kyrie 涙の国

くり

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叙事詩

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 紀元前、シュメール。
 その男は様々な奇跡を起こし、自らをギルガメシュと名乗った。
 彼には二人の魔女、アルルとニンスンが仕えていた。

 ある時、ギルガメシュは人ならざるものと接触し、彼らとの共存を夢見る。
 そして、自らの命と引き換えに鏡の世界を、怪物の荒野を造った。

 だが、怪物は人間をただ喰らっただけだった。

 ギルガメシュの夢を巡って、残された魔女達は対立し、長い魔女戦争が幕を上げる。
 夢を追い続けたニンスンは、人間が怪物と同等の力を持つことが必要であると説いた。
 彼女は人々を騙して荒野に集め、白い国を造る。
 夢を諦めたアルルは潜伏し、逆転の機会を待った。

 開拓暦四二八年。
 ニンスンの統治に疑念を抱く青年により、彼女の嘘が剥がされる。
 青年は巧みな詐術の腕を有しており、追っ手の目を掻い潜り続けたが、捕われ、殺された。

 処刑の間際、青年は一つの予言を残す。
 曰く、近い内にこの〈大嘘吐きヒポクリス〉は二人の王に倒されるであろうと。

 そして、開拓暦四九七年、〈詐術士ソフィスト〉の予言は現実となる。
 アルルの手を借りて二王は立ち上がり、ニンスンはついに敗れ去った。

 人間の国の統治者は二王に変わった。
 だが、人々の生活は変わらない。
 変わったのは一つだけ。
 人々は怪物からその身を守るため、魔女の庇護ではなく、武器を選んだ。







 ――楽園を追われたイヴの子らは、
   さすらいの旅路からあなたに喚びかける。
   嘆き悲しみ、泣きながらも、この涙の谷にあなたを慕う。

    『サルウェ・レジーナ』
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