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鬼の宴会 血の祭典
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吹き飛ぶ骨と吹き出す血、方や砲撃で方や刀剣で。北の大地で過去と未来は交錯し、現実と幻想が正面衝突している。
如何に死体を戦争の主力兵器に据えようとしたところで、結局の所は現代文明に立脚した赤と黒の両勢力がぶつかり合う東部戦線では文字の通り戦線と言う物が構築される。
人は食べねばならず眠らねばならない。兵器は修理を必要とし、幾ら略奪と収奪をしても補給線と言う長い臍の緒を引きずらねば軍隊は動かない。
だが極東から押し寄せる死の軍隊に必ずしもそれは必要とは言えない。大日本吸血帝国軍には生者の軍隊は遂に少数派に転落したのだ。
帝国にとって、一銭五厘と言う大金を払ってまで兵を集める必要は最早ない。予備役の動員も同じく不要だ。「生者は」と言う但し書きが付いてではあるが。
死人に関してはトンデモナイ勢いで動員中だ。現在靖国神社の英霊の皆さまはほぼ全員が出征中となっている。何しろ指揮官が足りない。中華の地より続々と連行される死者の津波を効果的に扱うには、自分の意志で戦う奴隷使いが(死人)必要なのだ。
そんな訳で例え生前が二等兵だろうと奇兵隊だろうと御国の為に元帝国軍人は働いている。この度の戦役に鑑み、旧幕府軍も反乱士族の皆さまも、準英霊枠として賊軍の汚名を許されご参加頂いているのだから、根こそぎ動員(死)と言った感じである。
それだけの大兵力なのだ。百万や二百万では効かない。これまで溜めに溜めた一千万規模の大集団が主に徒歩で西へ西へとヨロヨロと進み続けている。
そして主ではない方も凄まじい数で戦場を暴れ回っている。ここには戦線などない。泥濘を森林を荒地を想定外の山中を昼夜関係なく騎兵の群れが湧きだして襲ってくる。
町に火をかけ、村を踏みつぶし、潰された者もまた立ち上がり這いずり戦列へと加わっていく。波だ果てし無く押し寄せる死の波が西へ西へと向かっているのだ。
その中でも異彩を放つのは、食べ放題に湧きあがる悪鬼の軍勢であろう。彼らは宵闇と共に塹壕に忍び込み、必死の思いで逃げる難民の列に乱入し、硬く守られた都市の内側に霧と共に入り込む。
そして食う。笑いながら歌いながら。
「「おーれとおーまえーはどーきのさーくーらー!」」
「「ろーすけのおーまえーもしぬならいっしょ、しんでくれーよーなくーにのたーめー」」
11月の厳冬のオムスク。その州庁舎にだみ声が響いている。辺りは鮮血で染まり、その中で酔っ払いどもが大いに飲み大いに騒いでいる。
酔っているのは酒ではもちろん無い。酒であれば酒瓶は必死に足をバタつかせて藻掻いていないし、酒樽が流れ出す生命の元を虚ろな目で見ていない。
午前一時の大宴会。そこで乱費されているのは生命であり、それを消費するのは悪鬼である。その日、迫る日本軍への対応に不眠不休で対応していた軍民の職員たちは、音も無く現れた集団に血だまり沈む運命を辿ったのだ。
大日本鮮血帝国、第4師団歩兵第8連隊。弱兵と弱兵と、云われ無き罵りを受け、悪鬼に身を落とす事で、全てを見返す事にした兵共が束の間の饗宴をここで楽しむ事に決めたからだ。
「露助は酔うなぁ」
「そうやなぁ。ええ感じや。やっぱあれや、酒好きな奴らやさかいに回っとるんやろ体中に酒が」
まだ年若い二等兵、祖国の危機に志願した紅顔の少年兵に齧りついていた兵が、血塗れの顔を上げてそう言うと、逃げ遅れたタイピストの女性を吸い尽くした兵が応える。
「おーい。隠れてた奴がおったでぇー!将校や!どうでっか少尉殿、美味そうな奴やさかいに一齧り」
「そこら辺にしておけよ、お前らぁ、飲み過ぎて任務を忘れるな~」
「そう言う少尉殿もえろう酔ってはるんちがいますか~」
「馬鹿もん!これしきの事で帝国軍人がだなぁ~」
宴もたけなわと言う奴である。積み上げられ干からびた死体は百を優に超え、繰り広げられる地獄に捕らえられた犠牲者が嗚咽を漏らし、下手な軍歌が辺りに木霊する。
そんな乱痴気騒ぎを繰り広げる不死者たちの耳にエンジン音が聞こえた。生き残りの誰かが通報したのだろう。窓の外を見れば装甲車を先頭に続々とソ連兵が集まってくるではないか。
「ありゃ、お~いお代わりや!お代わりが来た、、、、げぺ」
窓から顔を覗かせていた赤ら顔の軍曹が顔を吹き飛ばされて床に倒れ伏す。敵は容赦などするつもりはないのだ、既に庁舎は陥落した物と考え悪魔どもを鉛で清める事に決めたようだ。
だがそれを見ていた鬼どもはゲラゲラと笑いだす。
「アホや!アホがおる!げぺやて!おもろ!」「軍曹どの!酔いすぎと違います!」「たるんどるぞぉ!貴様ぁ!」
「おー痛ぁ!なんや!笑うなや!恥ずかしいなぁ!」
それもそのはずだ。倒れた軍曹は見る間に顔を再生させ恥ずかしそうに笑って答えたからだ。それにしても仲の良い事だ。往時の帝国陸軍とは比べ物にならない緩さである。
これが悪鬼の軍勢なのだ。死生観も倫理もユーモア感覚もユルユル、明るく楽しく大殺戮、enjoy&excitingが彼らのモットーである。
「笑った、笑った。さーて時間も時間だ。朝になる前に片づけてオサラバするぞ!連隊本部に連絡!州庁舎の奪還部隊と思しき部隊と接敵!これより交戦する!」
「はっ!ほらそこ!何時まで飲んでるんや!駆け足!」
腹を抱えて笑っていた少尉の号令一過、悪鬼どもは動きだす。それに続く様に無残に食い散らかされた犠牲者たちも立ち上がり始めた。
市内の各所で爆発音が響き、銃声と悲鳴がそれに重なって大きくなっていく。
朝はまだ遠く、それまでにオムスクが、どれ程の血をまき散らす事になるかはまだ分からない。
如何に死体を戦争の主力兵器に据えようとしたところで、結局の所は現代文明に立脚した赤と黒の両勢力がぶつかり合う東部戦線では文字の通り戦線と言う物が構築される。
人は食べねばならず眠らねばならない。兵器は修理を必要とし、幾ら略奪と収奪をしても補給線と言う長い臍の緒を引きずらねば軍隊は動かない。
だが極東から押し寄せる死の軍隊に必ずしもそれは必要とは言えない。大日本吸血帝国軍には生者の軍隊は遂に少数派に転落したのだ。
帝国にとって、一銭五厘と言う大金を払ってまで兵を集める必要は最早ない。予備役の動員も同じく不要だ。「生者は」と言う但し書きが付いてではあるが。
死人に関してはトンデモナイ勢いで動員中だ。現在靖国神社の英霊の皆さまはほぼ全員が出征中となっている。何しろ指揮官が足りない。中華の地より続々と連行される死者の津波を効果的に扱うには、自分の意志で戦う奴隷使いが(死人)必要なのだ。
そんな訳で例え生前が二等兵だろうと奇兵隊だろうと御国の為に元帝国軍人は働いている。この度の戦役に鑑み、旧幕府軍も反乱士族の皆さまも、準英霊枠として賊軍の汚名を許されご参加頂いているのだから、根こそぎ動員(死)と言った感じである。
それだけの大兵力なのだ。百万や二百万では効かない。これまで溜めに溜めた一千万規模の大集団が主に徒歩で西へ西へとヨロヨロと進み続けている。
そして主ではない方も凄まじい数で戦場を暴れ回っている。ここには戦線などない。泥濘を森林を荒地を想定外の山中を昼夜関係なく騎兵の群れが湧きだして襲ってくる。
町に火をかけ、村を踏みつぶし、潰された者もまた立ち上がり這いずり戦列へと加わっていく。波だ果てし無く押し寄せる死の波が西へ西へと向かっているのだ。
その中でも異彩を放つのは、食べ放題に湧きあがる悪鬼の軍勢であろう。彼らは宵闇と共に塹壕に忍び込み、必死の思いで逃げる難民の列に乱入し、硬く守られた都市の内側に霧と共に入り込む。
そして食う。笑いながら歌いながら。
「「おーれとおーまえーはどーきのさーくーらー!」」
「「ろーすけのおーまえーもしぬならいっしょ、しんでくれーよーなくーにのたーめー」」
11月の厳冬のオムスク。その州庁舎にだみ声が響いている。辺りは鮮血で染まり、その中で酔っ払いどもが大いに飲み大いに騒いでいる。
酔っているのは酒ではもちろん無い。酒であれば酒瓶は必死に足をバタつかせて藻掻いていないし、酒樽が流れ出す生命の元を虚ろな目で見ていない。
午前一時の大宴会。そこで乱費されているのは生命であり、それを消費するのは悪鬼である。その日、迫る日本軍への対応に不眠不休で対応していた軍民の職員たちは、音も無く現れた集団に血だまり沈む運命を辿ったのだ。
大日本鮮血帝国、第4師団歩兵第8連隊。弱兵と弱兵と、云われ無き罵りを受け、悪鬼に身を落とす事で、全てを見返す事にした兵共が束の間の饗宴をここで楽しむ事に決めたからだ。
「露助は酔うなぁ」
「そうやなぁ。ええ感じや。やっぱあれや、酒好きな奴らやさかいに回っとるんやろ体中に酒が」
まだ年若い二等兵、祖国の危機に志願した紅顔の少年兵に齧りついていた兵が、血塗れの顔を上げてそう言うと、逃げ遅れたタイピストの女性を吸い尽くした兵が応える。
「おーい。隠れてた奴がおったでぇー!将校や!どうでっか少尉殿、美味そうな奴やさかいに一齧り」
「そこら辺にしておけよ、お前らぁ、飲み過ぎて任務を忘れるな~」
「そう言う少尉殿もえろう酔ってはるんちがいますか~」
「馬鹿もん!これしきの事で帝国軍人がだなぁ~」
宴もたけなわと言う奴である。積み上げられ干からびた死体は百を優に超え、繰り広げられる地獄に捕らえられた犠牲者が嗚咽を漏らし、下手な軍歌が辺りに木霊する。
そんな乱痴気騒ぎを繰り広げる不死者たちの耳にエンジン音が聞こえた。生き残りの誰かが通報したのだろう。窓の外を見れば装甲車を先頭に続々とソ連兵が集まってくるではないか。
「ありゃ、お~いお代わりや!お代わりが来た、、、、げぺ」
窓から顔を覗かせていた赤ら顔の軍曹が顔を吹き飛ばされて床に倒れ伏す。敵は容赦などするつもりはないのだ、既に庁舎は陥落した物と考え悪魔どもを鉛で清める事に決めたようだ。
だがそれを見ていた鬼どもはゲラゲラと笑いだす。
「アホや!アホがおる!げぺやて!おもろ!」「軍曹どの!酔いすぎと違います!」「たるんどるぞぉ!貴様ぁ!」
「おー痛ぁ!なんや!笑うなや!恥ずかしいなぁ!」
それもそのはずだ。倒れた軍曹は見る間に顔を再生させ恥ずかしそうに笑って答えたからだ。それにしても仲の良い事だ。往時の帝国陸軍とは比べ物にならない緩さである。
これが悪鬼の軍勢なのだ。死生観も倫理もユーモア感覚もユルユル、明るく楽しく大殺戮、enjoy&excitingが彼らのモットーである。
「笑った、笑った。さーて時間も時間だ。朝になる前に片づけてオサラバするぞ!連隊本部に連絡!州庁舎の奪還部隊と思しき部隊と接敵!これより交戦する!」
「はっ!ほらそこ!何時まで飲んでるんや!駆け足!」
腹を抱えて笑っていた少尉の号令一過、悪鬼どもは動きだす。それに続く様に無残に食い散らかされた犠牲者たちも立ち上がり始めた。
市内の各所で爆発音が響き、銃声と悲鳴がそれに重なって大きくなっていく。
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