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第52話 幕間~ニコを見守る人々 その1
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~女神~
私が戻ってからすぐにニコはドリルを始めたようですね。
魔法の強化を優先して理科と英語を進めるようですね?
本当は全教科を均等に進めてほしいところですが制約も無いので大目に見ましょう。
……本当に黙々とドリルに向かっていますね。
「神の愛し子」であるからどうしても過保護になる。
これでも自重しているつもりだ。
神は自重しなければ「我が子」へ様々な恩恵を与えてしまう。
与え過ぎれば世界を破綻させるだけの力を持たせる事がある。私も数千年で何度かあった。
今も加護を与え過ぎた愛し子を苦しめている。
ニコは聡いから気が付くだろう。そう思うと少しだけ気が滅入る。女神を悩ますとはニコが憎たらしい……良い意味で。
でも、怒らせたり拗ねさせたら呼んでくれなくなるのは嫌だな。
料理は美味しいからもっと食べたいし、話もしたいな。
ニコにもたくさん恩恵を与えているがステータスを見れるので状況把握が出来るのが幸いしていると思う。ステータス表示なんてゲームぽくて嫌だと思っていたけど用意して良かったかもしれない。ニコならば見なくても大丈夫だったかもしれないですが。
嘘は付けないが言い訳はたくさん考えておこう。
あ、ニコ、その解答違ってますよ!
~看板娘ケイト~
ニコは公爵家の依頼で何やらずっと家に籠もっていて会えないらしい。
……気になる。
窓から少しだけ覗くとニコは一階のリビングにいるようだ。
お父さんやアーカムさんから絶対に会うな、と言われているので自重してニコの家の前までたまに散歩している。
でも、本当にたまにしか動かないみたい。
「ケイト、今日も飽きないな!」
お向かいのパン屋さんだ。
「クマパンさん、こんにちは! 飽きないですよ?」
「たった数日だろ? 大丈夫だよ」
「うん……そうなんだけどね。事故から戻ってきてから心配で」
「仲良いからな。でも、邪魔だけはしてやるなよ!」
「わかってるって!」
お店もあるから戻ろう。
でも、事故から戻ってから何か違うんだよね……何が違うか分からないけれど。
記憶を失くしたからかな? 少しでも前の事を思い出してくれていればいいな。
あ、急いで帰らないと怒られる!
「ケイトは今日もニコの所に行ってきたのかい?」
あ、勇者様! 今日も麗しいな!
「……皆さん、よく知ってますよね。大事な幼馴染の様子を見に行くだけですから」
「そこまで心配されるニコは羨ましいな。僕もお店に行く所だから一緒に戻ろう」
「羨ましくもないですよ! ニコはすぐ無理するから!! あ、でもリオンさんと一緒に戻ればおとう、マスターもお小言を言わないから助かります!」
相変わらず勇者様は優しいな!
そういえばニコの部屋がたまに光っていたけれど魔道具かな?
依頼が終わったら聞いてみよう!
~パン屋ジョエル~
「おい、マスターにケイトに仕事を増やすようにと伝えに行ってくれ」
「……了解」
騎士団の元部下で現店員に接客の切れ目に指示をした。
賑わっている店内をスルりと抜け出して行った。
俺は厨房に戻る。
俺より劣るが体格の良い男たちが一心不乱にパンを捏ねては焼いていく。
こいつらを目当てに来る客も多い。あの程度の筋肉じゃまだまだだけどな!
「ケイト、最近の来る頻度が上がってますね」
一人が声をかけてくる。
「注意は怠るな。……そのパンは何だ?」
「名物のクマパンにハチミツ漬けの芋を入れてみました」
「……甘さが絶妙だな。採用」
「ありがとうございます!」
「店長、裏路地から報告。ここ数日、ニ組が頻繁に現れているそうです」
また、別の店員が声をかけてくる。
「特定は出来ているのか? ……そのパンは何だ?」
「過去最高硬度の『岩パン』です。……相手もプロらしく撒かれています」
「男のロマンだな。だが子供が食えねえものは駄目だ。不採用。責任持ってお前が喰え。……フォローを『本店』に依頼しておく。お前たちは引き続き見守りに徹しろ」
「了解!」
どこの差し金かはおおよそ分かっている。
……忍び込まないのであればまだ大丈夫か。
それにしても、ニコは何か食べているのだろうか。
もう四日も出てきていない。食料の備蓄はあるのだろうが不測の事態に向けて監視体制を強化するか。
関係ないが「岩パン」をスープに入れると程よく溶けて、いい具材になって美味しいと評判になるのはまた別の話しだ。
私が戻ってからすぐにニコはドリルを始めたようですね。
魔法の強化を優先して理科と英語を進めるようですね?
本当は全教科を均等に進めてほしいところですが制約も無いので大目に見ましょう。
……本当に黙々とドリルに向かっていますね。
「神の愛し子」であるからどうしても過保護になる。
これでも自重しているつもりだ。
神は自重しなければ「我が子」へ様々な恩恵を与えてしまう。
与え過ぎれば世界を破綻させるだけの力を持たせる事がある。私も数千年で何度かあった。
今も加護を与え過ぎた愛し子を苦しめている。
ニコは聡いから気が付くだろう。そう思うと少しだけ気が滅入る。女神を悩ますとはニコが憎たらしい……良い意味で。
でも、怒らせたり拗ねさせたら呼んでくれなくなるのは嫌だな。
料理は美味しいからもっと食べたいし、話もしたいな。
ニコにもたくさん恩恵を与えているがステータスを見れるので状況把握が出来るのが幸いしていると思う。ステータス表示なんてゲームぽくて嫌だと思っていたけど用意して良かったかもしれない。ニコならば見なくても大丈夫だったかもしれないですが。
嘘は付けないが言い訳はたくさん考えておこう。
あ、ニコ、その解答違ってますよ!
~看板娘ケイト~
ニコは公爵家の依頼で何やらずっと家に籠もっていて会えないらしい。
……気になる。
窓から少しだけ覗くとニコは一階のリビングにいるようだ。
お父さんやアーカムさんから絶対に会うな、と言われているので自重してニコの家の前までたまに散歩している。
でも、本当にたまにしか動かないみたい。
「ケイト、今日も飽きないな!」
お向かいのパン屋さんだ。
「クマパンさん、こんにちは! 飽きないですよ?」
「たった数日だろ? 大丈夫だよ」
「うん……そうなんだけどね。事故から戻ってきてから心配で」
「仲良いからな。でも、邪魔だけはしてやるなよ!」
「わかってるって!」
お店もあるから戻ろう。
でも、事故から戻ってから何か違うんだよね……何が違うか分からないけれど。
記憶を失くしたからかな? 少しでも前の事を思い出してくれていればいいな。
あ、急いで帰らないと怒られる!
「ケイトは今日もニコの所に行ってきたのかい?」
あ、勇者様! 今日も麗しいな!
「……皆さん、よく知ってますよね。大事な幼馴染の様子を見に行くだけですから」
「そこまで心配されるニコは羨ましいな。僕もお店に行く所だから一緒に戻ろう」
「羨ましくもないですよ! ニコはすぐ無理するから!! あ、でもリオンさんと一緒に戻ればおとう、マスターもお小言を言わないから助かります!」
相変わらず勇者様は優しいな!
そういえばニコの部屋がたまに光っていたけれど魔道具かな?
依頼が終わったら聞いてみよう!
~パン屋ジョエル~
「おい、マスターにケイトに仕事を増やすようにと伝えに行ってくれ」
「……了解」
騎士団の元部下で現店員に接客の切れ目に指示をした。
賑わっている店内をスルりと抜け出して行った。
俺は厨房に戻る。
俺より劣るが体格の良い男たちが一心不乱にパンを捏ねては焼いていく。
こいつらを目当てに来る客も多い。あの程度の筋肉じゃまだまだだけどな!
「ケイト、最近の来る頻度が上がってますね」
一人が声をかけてくる。
「注意は怠るな。……そのパンは何だ?」
「名物のクマパンにハチミツ漬けの芋を入れてみました」
「……甘さが絶妙だな。採用」
「ありがとうございます!」
「店長、裏路地から報告。ここ数日、ニ組が頻繁に現れているそうです」
また、別の店員が声をかけてくる。
「特定は出来ているのか? ……そのパンは何だ?」
「過去最高硬度の『岩パン』です。……相手もプロらしく撒かれています」
「男のロマンだな。だが子供が食えねえものは駄目だ。不採用。責任持ってお前が喰え。……フォローを『本店』に依頼しておく。お前たちは引き続き見守りに徹しろ」
「了解!」
どこの差し金かはおおよそ分かっている。
……忍び込まないのであればまだ大丈夫か。
それにしても、ニコは何か食べているのだろうか。
もう四日も出てきていない。食料の備蓄はあるのだろうが不測の事態に向けて監視体制を強化するか。
関係ないが「岩パン」をスープに入れると程よく溶けて、いい具材になって美味しいと評判になるのはまた別の話しだ。
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