あんがとなー」
隣室の同僚に礼を言い、休憩室へと足を向ける。一言かけてから先に行こうと決めて、男子階なのをいいことにパンツに指をひっかけ、くるくる回しながら歩いた。
休憩室に入ると、キリエとヨアヒム先生はすぐに見つかった。二人は一番奥の席でカードを手に睨み合いをしていて、ただの遊びとは思えない迫力が漂っている。そのせいか他の隊員達はみんな離れた場所に座っていた。話しかけにくい雰囲気にたじろぐも、気を取り直して二人に近付く。
「おい、キリエ――」
「あの新種、コーラショと言ったか。お前が言い出したらしいな」
ヨアヒム先生の低い声が耳を打ち、ペンダの足が止まった。コーラショ。初めて聞く名前だった。翌日の集会で知らされる内容だったが、この時のペンダはまだ何も知らなくて、先に聞いてしまっていいものなのか悩んでいる間に話はどんどん進んでいった。
「言い出したというか、思い出したんですよ。父の記録にあったのを」
「アベル・シュナイダーの記録はすべて国が管理していると思っていたが」
「さすがに日記までは持って行かないでしょう。読んでいても外見の特徴くらいしか書いてなかったんで、報告するまでのことはないと判断したんじゃないですか」
「外見だけ、な」
ヨアヒム先生はキリエの手からカードを一枚抜き取り、自分の分からも一枚取って山に捨てる。ババ抜きだろうか。
「それにしては、随分と上手く戦っていたらしいが」
「勘ですよ。それに、ヒメからも話は聞いてたし」
「本当にそれだけか」
ヨアヒム先生の声がぐっと低くなり、凄みが増す。ペンダは思わず背筋を伸ばしてしまったが、キリエの様子を見てそんなものは頭から吹っ飛んでいった。キリエは全く、それこそ不自然なほどに、動じることはなく、にこやかにヨアヒム先生の手札から一枚カードを取っていった。
「はい、上がり。おれの勝ちっ」
「シュナイダー」
「これで五分五分ですよ。どうします、もう一戦行きます?」
「話を逸らすんじゃない、シュナイダー」
ヨアヒム先生はいらだったようにキリエの手からカードの束を奪うと、しかし机にそっと置いた。いつもなら叩きつけてもよさそうなものを、静かに、まるで神経を逆立てないように、慎重に置く。
「シュナイダー。四年、いや、もうすぐ五年だ。いまさら時効だろう。上司に言えとまでは言わない。誰か、一人でも信頼している奴に言ったらどうだ」
五年。目眩を呼び起こす数字に、足元がぐらついた。そのことを思い出していたばかりだったのに、深くは考えようとしていなかったことをまざまざと理解させられて、ペンダは自分の考えの甘さを痛感させられた。
五年という数字は大きくもあり、小さくもある。あっという間に過ぎ去ってしまうものであり、それでいてかけがえのない年月。ペンダも意識せずとも、どこかで時効という言葉を考えていたのかもしれない。既に次の段階は始まっている。その手助けをするべきではないか。そう、呑気に考えていた。
それは部外者の視点だ。
「先生」
ようやく口を開いたキリエは、相変わらず穏やかな表情だった。
それはそれは、ぞっとするほどに穏やかな。
「全くもう、誰に何を言えって言うんですか」
笑い声が頭の中にこだまする。ただ空っぽの音だけが頭の中を反射して響いて、ペンダは吐き気を覚えた。上っ面だけの言葉には何もない、そのはずなのに、ペンダの心臓をがりがりと削り取っていく。
耐えきれず、反転して休憩室を逃げ出していた。
五年前。
おれは何も知らず、知ろうともせず、ただひたすら自分のことばかりを考えて生きていた。
だって、仕方ないじゃないか。あの頃の俺はもやしで、どうしようもない劣等生で、どうすれば卒業できるのか、どうすれば城壁で生き残れるのかに必死で。そもそも、あの時、俺は別の場所にいた。他の事にかまけてる余裕なんかこれっぽっちもなかったんだ――
だが、知ってしまった。
ペンダでは何の助けにもならないことを、悟ってしまった。
「なあ、ヒメ」
「なに?」
ヒメが小首を傾げながらペンダを見上げてくる。たったそれだけのことに幸せを感じた。感じてしまった。だから、ペンダは我慢することにした。今は、このままでいい。このまま、一緒に会話することさえできれば。
「キリエがこっちに来る前の話って、知ってるか?」
「北軍の鬼」
「そうそう。それ、なんでそう言われてるか知ってる?」
「強いから?」
「それだけじゃないんだ」
ヒメの首がさらに傾き、だんだん体ごと下へと下がっていく。ペンダは途中で手を差し込んでストップをかけながら、正解を言った。
「あいつ、一人で戦ってるんだと」
「え?」
元々つぶらな瞳が、さらに丸くなる。ペンダは頷いた。
「意味わかんねえよな。一人で怪物と戦うなんて。でも、事実らしい。軍学校時代の同期に確認したし、他の奴らの間にもだんだん広まってきてる……。あいつは最初の相棒が死んでから、ずっと、誰とも組まずに戦ってきたらしいんだ」
怪物と戦う時は、槍と盾といった二人組を最小単位としている。そうでなければ、簡単に死んでしまうからだ。たった一人で向かうなんて、無謀に等しい。
それを可能としている。それだけの実力がキリエにはある。だとしても、やはり大局を見据えるならば、誰かと組むのが堅実で安全なやり方だ。
だから、北軍隊士達は呼んだ。勇ましくも酔狂な気違いとして、鬼の名を。
「……もしかして、キリエが送られてきたのって」
「たぶんな」
戦力や士気高揚のためだけではない。中途半端な穴を埋めるのに最適だったからというだけでもない。おそらく、キリエの扱いに北軍は手に余らせていた。キリエは故北軍軍団長アベル・シュナイダーの息子だ。北軍は学生時代からキリエに目を付けていて、卒業するなりさっさと引き抜いた。だから、いまさら放逐することもできなかったのだろう。今回のタイミングは、北軍にとっても非常にちょうどよかったのだ。
知らず、拳に力がこもる。こんな大事な話を、他の隊員の噂から聞くまでペンダは全く知らなかった。知ろうともしなかった。学生時代からの友人という地位に胡坐をかいて、何もかも知った気になっていた。
こんな自分に、キリエを助ける資格なんてなにもない。
「じゃあ」
ふっと微笑んだ気配がして、ペンダは振り返った。
「キリエ、こっちに来れてよかったね。きっと、いい息抜きになれたんじゃないかな」
ヒメはにっこりとし、少し背伸びをすると、ペンダの頭をよしよしと撫でた。たったそれだけのことに、何故か肩の力が抜けて、ペンダは無性に泣きたくなった。
「……だな」
それからの時間は他愛もないおしゃべりに費やした。その間に、ペンダの心は決まっていった。
訓練が終わると今度は全体会議があり、それで一日の予定は終了した。キリエと合流し、いつもより早い夕食を取って、そこでヒメとは別れた。
「……」
ヒメはまたペレの所に行くらしい。早足でいなくなるヒメの後ろ姿をぼーっと目で追っていると、突然、キリエに脇腹をつつかれた。
「ぶげっ。なんだよ」
口を押さえながら睨むと、キリエはやれやれと首を振る。
「その様子じゃ、言えなかったんだろ」
「? 何を?」
「だから、告白、できなかったんだろ?」
ぽかんとするペンダに気付かず、キリエは続ける。
「せっかく、二人きりにしてやったのに、お前ってやつは……。本当に情けないなあ。そんなんじゃ、他の奴にとられるぞ?」
「おっ、おう……?」
「確かに、こんな状況でどうかとは思うけどさ、言わないと伝わんないんだから。特にヒメには」
「……おう」
ペンダの暗い声に、キリエは慌てたように肩をばしばし叩いてくる。
「まあ、気にすんなよ。お前ならいけるって。脱もやし化したんだから」
「……それは関係ねえだろ」
「あるって」
明るいキリエの声がやけに耳について仕方がない。ペンダにはそんな資格はないと分かっていたが、それでももはや耐えきれなかった。
「キリエは、どうなんだよ」
「え?」
キリエの手を払いのけ、逆にその肩を掴む。
「キリエはどう思ってんだよ、あいつのこと」
「どうって……。そりゃ、良い奴だと」
「友達じゃあねえのか」
何故か一瞬言葉に詰まり、しかしすぐに頷く。
「そりゃ、もちろん。だから、ペンダとくっついたらすごくいいだろうなって」
「あいつと同じくらいか?」
「あいつ?」
「お前は、あいつと同じくらいヒメのことを信頼してるんじゃ――」
その瞬間、今度こそ、キリエの顔が歪んだのをペンダは見逃さなかった。
「キリエ、」
「もしかして、俺がライバルになるんじゃないかって気にしてるのか? そんなわけないだろ。ヒメはただの友達だよ」
だが、キリエはやんわりとペンダの手を外して歩きだした。
「だから、早く言えよー。おれ、いつまでここにいるか分かんないんだし……」
「分かってんだろ、誰のことだか!」
思わず振り向かせ、胸ぐらを掴んでいた。周囲の視線が集まるが、ペンダは構わずキリエを睨みつけた。キリエは困ったように頭を掻いた。
「ごめん、ペンダ。――部屋に行こう」
どこか有無を言わせぬ響きに、ペンダは舌打ちして従う。食堂に近いこの場所はあまりにも人目が多い。部屋に戻ると、キリエは再び謝った。
「ごめん、ペンダ。でも、あんまり人に知られたい話じゃないからさ」
「……俺こそ、悪かった」
少し落ち着いてきて、ばつの悪さを覚えながらもペンダも小さく返す。それぞれのベッドに向かい合うように座り、ややあってから、キリエは戸惑うように口を開いた。
「ペンダの言う通りだ。おれはまだ、忘れられない」
僅かに俯くキリエに、ほら見ろとペンダは思った。ところが、キリエはすぐに顔を上げ、にっこり笑ってみせたのだった。
「でも、大丈夫だ。だって、忘れることなんか絶対にできないし、したくもない」
ヨアヒム先生に見せたあの笑顔。不自然なほどに歪みのない、にっこりとしか表現しようのない顔。
誰か、一人でも信頼している奴に言ったらどうだ。
誰に何を言えって言うんですか。
拒絶の二字が、ペンダの脳裏をぐるぐる回った。
「心配かけてごめんな」
やっぱり、俺は信頼されていなかったらしい。
「…………そっか」
ペンダの笑みは相当引き攣っていたに違いない。それでも、キリエは完璧な笑顔を貫いていた。
馬鹿野郎と心の中で呟いた。糞野郎、畜生、ボケ、カス、馬鹿、阿呆と何度も何度も繰り返す。言葉にしたいのに、それは不可能で、ペンダは思い切りベッドに飛び込んで布団を頭から被った。暫くしてから、キリエが灯りを消したのが分かった。
「いよいよ、明日か」
キリエの声が聞こえる。独り言かと思ったが、一応返した。
「そうだな」
「おれだけ別、か」
寝返りの音。そっと布団から目だけをのぞかせる。
キリエがこちらを見ているような気がした。
「ペンダ、ヒメを頼んだ」
「……何言ってんだよ、当たり前だろ」
返事は、なかった。
そして、長い夜は明ける。
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