せっかくの異世界だけど黙々と「学習ドリル」を頑張ります!

籠守

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第38話 報酬を受け取ろう

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 公爵邸を辞して「まるいひつじ亭」に行き、依頼料を受け取りに向かう。

 お店の前で依頼書を改めて確認。鞄の中にある……ドンッ!!

 ……ケイトだよね!?

「久しぶり!」

「一週間振りだね。ケイト……ギュッってなってね…苦しぃ」

 僕と同じ『索敵』のスキルとか持っているのかな。

「どうして来たのが分かった……って思ったでしょ? 勘だよ。勘!」

 ……スキルを越えた何かなのかな。

「……そうなんだ……ね、もう離してくれないと……骨がミシってね。いってるからね……」

 速攻で離れてくれた。身体能力は僕以上じゃないか!?

 ホッと一息付いたところを手を引っ張って引きずるように食堂に入り、空けた席に座らされた。
 サインの入った依頼書をケイトに渡す。

「私からお金を渡してもいいけれどおとう、マスターも話したいって言ってたから呼んでくるね!」

 マスターが会いたいって。金額が大きいのかな?

 「少し待っててください……」

 いつも眠そうな顔の店員のレイさんが飲み物を持ってきてくれた。
 果汁水だ。冷たくて美味しい。

 そうしてしばらく他のお客さん達と最近の話題を聞いて過ごした。。

 城壁警備隊のお偉いさんが「ニコはいないか!」と何回か訪れたらしい。
 隊長……フレ姉だな。
 来る度にご飯を出されるから素早く完食した上で「また来る」と言って去っていくそうだ。とても綺麗な食べ方だからその場にいた人達は感心していたらしい。上位の貴族だから作法は完璧でしょう! ……大盛料理を綺麗な作法で食べる姿は僕も見てみたいかも。

 後はマスターの身内の方が来ているらしく、食べた事の無い料理を試食をさせているらしい。
 素晴らしく美味しいらしい。僕も食べてみたいな。

 そんな話しをしているとマスターが来た。

「ニコ、奥の部屋に来てくれ」

 お店の商談用などに使われる部屋に通された。
 少し広く、家具も品がある。

「これは今回の報酬だ。確認してくれ」

 ドン!とテーブルに麻袋が置かれた。

「多過ぎませんか?」
「取り敢えず基本報酬だよ。もしかすると追加も出た場合は改めて渡すことになる」
「充分……ですよ」
「充分かは依頼人次第だからね?」
「そうですよね……」
「続けて依頼を請けてみて調子はどうかな?」
「問題は無いです! まだまだ依頼は残っていますからね!」
「無理はしないでくれ」
「はい。無理をしては皆さんに迷惑をかける事は分かっているので。特にケイトに心配をかけたくないので」
「ケイトが暴走したら言ってくれ。出来るだけ抑える」
「……分かりました」

 流石、父親ですね。

「それと、怪我をした時の状況は覚えているのかな?」

 それが聞きたかったのかな?

「いえ。全く何も思い出せないです」
「そうか。依頼内容も?」
「そうですね……本当に何も覚えていなくて、依頼書も見当たりませんでした」

 依頼内容……もしかすると……。

「そうか。君がどの依頼で怪我をして、何処の医療施設に入っていたのかこちらも把握できていなかったから心配しただけなんだどね」
「そうですか。心配かけてすいませんでした」
「大丈夫だよ。今が元気であれば」

 笑顔で言ってもらえるのは嬉しい。

「そうだ、ニコ、ここで食べていきなさい。今、持ってきてあげるから。その間に報酬の金額を確認しておくように」
「はい。分かりました!」

 言われた通り報酬金額を数えようか。

 ……しかし多い気がするな……あ、お料理ありがとうございます……いい匂いだな。

 お金から顔を少し上げ、料理を見る。

 ……あれシチューとパンだ。

 ……このシチュー。最近見たよ。しかもこの器とスプーンはも見覚え……。

 「放浪の料理人」と言っていたおじいさんが目の前にいた。

「やっと会えたな。ニコ」
「おじいさん!もしかして?」
「マスターの父だ」
「あの時はすいませんでした! 急いでいたので……」

 誤魔化そう。レトルトのタンシチューの事を有耶無耶に、って目の前のはタンシチューかな? ジッと見ていると、
 
「依頼があったのだから仕方が無い。さ、食べてみなさい。再現がしきれていないのが悔しいが」

「はい。いただきます」


 タンシチュー……ではなく、ビーフシチューだ。やはりタンは食べる習慣が無いようだ。そして味も酸味が薄いかな。あと、少し風味が足りない。でもとても美味しい。お店に出して問題ないレベルだ。さすが「放浪の料理人」!

「とても美味しいですね!」

「じゃろ!? 今、手に入る食材で可能な限り何度も挑戦してこれに辿り着いた!」

 これを皆さんに食べてもらったのですね。

「あとは……そうですね……お肉の種類を変えてみてはどうでしょうか?」
「色々試したぞ! 何かまだあるのか!?」

 ……おじいさん、近いのはちょっと!

「今のままでもとても美味しいのですが、使っているお肉を「舌」に変えてみてはどうでしょうか?」
「『舌』? 美味いのか?」
「はい。舌の皮を剥いで使います。そして……」

 うろ覚えなレシピを思い出しながら教える。

「しっかり煮込む、か。なるほどな。普通は捨てられている部位だったから勿体ない事をしていたのだな」

 とても感心して聞いてくれている。

「捨てる部分は少ないですよ。骨からもいい味が出てくるのでお勧めです」

「……骨から味。これも聞いた事がないぞ。やってみよう」

 本当にお肉だけが食べられていたんですね。

「骨って何かに使われないのですか?」

「そうだな。薬や建物の材料になっているが料理では使われないな」

 思い返しながら教えてくれる。

「あと、味なのですがもう少し、酸味がほしいですね。個人的な嗜好かもしれないですが。それと臭みを消す香草や薬草を少し入れてあげると風味が上がると思います」

「焼く時には使うが煮込みでは使われないな……すぐに試そう!」

 おじいさんは去ろうとする。
 進む歴史が違うと調理法も変わるんだな。味覚は一緒なのに不思議だ。

「そうだ、ニコ。また今度、他の料理がありそうなら教えてくれ。儂の知らない料理を知っていそうだからな!」

「分かりました。それ程レパートリーは無いですよ?」

 満足そうに出ていった。

 一人残り、ビーフシチューとパンを頂いた。

 満足して外に出てお会計をしようとしたら「試食だからいい」と言われた。
 お言葉に甘えてお礼を言って帰る事にした。



 さて、そろそろ女神様に会おうかな。
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