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第42話 遠征前に食堂に行こう

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 結局、お昼も「まるいひつじ亭」で食べたのでお腹一杯ですごく眠い!

 でも、少しでもドリルを進めたいから頑張ろう!

 夕方過ぎには食堂に行こうと思っているので数時間で終わらせられる科目がいいな。

 社会や理科は暗記する事が前提だから中学生の問題でも教科書や参考書が無いと厳しくなるだろう。
 女神様から忠告された「見逃し」の一つかもしれない……これは要相談かな。

 そうなると英語が良いかな?


 『学習ドリル。中学一年英語』

 最初は書き取りから始まっていたけれやはり小学校より難しくなっている。

 be動詞? amとかwasとかareか。beenとか懐かしい。
 助動詞? canか。
 命令文や疑問文は応用だから簡単。
 冠詞? 名詞? 代名詞? 単語だけで読むと難しそうだけど実際の問題は普通に英文が読めるレベルであれば難しくない。

 うん。まだ引っかからない!

 ドリルに花丸を貰えた事を確認して外を見ると暗くなってきていた。

 そろそろ食堂に行こう。


 「まるいひつじ亭」の前まで来るとケイトが出てきた。どうして来た事が分かるのだろう?

「ニコ! ずっと警備隊の隊長さんがニコの事を待っているってお昼からずっといるんだけど! 何かした!?」

 他の店員さんからケイトに今晩来る事が伝わってなかったんだね。
 それにしても城壁警備の隊長は暇ではないと思うんだけどなぁ。

「何も無いよ……お仕事で良くしてくれて頂いているけれど」
「そうなんだ……最初はニコ目当ての危険人物かと思ったけど、今は常連さんになってきたからいいけれどね!」

 危険人物……ある意味そうかもしれない。


 お店の中に入ると奥の席で入り口を睨むように大皿料理を黙々と食べ進めている隊長さんがいた。本当に食べる所作は綺麗だ。

 僕と目があった……泣きながら揚げ物食べてる……。

 対面に座る。

「隊長。お久しぶりです!」

 ここではフレ姉とは言わないよ?

 僕を見つつ泣きながら食べる手は止めないのですね!

 あ……完食した。

 口元を拭いて、

「ニコ、ずっと待っていたぞ! 住んでいる所は知らないし、誰も教えてくれないのだ!」

 皆さん、僕の個人情報を守ってくれたようでとても嬉しい。

「でも、会えて僕も嬉しいです! これで一緒にご飯を食べる約束を果たせますね!」

 そこまで溶けそうな笑顔にならなくても!

 警備隊で見かけた隊員達が少し離れた席に座っていたけれど「鬼が……笑った!?」って言うの聞こえてますからね!?

「ニコ、では一緒に食べよう。そこの給仕!ニコと渡しに料理を頼む!」

 ここでのご飯は本日三食目。運動しないとな……。

「ニコ、依頼が多くて今は新規を請けられないと聞いたが身体は大丈夫か?」
「はい。お陰様で元気にお仕事させてもらっています」

 言えない事も多いなけれど。

「警備隊の方はどうですか? 出撃が増えていると聞きましたが」
「そうだな。北と西の方はまだいいがそれ以外は魔獣が増えているな。ニコも気を付けるのだぞ」

「はい。お気遣いありがとうございます!」
「他人行儀は嬉しくないな……」
「ここではしょうがないですよ?フレ姉」
「……不意に呼ぶな……嬉しすぎるだろう……」

 うん。照れる照れてる。厳しい顔ばかりでは疲れますからね!

「程々ならいいですよね?」
「そうだな……ニコはあざといな」

 あざとくしてますからね!

 そうして料理が届いた。タンシチューとパンだ!

 厨房の方を見るとおじいさんがいた。僕に確認

「ここ最近来るたびに食べさせられている料理だ。毎回少しずつ変わっているみたいだぞ」

「改良し続けているんですね」

 どれどれ。

 ……美味しい。これ、高級レストランの味だ。行った事はないけれど。

 おじいさんにすかさず「グー」とサムズアップ。おじいさんからもサムズアップが返されて満足そうに厨房に戻って行った。

 一度食べただけの料理を再現するとはさすが「放浪の料理人」!
 この調子でこの世界に無い他の料理もお願いしてみようかな!


「それで、ニコ。明日からなのだが」
「明日から僕は壁外に数日出かけるのですが」

 依頼は請けられない事は知っていると思うのだけれど。

「それは知っている。その移動に私が同伴する事になった」
「え!? この街を離れて大丈夫ですか?」

 今、大変なんですよね?

「私も上からの正式な命令を受けいるので大丈夫だ」

 上って……公爵様? だよね!?

「ご一緒して頂けるのはとても安心ですね!」

 不安もあるが……乗るしか無い。

「おねえ……私に任せておけ!」

 ものすごく胸を張られた!

「それでも、人選としては高位な方過ぎる気がするのですが?」

 隊長はこの街、この国の要職だろうし、侯爵令嬢でもある。
 いくら公爵家に係わる依頼でもオーバーな気がする。

「明日からの移動手段は私を含めて数名しか扱えぬからな」

 馬車の事かな? それほど特殊なのだろうか。

「それで隊長に命令が下されたのですね。ありがとうございます」

 忙しい人だからとても有り難い。

「うむ、それと全く休んでいなかったから休暇も兼ねているのだよ」
「全然休めないですが大丈夫ですか?」

 働き過ぎはよくないですよ?

「ニコとずっっっっっと一緒にいられるのは私にとってご褒美だし癒やしになるから大丈夫だ!」

 うん。しっかりと休んでほしい。

「では、明日からお願いしますね!」
「あぁ、日の出と共にだから寝坊するなよ? あ、ニコの家か私の屋敷から一緒に「ニコじゃねーか!」……ん?」

 大工のロビンさんだ! 隊長が不穏な事を言おうとしていた事をナイスセーブ!

「ロビンさん、ご無沙汰しています!」
「おう、久しぶり! 落ち着いたらまた手伝ってくれよな」

 相変わらず気っ風のいい感じのお姉さんだ。

「はい! よろこんで!」
「じゃ、ニコ、飲むぞ!!」
「子供は飲めません!!」
「もう一六だろ? 大丈夫じゃねぇか」

 そうなんだ。そいうばこの世界では成人だった。早いね。

「いえいえ。それでも明日も朝からお仕事なので駄目です!」
「つれねぇなあ!」

 プイッとされた。可愛らしい仕草だと言ったら殴られるだろうな。

「すいません。でも一段落したらお仕事でもご飯でも一緒にしましょう!」
「……忘れるなよ。その約束」
「忘れませんよ!」
「そうか……」

 顔は逸らされているけれど見える口元は上がっている。嬉しそうで良かった。

「ロビン……何故邪魔した? せっかくニコと話していたのに」
「フレイア、皆ぃんなのニコだぞ。誰のものでも無いからいいんだ!」

 皆んなのものなんですねー。僕。

 でも、旧知の仲だったんだ。

「隊長さんとロビンさんはお友達でしたか」
「子供の頃、ロビンが私の屋敷に修繕の手伝いで来てからの仲だな」
「フレイアはあの性格だし、お嬢様だから友達いなかったからな!」
「うるさいぞ。それからだから長い腐れ縁みたいなものだ」

 そうなんだ。

「では、せっかくなのでお二人で積もる話でも……あれ?」

 逃げようとしたのに二人に両肩を押さえられて座らされた!

「本当はニコと二人でもう少し話したかったがな。ん?」

 隊長さん、何故か悔しそう!?
 それと「ん?」はやめて!

「あぁ、私も二人で話したかったがな!」

 ロビンさんも!?
 口の端を片方上げて凄まないで!

 もう、逃げられない……な。

「では、三人で一緒に食べましょう! フレ姉、まだ食べられますよね?」
「この場でその呼び名は駄目だ! そしてまだ食べる!」
「フレ姉? なにそれ? なにそれ!?」
「あ、言ってもいいですか?」
「ニコは黙って座っていろ!」

 背が高く精悍な顔立ちの女性二人が言い争っているのを僕は黙って見ていた。
 仲の良さを感じる。

 言い争いの結果、ロビンさんの事は「姉貴」と呼ぶことが決まった。
 フレ姉は「私だけの特権だったのに……」って特権なんて無いですよ!?


 その後、お酒が入った二人と仕事が終わったケイトが合流して、僕の良い所を挙げていくゲームを始めた……恥ずかし過ぎる! でもどうしても逃がしてもらえない!

 僕って本当にレベルが上がっているのかな!?
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