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Q「これはなんですか?」A「これは戦車です!」

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 ワシントン海軍軍縮条約。失効してから既に四年が経過しているが、前回の全開した戦争の勃発と全壊した帰結に鑑み試みられた平和への気高い挑戦である(如何にかして裏を掻こうと各国色々あったとしてもだ)



 史実と違いこの条約を大日本艦隊収集帝国はぶっちしていない。それどころかある時期から率先して海軍を削減し世界に平和への尊い模範を見せている。



 事実は、詐欺で、嘘で、誤魔化しで、後ろ暗く、薄汚いを通り越して真っ黒けであるとしてもだ。



 であるから条約参加各国特に英米は安心というか「それでいいんか?マジで?お前頭おかしいよ?」と言う気持ちで自国の海軍も条約に合わせた。何でも日本の艦隊削減を理由に予算を財務省に削りに削られた国があるらしい。



 そう守ったのだ。血涙を流してコレクションを手放し、出世する為のポストを諦めた将官がいるのだ。



 それなのに!嗚呼それなのに!



 「「なんだこれは!なんだんだこれは!」」



 列強各国の日本大使館は怒髪天を上げて食ってかかる訪問者を迎えていた。特に怒っているのは英米である。各国外務次官と付いてきた海軍将官の手にはとある記事が一面に載った新聞が握られている。



 紙面にはこうある。



 「ソ連降伏!」



 そしてデカデカと赤の広場に陣取る魔界戦艦の写真が掲載されていた。



 「ああそれですか?」



 なーんだそんな事かと言う風に、駐米大使である野村吉三郎は向けられる怒りのオーラを受け流した。彼らのいる大使館の一室は、太陽光を遮り人工灯のみでなぜか黴臭くそして寒気を覚える程冷たい(微量に血生臭くもある。何でも全米では娼婦の行方不明事件が多発してるらしいがここでは割愛する)



 「なんですかなその態度は!これは重大な裏切行為だ!戦略兵器である戦艦を解体したと偽っておったのですぞ貴国は!幾ら失効したとは言え条約の期間中に、貴国はこれだけの艦を隠して建艦していのです!どう説明していただけるのですかな!」



 「その通りです!貴国が艦隊を削減したと信じたからこそ、我が海軍は艦隊を拡張しなかった!そのせいで近代化予算も出し渋られたんですぞ!どれだけこちらが迷惑を被ったとおもわれるかのか!」



 本音駄々洩れである。しゃーない、風雲急を告げる世界情勢に合わせ、急遽増額されたとはいえ如何な米国でも今までサボっていた分を取り戻すには時間が掛かるし、失われてしまった任期と退役してしまった将兵のポスト&年金を如何にもできない。



 だから怒っている。実はこの度の事で、輸入超過をぶっちぎり赤字垂れ流しの事態になっている奇跡の薬の減額交渉の足掛かりにと怒鳴り込んだ国務長官が内心引くほど隣の海軍軍人は起こっている。



 「ちっ反省してまーす(日本語)正直、私には何故貴国がそこまで今回の事を問題視するのか理解しかねますな?その新聞記事は我が国の対ソ戦勝利としかかいてませんぞ?」



 一国の大使とはとても思えぬセリフを小さく吐いたのち。野村大使は「なんでそこまで怒ってのホワーイ?」と嘆息した。



 「これだよ!これ!この写真!これが問題なんですぞ!何でいない筈の戦艦が映っているんですかな!説明して頂きい!」



 小馬鹿にしたような野村大使の態度に両名切れる。声は一オクターブ高くなる。



 「何か問題でも?」



 「だから戦艦!」



 「戦艦って陸を歩きます?歩くと思ってるのでしたら休暇を取られた方が良い、お疲れでしょう?」



 野村の一言にスンとした。空気がスンとした。



 「これは戦車です。お分かり?TANKですよTANK。ほらTANKの事、陸上戦艦とも言いましたが、あれを条約の総トン数に勘定しないでしょ?それと同じ」



 「「その様な詭弁が通じると、、、」」

 

 「第一これ泳げると思います?足生えてるんですよ?これで何ノットでると思うんですか?というか沈むでしょ常識的に考えて、この足何tあるとお思いで?よしんば浮けても砲台にしかなりません。これの何が脅威ですか」



 「それはホラ、そうだが、、、ねぇ長官?」



 「ううぅむ、でもなぁ。」



 だんだん勢いが衰えて来る両名。確かにそうなのだ。誰が戦艦を走らせようと考える?元海軍卿以外に。



 歩く戦艦は軍事史に燦然と躍り出た全くの新兵器なのだ!「TANKのパクリだ!権利侵害だ!」と英国宰相は叫ぶかもしれないが、、、



 「良し!ではこうしましょう!貴国から視察団を受け入れます。こいつが戦車であると理解するまで思う存分調査されると宜しい!おまけだ技術交渉にも応じます!」



 「「は?」」



 そして気前の良すぎる提案である。そしてこう付け加える。



 「実はですな。独伊からは既に技術提供と量産型の購入希望がきております。それと聞いて居られないよなのでお伝えしますと、貴国の陸軍さんからもオファーが来ております。たしかマッカーサー大将でしたかな?内々で調査団を、、あっこれ言ったらまずかったかな?」



 爆弾発言である。それに加えて真偽は兎も角、陸軍の先走り行為のリーク。これで抗議の場は混乱に包まれる。



 もしも、もしもであるが大陸反抗となって上陸しようとしたら、こいつ等が大挙して突っ込ん来るかもしれない。



 一大事である。



 踏みつぶされるボーイズ。高笑いするちょび髭。急ぎこちらも大量配備、取られる予算と人員の取り合い。そして、そして、、、



 「「あるもの使いましょう!海軍の旧式戦艦は陸軍に移管してしまえば安く上がる!」」



 「「あのバカを吊るせ! なんで譲歩した!」」

 

 抗議に来ていたジェームズ・フォレスタル海軍長官の脳裏に浮かぶは、財務省が言い出す無茶ぶりと、トミーガン片手に自分を追い回す提督たち。海軍には血の気が多いのがいるのだ。



 「失礼しました。提案は検討させて頂きます。国務長官、なにしてるんですか?落ち着きましょう。まずは冷静な話し合いをしないといけない」



 今までの激昂は何処へやらどっかりと席に座って交渉のポーズの海軍長官に、隣にいたハル国務長官の驚ろくまい事か。

 

 「急に冷静になるな!どうしたんだフォレスタル君!」



 「まあまあハル長官。彼も大人なんですから冷静になったんですよ。さて話し合いましょ。お安くしときますよ」



 野村大使の言葉に、一人怒っていても仕方がないとしぶしぶ席に着くハル長官。



 (なんだこれは調子が狂う事夥しい。何時から日本人はここまで腹芸が出来る様になったんだ?)



 ハル長官の内心は置いて置くとして、世界の陸を悪夢の産物が歩くのも遠い未来ではなさそうである。

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