せっかくの異世界だけど黙々と「学習ドリル」を頑張ります!

籠守

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第45話 薬草を採取しよう

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 更に北へ飛ぶと木々も枯れているような中で緑が見えた。

 とても小さなエリアだ。

 そこに目的の薬草があるようだ。

 ウリューズが上空で止まる。ホバリングの状態で観察してみる。

 百メートル四方も無い緑の空間を柵で囲っており……小屋が見える。
 誰か住んでいるのかな?


 近くで下りてもらい、隊長さんと向かう。

 隊長さんは腰に剣を携えたが僕は採取用のバックパックだけを背負った。


 柵の一箇所が扉になっていたので入る。
 
 スキル『鑑定』

>魔瘴華:ましょうか。瘴気を吸収する植物。吸収した瘴気の量により、黒い花が咲く。とても弱く育てにくい。土ごと採り、自然に枯らすと効果が上がる。

 これだ!

 すぐに採って帰りたい。けれど、家の人に断ってからにしようと思う。

「隊長さん「フレ姉だ!」フレ姉、家の人に断ってから採取しようと思うのだけどいいかな?」

「ここでは知っている者はいないからな。そうだな。管理されているようだから勝手な採取はだめだろう」

 丸太を組んだロッジ風の小屋はまだ新しいように見える。

 ドアをノックする。

 しばらくするとドアが開いた。

「何用だ……ん? ニコじゃないか! 久しぶりではないか!!」

 『ニコ』の顔見知りのようだ。

 フレ姉と同じくらい背の高い女性が出てきた。

 前世のチャイナドレスやアオザイに似ている服装をしており、黒く短めの髪はおかっぱにしており、額の少し上ぐらいに角が生えていた。魔族だ。
 
 スキル『鑑定』

>シェリア・ディファンティ:魔族。第三王女。瘴気の除去を研究している。ニコは研究の助手をした事がある。

「シェリア様、お久しぶりです」

 嬉しそうだ。

「前にも言ったがシェリアでいい。敬語も無しだぞ。後ろの女は何だ?」

 フレ姉を睨んでいる。

「後ろの女性はフレイア・フェルディアス様「ニコの姉だ」……です」

 すかさず挟んできた。あ、素性は隠せって事ですよね!

「ニコに姉がいたのか。ワイバーンに乗ってくる時点で素性が察せるがな」

 取り敢えずフレ姉にも紹介しておこう。

「こちらはシェリア・ディ「研究者だ」……様です」

 こちらも素性を隠したいって事ですよね!

「家名が気になるな」

 お互い睨み合わないで!

 今更だけど僕の周りは眼力強い人が多い気がする……。


 取り敢えず、家の中に入れてもらった。

 中はマスクを取っても大丈夫と言われて外した。

 とても狭いが何やら実験器具や紙束が所狭しと置かれていた。散らかっているのではなく、乱雑な感じだ。片付けたくなる。

 テーブルに着いてお茶を出してもらった。

「で、今回はどうしてこっちに来たんだい?」

 その前に。

「シェリア、僕は数ヶ月前に事故にあって記憶が一部無くしたままで思い出せない事が多いんだ」

「大丈夫なのか? 私が診てやろうか?」

 とても心配してくれる。嬉しいな。フレ姉、今は対抗心出さないで!

「それなのでシェリアの名前くらいしか出てこないんだ……ごめんね?」

「そうなのか……せっかくここで一緒に暮らそうと誓い合った仲なのに……」

 とても残念そうな顔をしている。

「嘘ですよね!?」

 鑑定を見る限り嘘なのは分かる。

「……否定するの早過ぎだぞ」

 表情を戻すのも早過ぎです。
 こちらは隣の殺気が怖いんですよ!?

「でも、落ち着いたら研究のお手伝いに来ますからね」

「それならばよろしい! で、今日は何用だ?」

「魔瘴華を分けてもらいたいのだけれどいいかな?」

「ニコの頼みだったら良いぞ。他の者は駄目だがな!」

「ありがとう! シェリア!」

 ガバッ! ってシェリア、抱きつかないで! 「やはり帰さない」とかつぶやかないで!!

「……それでは頂いて直ぐに帰るぞ。ニコ」

 冷静にフレ姉がシェリアを僕から剥がす。

「何に使うのだ? 薬か?」

「うん。薬師様の依頼……と僕の願いでもあるのだけれど、現状では呪いが解けない人がいて」


 人物以外を隠して説明をする。
 おそらくフレ姉も詳細までは聞いていないかもしれない。


「ふむ。完治は厳しくても抑制させる薬か」

「うん。短い期間でもいいから止めたいんだ」

 本当は完治させて上げたいのだけどね。

「……最近、採取した薬草から察すると一時的でも止める事はできそうだ……呪いの種類は「氷」だったか?」

「うん。「氷」だよ。建物も凍らせる程の冷気を出していた」

「それならば……」

 シェリアが薬品棚の溢れた素材や薬の中から何かを探している。

「……あった。これを持っていきなさい」

 小瓶を渡された。中に小さな炎が燃えている?

 スキル『鑑定』

炎帝蘭:えんていらん。炎のような花が五十年に一度だけ咲く。花自体は熱くないが体内に摂取する事で身体を温める効果がとても強く、病気も治す。

 いかにも聞きそうな薬草だ。

「シェリア、お代はいくら?」

 支払うべきだろう。

「こんな環境だからお金は要らないよ。また来てくれればいい」

「わかった。ありがとうシェリア!」

 握手しようと手を伸ばす……ガバッ! ってまた抱きつかないで! 「やっぱり帰さない」とかつぶやかないで!!

「……このまま頑張れば治せるよ」

「!?」

 フレ姉に引き剥がされる。今のつぶやきは何? 治せるってお墨付きを頂いた?

 僕と同じような『鑑定』を持っているのかもしれない。

 何か知られたのかな……大丈夫だけどね。


 マスクを着けて「魔瘴華」を数株採らせてもらい、丁寧に麻袋に入れる。

 これにて依頼完了!


 まだお昼を少し過ぎた頃だから、お礼も込めてご飯を三人で食べよう。

 幸いな事にキッチンが離れていたのでレトルト食品を使おうかな!?

 二人にはお礼に作るのだから、手伝いはしないで待っててね! っと伝えたら睨み合うように見つめ合っていた……仲良くしてほしいな。


 パンと一緒にクラムチャウダーを出したら二人共「なんて美味しいものを……」と感動された。二人共、海から離れた国に住んでいるから貝は馴染みが薄かったみたい。

 次にこの世界にもあったのでパスタを茹でつつ、レトルトのパスタソースを温める。乾麺は便利だね。

 何種類かソースは持ってきていたけれどカルボナーラとボロネーゼの二種類にした。

 二人共、シェアして食べようと大盛りにしたのに残さず食べてしまった……


 しょうがないからと追加でたらこソースとレモンクリームを出した。
 変わり種なら残すかと思ったのに「これはこれで有り!」と言って完食していた。

 二人共笑顔で食べてくれたから……いいか。

 帰ってから食べようかな……え? おかわり?


 まだパスタソースはあるので用意しますね!
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