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第47話 薬草を納品しよう
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採取した薬草を届けにデムスさんの元に向かう。
この時間だと「まるいひつじ亭」だよね。
あ、やっぱりケイトがお店の入り口からこっちを見ている……勘がいいのかなぁ。
「ただいま、ケイト」
「おかえり、ニコ! デムスさんなら来ているよ!」
詳しい事情は知らなくても依頼の事を知っているから話は早い。
デムスさんはいつもの奥の席にいた。
驚いた顔でこちらを見ている。
「ニコ、早過ぎないか!? ニ、三日はかかる見込みだったのに!」
「僕もそう思ったのですが同行者が良かったので早く戻れました! 手配してくれたのはデムスさんですよね? ありがとうございました!」
「……依頼したのはこちらだからね。さて、私の店で受け取っても良いかな?」
いつもこのお店でしか会っていなかったな。忘れがちだけどこの王国で有数の薬師だったね。、
貴族街により近い場所にある少し大きな建物がデムスさんの薬屋だった。
入り口が離れて二つある。出入りしている人を見る限りでは貴族用と庶民用に見える。別け隔て無く、はまだ難しいようだね。
庶民用と思われる入り口から入る。シンプルだけど清潔さを感じる店内に普通に街の人たちがいた。
商品として薬では無く、薬草などの素材が並んでいた。
前世の調剤薬局みたいなものらしい。
長めのカウンターでは数人が相談をしていた。
そのカウンター横を通り、階段を上がると個室に入った。商談用かな。
「では、ニコ、見せてもらおうか」
「はい。どうぞ」
魔瘴華を取り出す。鑑定の通り、根は小さな麻袋で覆っている。
「完璧な状態だね。大切に使わせてもらうよ」
「無事に届けられてよかったです!」
「それにしてもよくこんな希少な薬草をすぐに採ってこれたものだね」
隠す事は無いかな?
「偶然ですが魔族の知人から分けてもらいました」
「? それは栽培をしている人がいるのかい?」
「はい。まだまだこれからのようなので特別に分けて頂きました」
「そうか……魔族の知人か。その内で良いから紹介してくれ」
情勢や身分を考えると会わせてよいなのか分からない。
「本人に確認してからで良いですよね?」
「あぁ、当然だよ」
それと。
「あと、これも使うと良いとこれも頂きました」
小瓶を取り出し、テーブルに置く。
「……炎帝蘭じゃないか?」
「はい。素性を隠して症状を説明したら持って行けと」
「これだけでも治せそうだが……希少なものをよく頂けたな。代金は大丈夫だったのか?」
「僕がまた訪問する約束だけで、お金は要らないと言われました」
「そうか。これは本当に貴重なのだよ。魔族領でした入手できないという意味では魔瘴華も貴重だが、炎帝蘭はその魔族領でも特定の場所でしか育たないと聞いている」
「それを僕は頂いてしまったのですね……」
本当に大丈夫なのかなぁ。次に行く時はたくさんお土産を持っていこう。
「……大事に使わせて頂こう」
「よろしくお願いします。ミリア様の症状悪化を止められるように」
デムスさんの表情が少し曇る。
「ニコはこれだけの素材があっても治らないと思っているのかい?」
そうか……希少な素材だから治せると思うよね。
「はい。今まで以上に効果はあると思いますが抑えられるだけと思っています」
僕がレベルアップする必要があると思っている。
「そうか……ニコは短期間で治せるようになれるのかい?」
どうやって、とは聞いてこないのですね。
「『なれる』……ではなく『なります』よ!」
そうとしか言えない。
じっと、見られている。
「そうか。さすがニコだな!」
恰幅の良い身体を揺らしている。とても愉快そうだ。僕、変な事、言ってないよね?
「……君なら絶対に治せそうだ」
笑いを止めてた真面目な顔だ。
「はい! デムスさんも薬の準備をお願いしますね!」
依頼書にサインを頂いて帰る準備をする。「まるいひつじ亭」へは全てが終わってからでも良いかな? そんな事を考えていたら。
「今日は行かないのかい? それならマスターには伝えておくよ」
さすが常連さん。助かります!
やはり気になるから聞いておこう。
「そういえば入り口が二つあるのは貴族用と庶民用ですか?」
「あぁ、そうだよ。最初は一つだったのだがね」
「身分の違いですか」
「そう、お互い気まずいからと双方からお願いされたんだよ」
「身分の差……難しいですね」
「そう。でもな、実は内装は同じなんだよ。貴族も庶民も。そもそも貴族は本人が直接来る事は少ないし、来ても二階の個室で応対するからな」
たしかに奥の方にも階段があった。共通なんだね。
「なるほど。差別なく平等なのはいいですね!」
「『まるいひつじ亭』みたいにはいかないが、少しくらいは……な」
身分制度が当然の世界で平等を掲げる発想はすごいと思う。
この国だけなのか世界ごとなのか、何か変わる節目かもしれない。
何となく居ても立っても居られなくなってきた。
急いで帰ってドリルに挑もう!
この時間だと「まるいひつじ亭」だよね。
あ、やっぱりケイトがお店の入り口からこっちを見ている……勘がいいのかなぁ。
「ただいま、ケイト」
「おかえり、ニコ! デムスさんなら来ているよ!」
詳しい事情は知らなくても依頼の事を知っているから話は早い。
デムスさんはいつもの奥の席にいた。
驚いた顔でこちらを見ている。
「ニコ、早過ぎないか!? ニ、三日はかかる見込みだったのに!」
「僕もそう思ったのですが同行者が良かったので早く戻れました! 手配してくれたのはデムスさんですよね? ありがとうございました!」
「……依頼したのはこちらだからね。さて、私の店で受け取っても良いかな?」
いつもこのお店でしか会っていなかったな。忘れがちだけどこの王国で有数の薬師だったね。、
貴族街により近い場所にある少し大きな建物がデムスさんの薬屋だった。
入り口が離れて二つある。出入りしている人を見る限りでは貴族用と庶民用に見える。別け隔て無く、はまだ難しいようだね。
庶民用と思われる入り口から入る。シンプルだけど清潔さを感じる店内に普通に街の人たちがいた。
商品として薬では無く、薬草などの素材が並んでいた。
前世の調剤薬局みたいなものらしい。
長めのカウンターでは数人が相談をしていた。
そのカウンター横を通り、階段を上がると個室に入った。商談用かな。
「では、ニコ、見せてもらおうか」
「はい。どうぞ」
魔瘴華を取り出す。鑑定の通り、根は小さな麻袋で覆っている。
「完璧な状態だね。大切に使わせてもらうよ」
「無事に届けられてよかったです!」
「それにしてもよくこんな希少な薬草をすぐに採ってこれたものだね」
隠す事は無いかな?
「偶然ですが魔族の知人から分けてもらいました」
「? それは栽培をしている人がいるのかい?」
「はい。まだまだこれからのようなので特別に分けて頂きました」
「そうか……魔族の知人か。その内で良いから紹介してくれ」
情勢や身分を考えると会わせてよいなのか分からない。
「本人に確認してからで良いですよね?」
「あぁ、当然だよ」
それと。
「あと、これも使うと良いとこれも頂きました」
小瓶を取り出し、テーブルに置く。
「……炎帝蘭じゃないか?」
「はい。素性を隠して症状を説明したら持って行けと」
「これだけでも治せそうだが……希少なものをよく頂けたな。代金は大丈夫だったのか?」
「僕がまた訪問する約束だけで、お金は要らないと言われました」
「そうか。これは本当に貴重なのだよ。魔族領でした入手できないという意味では魔瘴華も貴重だが、炎帝蘭はその魔族領でも特定の場所でしか育たないと聞いている」
「それを僕は頂いてしまったのですね……」
本当に大丈夫なのかなぁ。次に行く時はたくさんお土産を持っていこう。
「……大事に使わせて頂こう」
「よろしくお願いします。ミリア様の症状悪化を止められるように」
デムスさんの表情が少し曇る。
「ニコはこれだけの素材があっても治らないと思っているのかい?」
そうか……希少な素材だから治せると思うよね。
「はい。今まで以上に効果はあると思いますが抑えられるだけと思っています」
僕がレベルアップする必要があると思っている。
「そうか……ニコは短期間で治せるようになれるのかい?」
どうやって、とは聞いてこないのですね。
「『なれる』……ではなく『なります』よ!」
そうとしか言えない。
じっと、見られている。
「そうか。さすがニコだな!」
恰幅の良い身体を揺らしている。とても愉快そうだ。僕、変な事、言ってないよね?
「……君なら絶対に治せそうだ」
笑いを止めてた真面目な顔だ。
「はい! デムスさんも薬の準備をお願いしますね!」
依頼書にサインを頂いて帰る準備をする。「まるいひつじ亭」へは全てが終わってからでも良いかな? そんな事を考えていたら。
「今日は行かないのかい? それならマスターには伝えておくよ」
さすが常連さん。助かります!
やはり気になるから聞いておこう。
「そういえば入り口が二つあるのは貴族用と庶民用ですか?」
「あぁ、そうだよ。最初は一つだったのだがね」
「身分の違いですか」
「そう、お互い気まずいからと双方からお願いされたんだよ」
「身分の差……難しいですね」
「そう。でもな、実は内装は同じなんだよ。貴族も庶民も。そもそも貴族は本人が直接来る事は少ないし、来ても二階の個室で応対するからな」
たしかに奥の方にも階段があった。共通なんだね。
「なるほど。差別なく平等なのはいいですね!」
「『まるいひつじ亭』みたいにはいかないが、少しくらいは……な」
身分制度が当然の世界で平等を掲げる発想はすごいと思う。
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急いで帰ってドリルに挑もう!
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