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エピローグ 蛇足物語其の二 GHQ(GO・HELL・QUICKLY)
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1950年9月15日。乾坤一滴の大作戦である「クロマイト作戦」を立案したダグラス・マッカーサーは作戦の成功を確信していた。
その確信には理由がある。新生日本軍の全面参加に漕ぎつける事に成功したからだ。日本側の協力を取り付けるのは並大抵の努力ではなかった。
装備を寄越せ、物資を寄越せ、金を寄越せと再三の催促、ごね続け足元を見続ける吉田を何度張り倒してやりたくなったか分からない。
それでも最後はうんと言わせてやった。装備も最低限、訓練もほぼ出来ていない、将校は復帰したばかりの元帝国陸海軍と不安は多いが指揮権は自分達が握っているので問題はないだろう。
あれだけ太平洋で自分達を苦しめた日本軍が味方に付いている。味方の士気も高くなる。韓国人は嫌がるであろうが、前線の行けばその様な考えも吹き飛ぶであろう事は疑いない。
それが全て破城した。
半島に派遣した部隊は全て壊滅したのだ。辛うじてプサンから撤退できた僅かな部隊がいるだけで、日本占領を維持するギリギリの人数しか残されていない。
原因は謎の疫病だ。
仁川への上陸は見事やり遂げた(ざまぁみろブラッドレー!)上陸一番槍を買ってでた日本軍は損害を顧みず大活躍し、見事ソウルへの道を切り開いたのだ(T34へ自爆攻撃を行った部隊すらある)
だが38度線を越えた辺りで様子が可笑しくなり始めた。先鋒を行っていた筈の日本軍から「疫病発生」の報と共に音信が途絶え、「奴ら」がやってきた。
北朝鮮軍・韓国軍・そして日本軍と大量の現地民の群れ。その全てが死んでいた。死んでいるのに動き、進み、食らいついてくる。
この津波に国連軍は総崩れした。果てない津波はギリギリで保っていた士気を粉々にするに充分だったのだ。幸いな事に「奴ら」は敵味方構わず襲い掛かっているらしく北朝鮮はおろか豆満江を超えて中国、ソ連領にも疫病の波は広がっているので戦争は当事者を失い無かった事になったと言うことだけである。
「だが私の大統領への目は完全になくなった」
半島の完全喪失、派遣軍の壊滅、それに合わせる様に揺らぎつつあるGHQの日本支配。これで大統領選に再度出馬できたら奇跡だ。頭を抱える他はない、本国は疫病の拡大を止める為、核の使用も検討されているらしいがどう考えても遅い。
海軍は日本海から流れてくる「奴ら」の対処で疲弊しており、一部では新生日本海軍の拡大を行い彼らに任せるべきだと言う議論さえしているのだ。
悩みの尽きないマッカーサーの耳にノックの音が聞こえた、そう言えば、今日は緊急の要件と言う事で吉田が来る事になっているのだ。
まてなんだ?ノックの音にしては五月蠅くないか?えっ?なんだこれは銃声だと!気づけばGHQの置かれる第一生命館の外から明らかに人の悲鳴や銃声は罵声が聞こえて来るではないか。
「はーい。御免なさいよ」
思わず窓の外の見ていたマッカーサー、そんな彼の後ろからどうぞといってないにも関わらず、件の人間である日本国宰相吉田茂が、葉巻を吹かしながら入ってくるではないか。
「なんだ吉田首相、私は入れといった覚えは、、、!」
余りの態度にムッとして吉田に振り向いたマッカーサーは凍り付いた。吉田の左手、その手には自分の腹心である民生局長ホイットニー中将の首がしっかりと握られており、こと切れている事が明らかな中将の巨体をずるずると引きずって入ってきたからだ。
「あっ!これですか。なんべん言っても入れてくれんので殺ってしまいましてな。いやぁ人間と言う物は脆いもんですなぁ」
カラカラと笑いながら中将の体を投げ捨てる吉田茂。警備が来る様子はない。寧ろ庁舎ないからも騒乱の音が聞こえ始めたのがわかる。
「いったいなんのようだね。ミスター吉田」
辛うじて声を絞り出す。目の前の人物は人間ではない何かだ。長年の戦場経験が警鐘を鳴らしていた。
「いえねぇ、お別れを言いに来たのですよ。ほら閣下のお役目も今日で終わりですからなぁ」
「私に退任の予定はないが?勘違いではないのかね」
如何にもかみ合わない会話をしつつ、執務机の引き出しから拳銃を取ろうと動くマッカーサー。その動きを制する様に吉田は言葉を続ける。
「勘違いではないですな。今日で閣下のお役は御免ですよ。ああこの日をどれだけ待った事か、時に我々がここGHQをなんと呼んでいるかご存じで」
「知らんな。私は忙しいのだよミスター。後日に改めて来てはくれないかな」
「つれないですなぁ。お答えしましょう」
そう言うなり乱杭歯を剥き出し吉田はマッカーサーに飛び掛かる。マッカーサーが拳銃を向けるのも同時であった。
数回の発砲、確かな手ごたえ、だが吉田は意に返さず、マッカーサーの喉笛に食らいついた。数秒マッカーサーは目を大きく見開き、吉田の背中に拳銃を押し付けて全弾を送り込むがそれが最後の抵抗であった。
「おおイてぇ!GO・HELL・QUICKLY。とっとと地獄にいけだ、馬鹿野郎」
どうと倒れたマッカーサーに唾を吐くと吉田は嘯いた。その日GHQは事実上壊滅した日本全国の国連・米国軍もである。
「疫病」死霊術の腐敗は中国全土、ソ連極東に迫りつつあり、朝鮮に派遣された国連軍は腐敗の種を自国に持ち込んでいる。敗北しゼロに戻った戦後日本、これまで失ってきた全てがプラスに転じるならばこの国は第三次世界大戦の勝者になれるであろうか?
その確信には理由がある。新生日本軍の全面参加に漕ぎつける事に成功したからだ。日本側の協力を取り付けるのは並大抵の努力ではなかった。
装備を寄越せ、物資を寄越せ、金を寄越せと再三の催促、ごね続け足元を見続ける吉田を何度張り倒してやりたくなったか分からない。
それでも最後はうんと言わせてやった。装備も最低限、訓練もほぼ出来ていない、将校は復帰したばかりの元帝国陸海軍と不安は多いが指揮権は自分達が握っているので問題はないだろう。
あれだけ太平洋で自分達を苦しめた日本軍が味方に付いている。味方の士気も高くなる。韓国人は嫌がるであろうが、前線の行けばその様な考えも吹き飛ぶであろう事は疑いない。
それが全て破城した。
半島に派遣した部隊は全て壊滅したのだ。辛うじてプサンから撤退できた僅かな部隊がいるだけで、日本占領を維持するギリギリの人数しか残されていない。
原因は謎の疫病だ。
仁川への上陸は見事やり遂げた(ざまぁみろブラッドレー!)上陸一番槍を買ってでた日本軍は損害を顧みず大活躍し、見事ソウルへの道を切り開いたのだ(T34へ自爆攻撃を行った部隊すらある)
だが38度線を越えた辺りで様子が可笑しくなり始めた。先鋒を行っていた筈の日本軍から「疫病発生」の報と共に音信が途絶え、「奴ら」がやってきた。
北朝鮮軍・韓国軍・そして日本軍と大量の現地民の群れ。その全てが死んでいた。死んでいるのに動き、進み、食らいついてくる。
この津波に国連軍は総崩れした。果てない津波はギリギリで保っていた士気を粉々にするに充分だったのだ。幸いな事に「奴ら」は敵味方構わず襲い掛かっているらしく北朝鮮はおろか豆満江を超えて中国、ソ連領にも疫病の波は広がっているので戦争は当事者を失い無かった事になったと言うことだけである。
「だが私の大統領への目は完全になくなった」
半島の完全喪失、派遣軍の壊滅、それに合わせる様に揺らぎつつあるGHQの日本支配。これで大統領選に再度出馬できたら奇跡だ。頭を抱える他はない、本国は疫病の拡大を止める為、核の使用も検討されているらしいがどう考えても遅い。
海軍は日本海から流れてくる「奴ら」の対処で疲弊しており、一部では新生日本海軍の拡大を行い彼らに任せるべきだと言う議論さえしているのだ。
悩みの尽きないマッカーサーの耳にノックの音が聞こえた、そう言えば、今日は緊急の要件と言う事で吉田が来る事になっているのだ。
まてなんだ?ノックの音にしては五月蠅くないか?えっ?なんだこれは銃声だと!気づけばGHQの置かれる第一生命館の外から明らかに人の悲鳴や銃声は罵声が聞こえて来るではないか。
「はーい。御免なさいよ」
思わず窓の外の見ていたマッカーサー、そんな彼の後ろからどうぞといってないにも関わらず、件の人間である日本国宰相吉田茂が、葉巻を吹かしながら入ってくるではないか。
「なんだ吉田首相、私は入れといった覚えは、、、!」
余りの態度にムッとして吉田に振り向いたマッカーサーは凍り付いた。吉田の左手、その手には自分の腹心である民生局長ホイットニー中将の首がしっかりと握られており、こと切れている事が明らかな中将の巨体をずるずると引きずって入ってきたからだ。
「あっ!これですか。なんべん言っても入れてくれんので殺ってしまいましてな。いやぁ人間と言う物は脆いもんですなぁ」
カラカラと笑いながら中将の体を投げ捨てる吉田茂。警備が来る様子はない。寧ろ庁舎ないからも騒乱の音が聞こえ始めたのがわかる。
「いったいなんのようだね。ミスター吉田」
辛うじて声を絞り出す。目の前の人物は人間ではない何かだ。長年の戦場経験が警鐘を鳴らしていた。
「いえねぇ、お別れを言いに来たのですよ。ほら閣下のお役目も今日で終わりですからなぁ」
「私に退任の予定はないが?勘違いではないのかね」
如何にもかみ合わない会話をしつつ、執務机の引き出しから拳銃を取ろうと動くマッカーサー。その動きを制する様に吉田は言葉を続ける。
「勘違いではないですな。今日で閣下のお役は御免ですよ。ああこの日をどれだけ待った事か、時に我々がここGHQをなんと呼んでいるかご存じで」
「知らんな。私は忙しいのだよミスター。後日に改めて来てはくれないかな」
「つれないですなぁ。お答えしましょう」
そう言うなり乱杭歯を剥き出し吉田はマッカーサーに飛び掛かる。マッカーサーが拳銃を向けるのも同時であった。
数回の発砲、確かな手ごたえ、だが吉田は意に返さず、マッカーサーの喉笛に食らいついた。数秒マッカーサーは目を大きく見開き、吉田の背中に拳銃を押し付けて全弾を送り込むがそれが最後の抵抗であった。
「おおイてぇ!GO・HELL・QUICKLY。とっとと地獄にいけだ、馬鹿野郎」
どうと倒れたマッカーサーに唾を吐くと吉田は嘯いた。その日GHQは事実上壊滅した日本全国の国連・米国軍もである。
「疫病」死霊術の腐敗は中国全土、ソ連極東に迫りつつあり、朝鮮に派遣された国連軍は腐敗の種を自国に持ち込んでいる。敗北しゼロに戻った戦後日本、これまで失ってきた全てがプラスに転じるならばこの国は第三次世界大戦の勝者になれるであろうか?
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