WWW再設部隊

脳内企画

文字の大きさ
上 下
7 / 8
Chapter1 サイバネティック・オーガニズム

Chapter1-3 腐った組織を浄化せよ!

しおりを挟む
「最近浮かない顔をしているな。」

 マーカスが、王宮で話しかけて来た。

「イライザ夫人どうだった?」

「それがどんどん疑惑は深まる一方だと言うより、イライザに秘密があるのは確実だ。」

「そうなのか?
 イライザ夫人に限って、そんなことあるのか?」

「僕も信じたくないけれど、イライザは、昼間御者を木の下で待たせて、どこかへ行っている。

 さらには、渡している給金も何かに注ぎ込んでいるし、医師とのことも認めない。

 今はそんな状況だ。

 僕が追求しようとすると、キスをして来て、それ以上は話してくれない。

 イライザには男がいる、多分。
 僕を誤魔化したいほどの大切な男が。」

「待てよ。
 でも普通そんな感じなら、リカルドとキスしたり、色々しないだろ?」

「誤魔化すためだよ。
 僕は頭がおかしくなりそうだ。」

 僕はたまらず頭を抱える。

「結論づけるのは、まだ早いぞ。
 まだ、浮気していると決まったわけじゃないだろ?」

「ああ、今邸の私兵に探らせているところだ。」

「なら、最後まで希望を捨てるな。」

「なぁ、僕達に子供ができなかったからだと思うか?

 いや、今のは聞かなかったことにしてくれ。」

「子供がいてもいなくても、するやつはするし、しないやつはしない。

 でも、イライザ夫人がする人とはまだ思えないんだ。」

「僕もそう思っていた。」

 僕は、疑惑が大きくなればなるほど、不安だし、疑心暗鬼になっていく。

 最近は、王宮に行っても、心ここにあらずで、何も言わないけれど、多分僕の異変に王子も勘付いている。

 侯爵当主として情けないが、イライザを愛している分、僕はどんどん不安定になって行く。





「ねぇ、聞いているの?」

「聞いているよ、母上。」

 母がいる棟の庭園で、日課の母のお茶に付き合っている。

 同じ邸の中だけど、こちらは、父が亡くなってから、ますます静かになり、母のキンキン声だけが響く。

「もう、リカルドだけなんだから、私の話を聞いてくれるのは。

 旦那様が亡くなってからは、あなたしかいないのよ。」

 そう言うが、イライザを拒否したのは、母だ。

 もし、子供ができなくともイライザを認めていたならば、こんなに一人寂しい思いをしなくても済んだのに、自分のせいだとは、母は気づいていない。

「ねぇ、そろそろ、第二夫人でも娶ったら?」

「何度も言わせないでくれ。
 母上だって、父上に認めなかっただろ?」

「一緒にしないで。
 私はあなたを産んだわ。
 あの人とは違うわ。」

「そうだとしても、嫌な気持ちは一緒だろ?

 どうして、自分がされたくないことを人には求める?」

「仕方ないでしょ。
 後継は必要なんだから。」

「その話は、親族の者をもらうと言うことで、決着がついている。」

「嫌なものは嫌なの。
 あなたにそっくりな孫が欲しいのよ。」

「すまないが、それは果たせない。」

 父が亡くなってから、母はますます孫を欲しがるようになった。

 いつもなら、それを受け流すこともできたが、最近は僕にも余裕がない。

 大声で、無理なんだよ。と叫んでしまう日がいつか来そうで、自分でも怖い。

 感情的になることは、貴族として、とっくに無くして来たのに。

 僕は最近自分が嫌いだ。





「どうぞ、入って。」

 執務室で仕事をしていると、イライザの尾行を頼んだべモートが入って来る。

「リカルド様、報告があります。」

「ああ、待っていたよ。
 話してくれ。」

 僕とライナスはその話に聞き入る。

「イライザ様が、馬車から離れ向かった先は、ある邸でした。

 こじんまりとしてはいますが、誰かの別邸と言う感じで、建物は立派です。」

「なるほど。」

「そして、イライザ様がその邸に消えた後、邸に入った者は、ノーマン医師ただ一人です。

 後は使用人の出入りがあるだけです。」

「何と。
 では、ノーマン医師との密会場所なのか?」

「それがそうではなく、ノーマン医師も長くいたわけではありません。

 多分、どなたかを診察してすぐに帰られたと思います。

 そして、イライザ様以外、あの邸に出入りはありません。

 なので、イライザ様は誰かの看病をしているのではないでしょうか?」

「なるほど。
 イライザは、父の看病もしてくれていたしね。」

 母は父が倒れてからは、お茶会だとか、友人と出かけるなどと言って、父に寄り付かなかったから、その隙にイライザは父を心配して、父のいる棟を訪れていた。

「はい、私がキャサリン様がいない時、イライザ様をご案内しておりました。

 旦那様は、いつもイライザ様が来てくれるのを、楽しみに待っておられましたから。」

 ライナスは、思い出して微笑む。

 「だとしてただの看病なら、わざわざ僕に隠す相手とは誰だろう?」

「わかりません。
 そうなると、やはり男かもしれませんね。
 残念ですが。」

 ライナスは諦め顔で首を振る。

「とにかく、イライザ様がもうあの邸に通わせないようにするのは、大変なことでしょうね。

 いっそのこと、目をつぶったらいかがですか?

 下手に追い詰めると、イライザ様がリカルド様に離縁を申し出るかもしれませんよ。」

「そんなことが?」

「その相手と無理矢理引き離すのですから、覚悟がいります。

 反対に子供ができなかったから身を引くと言われたら、こちらとしても離縁を認めざるを得ないでしょう。

 不貞の証拠を掴んでいれば、話は変わりますが。

 だからと言って、イライザ夫人の不貞がキャサリン夫人に知られたら、大騒ぎでしょうし。

 よく考えてみられたらいかがですか?」

「ああ、そうするよ。」

 ライナスとべモートが、部屋を出た後、しばらく一人で強い酒を飲んだ。

 この前までは、十年経っても新婚生活などと浮かれていたのに、あっと言う間にどん底だ。

 人生わからないものだ。

 僕はいつ間違ったのだろう。

 イライザが、僕以外の男を求めるなど、今でも信じたくないし、受け入れられない。

 しかも僕はこうなるまで、全く気がつかないほどの鈍感な男で、それでも、イライザを失いたくないから、動けない。

 でも、それならどうしてイライザは変わらず僕を受け入れる?

 好きな男がいるとしたら、普通は嫌なものでないのか?

 秘密にするためなら、僕に抱かれても我慢するのか?

 僕は沼にハマって動けないように、酒に溺れ、そのまま執務室で寝てしまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハッキング・オブ・ジェネレーション: スマートフォンの逆襲

O.K
SF
「ハッキング・オブ・ジェネレーション: スマートフォンの逆襲」は、主人公の男子高校生・太郎が自分のスマートフォンがハッキングされるという衝撃的な出来事に遭遇する物語です。太郎は自らの情熱と好奇心を駆使して、ハッキングした人物の追跡とスマートフォンの制御を取り戻すための冒険に身を投じます。彼はハッキング集団「シャドウ」と接触し、彼らの協力を得てハッキング事件の真相を解明します。物語は個人のプライバシーとセキュリティの重要性を探求し、太郎と「シャドウ」がハッキング技術を善に使い、世界をより安全な場所にするために戦い続ける姿を描いています。

境界線スペクトル 〜Ema in the 26th century〜

杙式
SF
西暦2511年、終末と呼ばれた日から約150年後の機械が支配する世界で、身体の一部を機械化した少女エマはあるものを探し求め旅をする。 なるべく物理法則に即した話にしようと思っていますが、認識誤りもあるかもしれません。 カクヨム様、なろう様でも掲載中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ
SF
百万年の時を越え 地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時 人類の文明は衰退し 地上は、魔法と古代文明が入り混じる ファンタジー世界へと変容していた。 新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い 再び人類の守り手として歩き出す。 そして世界の真実が解き明かされる時 人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める... ※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが  もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います  週1話のペースを目標に更新して参ります  よろしくお願いします ▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼ イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です! 表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました 後にまた完成版をアップ致します!

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

サイコさんの噂

長谷川
ホラー
 最近ネットで大流行している都市伝説『サイコさん』。田舎町の高校に通う宙夜(ひろや)の周囲でもその噂は拡散しつつあった。LIME、Tmitter、5ちゃんねる……あらゆる場所に出没し、質問者のいかなる問いにも答えてくれる『サイコさん』。ところが『サイコさん』の儀式を実践した人々の周囲では、次第に奇怪な出来事が起こるようになっていた。そしてその恐怖はじわじわと宙夜の日常を侵食し始める……。  アルファポリス様主催第9回ホラー小説大賞受賞作。  ※4話以降はレンタル配信です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...