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第36話 魔鉱石を納品しよう
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シュバリア公爵邸の前まで来た。
さて、どこから入ればいいかな? 正面は違うのは分かる。敷地に沿って歩いていくと端の方に入り口があり、守衛さんが立っていた。
守衛さんにアーカムさんからの依頼書を見せた。
依頼書を確認後、一人の守衛さんが屋敷に向かって走って行った。
僕、何か間違った事した?
あ、アポイントの約束していない! アーカムさんからいつでも来てよいような事を言っていたがあの人自身、伯爵様だ! 失敗したな……元社会人なのに。
しばらく待つと守衛さんが小さな馬車に乗って戻ってきて、
「ニコ、乗ってくれ。今日は正面に向かってもらう!」
まさかのお客様待遇!? 大丈夫かな?
「わかりました……失礼します……」
恐る恐る乗り、また来た道を戻り、正面入り口から入る。
馬車の窓から見えたのは屋敷の玄関にアーカムさん……だけでなくデムスさん……だけでなくそのお二人の前には気品のある男性と女性がいた。多分、公爵夫妻、だろう。
本当に僕、何か間違った事した!?
降りる前に『鑑定』!
>フォルト・シュバリア:公爵家当主。宰相。厳粛ながら心優しい人物。娘が大好き過ぎる。
>カトレア・シュバリア:公爵婦人。現王妃の姉。身分に分け隔てなく優しい人物。娘が大好き過ぎる。
うん。止事無き方々。
そしてどちらも娘大好き過ぎるのか。親子仲が良いのはいいね!
そして、玄関前で馬車は停まり、降りる。
挨拶とか礼儀作法を知らない! どうしよう!!
「初めまして。ニコ。私がフォルト・シュバリアだ。そして妻のカトレアだ」
「初めまして。ニコです。アーカム様からのご依頼が完了しましたのでお伺いしました」
「そうか、中にはいってくれ」
公爵様に肩を持たれて屋敷に入る。アーカムさん達、何やら良い笑顔してますね……。
屋敷に入ると豪華なエントランスになっており、その奥に客間があった。
部屋に通され、テーブルを挟んで公爵夫妻の前に座らされる。
一度家に帰って着替えて正解だった!
アーカムさんとデムスさんも公爵に勧められて座る。
「ニコ、いつも魔鉱石をありがとう。とても助かっているよ」
やはり、この屋敷で使われているんだ。
「それは良かったです! 今回もご希望の数はご用意できましたので」
肩がけのバッグの中に入れた麻袋から1個取り出して見せる。
「やはり凄いな。短期間でそのサイズを複数採掘出来るとは」
公爵様、よく知っているな。
「ご希望数しかお持ちしなかったのですがご入用でしたら持ってこれます」
「そうか、それはありがたい。あるだけ買わせてもらうから、改めてアーカムと相談してくれ」
「わかりました!」
ありがたい!
「……それと、ニコ、まだ時間はあるかな?」
庶民の僕にまだ何かあるのかな?
「はい。大丈夫ですが?」
「実は娘に会ってもらえないか?」
「お嬢様にですか?」
……遊び相手? とか?
「うん。少しだけでよいのだが」
「はい。大丈夫です。よろこんで」
公爵夫妻が笑顔になった。
「では、お連れしましょう」
アーカムさんが立ち上がり、全員でお嬢様の元に向かった。
仰々しい……何かあるのだろうな。
四階建ての屋敷の四階の奥の方に向かう……このフロアは少し涼しく感じる。
奥に行くほど寒くなってくる。
そして最奥の部屋の前で公爵は立ち止まった。
「ニコ、おそらく娘は眠っていると思うがそれでも話しかけてくれないか?」
「はい。わかりました」
何があるのかは会えば分かるだろう。
アーカムさんが扉を開ける。
寒い。その中でストーブらしき大型の魔道具が四台置いてあり、稼働している。
窓に近い天蓋付きのベッドに女の子が眠っていた。
白い髪も肌もまさに透き通るような透明感を感じる。
「ミリアはたまに起きてはいるんだけどね」
公爵様と公爵夫人がベッドの側に来て二人でミリア様の手を握る。
アーカムさんを見る。
「病気とも呪いとも分からないんだ。デムスが手を尽くしてくれたが治らなくてね」
やはりお二人は同じミリア様の事で依頼をしてくれていたんだ。
「この前、採ってきてもらった薬草と今度依頼するつもりだった薬草があれば治る可能性があるのだがな」
そういう事ですか。今度って……急ごうかな。
でも……そうだ『鑑定』。
>ミリア・シュバリア;公爵家長女。二年前より病(実際は氷の呪い)で伏せっている。
「病、というより呪い……か」
二年前からずっととはかわいそうだ!
僕はベッドに近付く。
「ミリア様、お辛いですね。少しだけでもお役に立てる事をしてもよいですか……『回復』」
疲れを癒やす程度の力しかないけれど気持ちを込めて聖魔法を使う。
「『回復』は聖女の力……ニコは使えるのか……」
デムスさんが驚いている。
「大したものではありません。少し疲れが取れる程度なので」
今、複雑そうな顔をされても困りますよ?
デムスさんを横目で見た瞬間、自分の鞄が光っている事に気が付いた。
虹色に光る魔鉱石……鞄から出す。
ミリア様の手を取り、魔鉱石に触れさせる。
僕も魔鉱石を介するようにミリア様に『回復』をかける。
…………魔鉱石の光が増していき、虹が部屋を輝かせた。
『正解』
……声? 女神様かな?
爆発するような光がミリア様にシュッと吸い込まれた。
全員、目が丸くして固まっていた。僕も含めて。
それからしばらくするとミリア様の肌の色が真っ白から赤みが差してきた。
公爵夫妻がミリア様の手を握る。
時間と共に肌の血色が良くなっていく。
それから間もなく…………ミリア様は目を開いた。
深い青い目に僕は引き込まれる錯覚を受けた。
「……ニコ?」
「はい。ニコです!」
何故、名前を知っているかは分からない。けれど今はそんな事はどうでもいい。。
「ありがとう。ニコ」
公爵夫妻は泣いてミリア様に抱きついた。アーカムさん達も涙を浮かべている。
皆さん、嬉しそうだ。
寒さも収まったのでアーカムさんは魔道具の稼働を停止させた。
これからアーカムさんとデムスさんの依頼は無くなるかな。
……ミリア様が回復したのならば、いいか。
さて、どこから入ればいいかな? 正面は違うのは分かる。敷地に沿って歩いていくと端の方に入り口があり、守衛さんが立っていた。
守衛さんにアーカムさんからの依頼書を見せた。
依頼書を確認後、一人の守衛さんが屋敷に向かって走って行った。
僕、何か間違った事した?
あ、アポイントの約束していない! アーカムさんからいつでも来てよいような事を言っていたがあの人自身、伯爵様だ! 失敗したな……元社会人なのに。
しばらく待つと守衛さんが小さな馬車に乗って戻ってきて、
「ニコ、乗ってくれ。今日は正面に向かってもらう!」
まさかのお客様待遇!? 大丈夫かな?
「わかりました……失礼します……」
恐る恐る乗り、また来た道を戻り、正面入り口から入る。
馬車の窓から見えたのは屋敷の玄関にアーカムさん……だけでなくデムスさん……だけでなくそのお二人の前には気品のある男性と女性がいた。多分、公爵夫妻、だろう。
本当に僕、何か間違った事した!?
降りる前に『鑑定』!
>フォルト・シュバリア:公爵家当主。宰相。厳粛ながら心優しい人物。娘が大好き過ぎる。
>カトレア・シュバリア:公爵婦人。現王妃の姉。身分に分け隔てなく優しい人物。娘が大好き過ぎる。
うん。止事無き方々。
そしてどちらも娘大好き過ぎるのか。親子仲が良いのはいいね!
そして、玄関前で馬車は停まり、降りる。
挨拶とか礼儀作法を知らない! どうしよう!!
「初めまして。ニコ。私がフォルト・シュバリアだ。そして妻のカトレアだ」
「初めまして。ニコです。アーカム様からのご依頼が完了しましたのでお伺いしました」
「そうか、中にはいってくれ」
公爵様に肩を持たれて屋敷に入る。アーカムさん達、何やら良い笑顔してますね……。
屋敷に入ると豪華なエントランスになっており、その奥に客間があった。
部屋に通され、テーブルを挟んで公爵夫妻の前に座らされる。
一度家に帰って着替えて正解だった!
アーカムさんとデムスさんも公爵に勧められて座る。
「ニコ、いつも魔鉱石をありがとう。とても助かっているよ」
やはり、この屋敷で使われているんだ。
「それは良かったです! 今回もご希望の数はご用意できましたので」
肩がけのバッグの中に入れた麻袋から1個取り出して見せる。
「やはり凄いな。短期間でそのサイズを複数採掘出来るとは」
公爵様、よく知っているな。
「ご希望数しかお持ちしなかったのですがご入用でしたら持ってこれます」
「そうか、それはありがたい。あるだけ買わせてもらうから、改めてアーカムと相談してくれ」
「わかりました!」
ありがたい!
「……それと、ニコ、まだ時間はあるかな?」
庶民の僕にまだ何かあるのかな?
「はい。大丈夫ですが?」
「実は娘に会ってもらえないか?」
「お嬢様にですか?」
……遊び相手? とか?
「うん。少しだけでよいのだが」
「はい。大丈夫です。よろこんで」
公爵夫妻が笑顔になった。
「では、お連れしましょう」
アーカムさんが立ち上がり、全員でお嬢様の元に向かった。
仰々しい……何かあるのだろうな。
四階建ての屋敷の四階の奥の方に向かう……このフロアは少し涼しく感じる。
奥に行くほど寒くなってくる。
そして最奥の部屋の前で公爵は立ち止まった。
「ニコ、おそらく娘は眠っていると思うがそれでも話しかけてくれないか?」
「はい。わかりました」
何があるのかは会えば分かるだろう。
アーカムさんが扉を開ける。
寒い。その中でストーブらしき大型の魔道具が四台置いてあり、稼働している。
窓に近い天蓋付きのベッドに女の子が眠っていた。
白い髪も肌もまさに透き通るような透明感を感じる。
「ミリアはたまに起きてはいるんだけどね」
公爵様と公爵夫人がベッドの側に来て二人でミリア様の手を握る。
アーカムさんを見る。
「病気とも呪いとも分からないんだ。デムスが手を尽くしてくれたが治らなくてね」
やはりお二人は同じミリア様の事で依頼をしてくれていたんだ。
「この前、採ってきてもらった薬草と今度依頼するつもりだった薬草があれば治る可能性があるのだがな」
そういう事ですか。今度って……急ごうかな。
でも……そうだ『鑑定』。
>ミリア・シュバリア;公爵家長女。二年前より病(実際は氷の呪い)で伏せっている。
「病、というより呪い……か」
二年前からずっととはかわいそうだ!
僕はベッドに近付く。
「ミリア様、お辛いですね。少しだけでもお役に立てる事をしてもよいですか……『回復』」
疲れを癒やす程度の力しかないけれど気持ちを込めて聖魔法を使う。
「『回復』は聖女の力……ニコは使えるのか……」
デムスさんが驚いている。
「大したものではありません。少し疲れが取れる程度なので」
今、複雑そうな顔をされても困りますよ?
デムスさんを横目で見た瞬間、自分の鞄が光っている事に気が付いた。
虹色に光る魔鉱石……鞄から出す。
ミリア様の手を取り、魔鉱石に触れさせる。
僕も魔鉱石を介するようにミリア様に『回復』をかける。
…………魔鉱石の光が増していき、虹が部屋を輝かせた。
『正解』
……声? 女神様かな?
爆発するような光がミリア様にシュッと吸い込まれた。
全員、目が丸くして固まっていた。僕も含めて。
それからしばらくするとミリア様の肌の色が真っ白から赤みが差してきた。
公爵夫妻がミリア様の手を握る。
時間と共に肌の血色が良くなっていく。
それから間もなく…………ミリア様は目を開いた。
深い青い目に僕は引き込まれる錯覚を受けた。
「……ニコ?」
「はい。ニコです!」
何故、名前を知っているかは分からない。けれど今はそんな事はどうでもいい。。
「ありがとう。ニコ」
公爵夫妻は泣いてミリア様に抱きついた。アーカムさん達も涙を浮かべている。
皆さん、嬉しそうだ。
寒さも収まったのでアーカムさんは魔道具の稼働を停止させた。
これからアーカムさんとデムスさんの依頼は無くなるかな。
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