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第1話 異世界転生は定番でいこう

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 うん。死んだ。

 二六歳で死ぬとは思わなかった。

 トラックに轢かれて助かるわけがないよね。

 あの時、突き飛ばした女の子は大丈夫だったかな。

 目の前でフラついていたから大丈夫かな、なんて心配した矢先に車道に倒れ込むからつい、飛び出してまった。

 突き飛ばしてしまったけど怪我していなければいいんだけどな。あの子。

 自分は……良い事をしたと思えばいいか。
 
 それにしても眩しくて目が開かない。

 もしかしたら助かったのかな?
 自宅だったらこれほど明るく出来ないから病院なのかな? 
 手術中なのかもしれない。
 でも、痛みが無いのが救いだな。

「何を言っているのですか? 谷中 虹琥やなか にこ 

 ん? 女性の声? お医者さんかな?

「違いますよ。神です。女神ですよ」

 夢なのかな?怪しげなところに迷い込んでいたらやだなぁ。

「夢でも怪しげな所でも無いです。谷中 虹琥」

 ではどこなんだろう?

「ここは世界の狭間。あなた達の世界では天国と呼んでいる場所が近いかもしれません」

 では、死んだのですか? 僕。

「物理的に、という意味では死んでいますね」

 物理的にって……体は駄目になったって事……ですか。

 そうかーやっぱり死んだかーパソコンとスマホの中身は見られたくないなー。

「あなたの記録の類は全て消しておきましたよ。これはサービスです」

 それは助かるなぁ。色々。サービスって言葉が気になるけど。

 …………あれ?
 思っているだけなのに会話していません?

「だから神だからですよ。しかも女神です。これは繰り返して言いますよ。なので当然、心の声でも会話出来ます」

 ちゃんと声で女神様と分かりますよ!
 今の自分の体ってどうなっているんですか?

「正直に伝えるとショックを受けると思いますので言うのはやめておきますね」

 あぁ、やっぱり大変なことになっているんですね・・・すぐに直る訳ではないんだ。

「物理的に死んだと言いましたが、あと少しで治りますよ。あ、見た目はちょっと変わります。ちょ~っとだけですよ」

 ……うん。見た目が変わる気がする。
 性別が変わらなければ気にしない事にしよう。

「割り切りがよくて良かった~ちなみに目は見えているんですけど、私ってどうしても光り輝いちゃうんですよ!」

 後光ってやつですか。さすが女神様ですね。
 治してもらえているのなら今後は何か有るんですよね?

「あなたもよく知っている『異世界転生』をしてもらいます」

 お! やはりトラックは異世界転生のトビラなんですね。嫌なトビラだけど。
 ではファンタジーの世界で人生やり直しですか。魔法とか使えるといいな。

「そう。あなたの世界の物語にある『剣と魔法』の世界です」

 僕の世界に精通されてそうですね。女神様。

「はい。あなたの世界にはかなり精通してますよ!特にサブカルチャーは強いです!アニメも新作はチェックしていますし、ゲームも得意ですよ」

 何か圧力みたいなのを感じる……是非談義したかったですね……あ、もしかして転生特典とかあったりしますか?

「特典ですか? 定番ですね……そう、三つ付けましょう」

 大盤振る舞い?な気がする。

「一つ目は転生先では記憶をそのままに16歳から始まります。あちらでは成人年齢です」

 精神が大人のまま赤ちゃんからは厳しそうだから良いかもしれない。
 知識は力!助かります。では家族いるんですか?

「家族は別の国に住んでいて、今は一人で暮らしている事にしましょう。町には馴染んでいる状態ですね」

 急に現れた人間では不審者でしか無いですよね!

「そして家はあります。馴染むまでの三年はお金と食料は困らないようにしておきました。食糧庫に欲しいものを出しますね。ただし、今の世界の進んだ食材はダメです」

 化学的な調味料とかはダメって事ですね。
 でも家と食料があるのは助かるなぁ。お金もどうやって稼ぐのか分からないからとても助かる。

「二つ目は私と話せます。最初は短い時間ですが成長すればもっと話せるようになります」

 女神様、よっぽどゲームやアニメの話をしたかっ「違います!!」あ、そうですか……ニヤり。

 通常では解決出来ない事にも助けてもらえそうなのでとてもありがたい。
 でも、成長しないとダメなくらいの力が必要なんですね。でも十六歳ではあまり伸びないような気がしますけど?

「大丈夫です。これからですよ」

 と、言う事はレベルとかスキルとかあるんですか?

「そうなんです! それが三つ目です」

 アニメとかラノベによくあるステータス画面とか出たり?

「あぁ、そういうのがよいですか?私としてはゲーム的でどうかと思うんですよね」

 確かにリアル感?みたいの無いですよね。

「でも、いいですよ。説明も簡単ですし。その画面の中から私と話せるような仕組みにしましょう」

 あれ? 出来るんですか。自分を客観的に見れそうだからいいかもしれないですね。生きるモチベーションを上げるのにも良さそうですし!
 そうなるともしかして三つ目は剣とか魔法のスキルですか?

「それは向こうに行ってからのお楽しみにしておきましょう。あなたに向いたものですよ」

 それは後での楽しみにすれば良いですね!
 あ、なんとなく自分の手足が見えてきた。
 ぼんやりと女神様も見えてきたような。
 ふんわりとした白い装束を纏っているのが分かったけれど顔はやはり見えない。

「もうほぼ治ったからですね。ではそろそろあちらの世界に行ってもらいます。またお話ししましょう」

 手を振っているのがボンヤリと見えた。
 はい、助けてくれてありがとうございました。行ってきます!

 せっかく見え始めたのに再び光に包まれ始めて何も見えなくなった。 

 ……そうだ。次に目が開いた時はアレをやろう。アレしか無い。

 ちょっとした決意と共に眩しさが増していき……僕は意識を失った。
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