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仄暗き都にて
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フランスの敗北により、欧州大陸はナチスドイツの手に落ちた。世界は本格的に第二回目の乱痴気騒ぎに突入しようとしている。
この祭りの開催に合わせ、各国は外交攻勢を、ある国に加速させている。言わずもがな大日本帝国にである。
かの帝国は、最早嘗ての田舎帝国ではない。今次大戦を、戦い抜くに必要な戦略物資の、唯一の供給国であり、無尽蔵の兵力を提供できる技術を握る国なのだ。
味方にした方が勝つ。確かにそう言える実力を大日本黄昏帝国は手にしていた。
だが動かない。大戦の拡大に合わせる様に、奇跡の秘薬の値段を吊り上げ世界から富を吸い上げるだけで、かの帝国は何もしようとはしていない。
「いっそ脅しつけてでも参戦させようか?」
切羽詰まった英国では、そんな議論も出る程だ。
そこまで過激な意見がでるのは、海軍力が海底に沈んでいるからだ。ワシントン条約の廃止により、航路保全の為の艦船は生産を開始したようだが、それも最低限度。駆逐艦に軽空母それと数隻の軽巡洋艦を改装しているだけで、正規空母も戦艦も、いつの間に解体したのか、影も形も無くなっている。
ホントにいつの間にかだ。一斉解体など出来る工廠は無いはずなのに、何処の港にも大型艦は消えてしまった。
日本国内に潜入させた諜報員からの情報もそれを裏付けている。あの国は陸軍国になってしまったかのようだ。
その代わり、経済の方は順調。そろそろ九十に到達しようと言うのに、現役を退かない高橋蔵相がぶち上げた列島改造計画は、流れ込む富と死体の効果的利用により、極東の田舎を先進国に変えようとしている。
見る角度でどうにも形が変わる様に見えるビル群、列島を縦断する高速鉄道(ギョロギョロした両目が付いていて、汽笛代わりに雄叫びを上げる)、政府はアスファルト言い張ると赤黒い何かが道路を覆い、行き交うは、骨が引く大型馬車、列島大陸間飛行船(どう見ても肋骨で外殻を支えていて、中に詰まっているのは悲鳴を上げる霊魂)等など帝国の経済は発展著しい。
帝都東京がその代表。仄暗き都は拡大を続けている(デザインセンスは壊滅的)
「なんか暗い」
「電灯を全廃して、ガス灯に変える?あのガス灯、夜な夜な声がして不気味なんですが?」
「動物との共生都市計画は良い事です。でもその性で家のタマが狸と宴会して困ってるんですよ、、、毎晩踊っていて五月蠅くて敵いません」
「なんで新造の建物は全部ゴシック様式なの?」
「この霧どうにかして!洗濯物が乾かない!」
「浄水場が新しくなってから、水道水が、妙にトロトロして青く光るんですが、、、、健康に良い?さいですか」
「緑化政策は結構です。防火にもなります。でもなんで公園が墓と一緒なの?」
「開発で稲荷の宮が潰されたと、狐の集団が長屋を占拠したぞ!どうしてくれる!」
まあ、色々問題は出ているようだが、概ね発展はしている。大死霊術師は日本の中心を魔都に変えたのだ。
そして、それは計画の第一段階が終了したと言う事である。現実世界において、彼の力は問題なく長期に渡って影響を維持でき、それを妨害する存在もまた対処可能であるとの結果が出たのだ。
皇居地下、大カタコンペにて
「よくぞ揃った!我が精鋭たちよ!」
その会議の首座に座るお方はノリノリで叫んだ。何だか色々吹っ飛ばしたお方はパーティーピーポーな気分なのだ。
「「「イェーイ!」」」
揃った方もノリノリであった。尊い方の隣に立っている永山のみが胃を抑えている。近ごろ、激務続きでこの死霊術師の顔色は悪い。
さて、この場こそが大日本腹黒帝国の中枢にして、最高意思決定機関だ。表の政府機関など、この場にいる不死者にとって飾りでしかない。
不死の者共は全てを掌握し、二度と人手に渡すつもりは髪の毛一筋もない。彼らは、己の不死の血統と永遠の支配を可能にする力でもって、選挙だろうとクーデターだろうと吹き飛ばせる。
今次大戦が終了したら、己たちの所属する組織から、定年を撤廃し、永遠に居座ろうとすら画策している。腐敗の魔術は、彼らの権力欲をイイ感じに刺激しているのだ。
「うむ。皆元気そうでなにより、ではこれより、世界征服の第二段階について、永山君から話がある。それにしても世界征服、、、何だかワクワクしてくるな。では永山君どうぞ」
軽い、凄く軽い、不死者は軽くて気楽なのだ。何せ死なない、限りある人生に追い立てられる事は無く、ライバルは、絶対に自分より早く死ぬのだから、皆いつもこんな調子だ。
何よりも、死霊術ある限り、他者の死に、責任なんか感じなくてもいい。死んだらあの世から呼び戻せば良いのだ。何回でも。
生ある侍従たちでは、即ライフをドレインされ、即死確実の空間でこの場で、忙しく立ち働いている、エルダーリッチとしてリビングした珍田捨巳が良い例である。可哀そうな元侍従長は、天国から強制的に呼び戻され、不死の帝王に再度仕えている。気心の知れた人間が、近くに欲しいとの、かの人のオーダーに永山が応えたのである。
そんな感じの軽い支配者に促され、顔色にの悪い死霊術師は、この場に居並ぶ不死の貴族たちに、己が計画の第二段階について話始めた。
この祭りの開催に合わせ、各国は外交攻勢を、ある国に加速させている。言わずもがな大日本帝国にである。
かの帝国は、最早嘗ての田舎帝国ではない。今次大戦を、戦い抜くに必要な戦略物資の、唯一の供給国であり、無尽蔵の兵力を提供できる技術を握る国なのだ。
味方にした方が勝つ。確かにそう言える実力を大日本黄昏帝国は手にしていた。
だが動かない。大戦の拡大に合わせる様に、奇跡の秘薬の値段を吊り上げ世界から富を吸い上げるだけで、かの帝国は何もしようとはしていない。
「いっそ脅しつけてでも参戦させようか?」
切羽詰まった英国では、そんな議論も出る程だ。
そこまで過激な意見がでるのは、海軍力が海底に沈んでいるからだ。ワシントン条約の廃止により、航路保全の為の艦船は生産を開始したようだが、それも最低限度。駆逐艦に軽空母それと数隻の軽巡洋艦を改装しているだけで、正規空母も戦艦も、いつの間に解体したのか、影も形も無くなっている。
ホントにいつの間にかだ。一斉解体など出来る工廠は無いはずなのに、何処の港にも大型艦は消えてしまった。
日本国内に潜入させた諜報員からの情報もそれを裏付けている。あの国は陸軍国になってしまったかのようだ。
その代わり、経済の方は順調。そろそろ九十に到達しようと言うのに、現役を退かない高橋蔵相がぶち上げた列島改造計画は、流れ込む富と死体の効果的利用により、極東の田舎を先進国に変えようとしている。
見る角度でどうにも形が変わる様に見えるビル群、列島を縦断する高速鉄道(ギョロギョロした両目が付いていて、汽笛代わりに雄叫びを上げる)、政府はアスファルト言い張ると赤黒い何かが道路を覆い、行き交うは、骨が引く大型馬車、列島大陸間飛行船(どう見ても肋骨で外殻を支えていて、中に詰まっているのは悲鳴を上げる霊魂)等など帝国の経済は発展著しい。
帝都東京がその代表。仄暗き都は拡大を続けている(デザインセンスは壊滅的)
「なんか暗い」
「電灯を全廃して、ガス灯に変える?あのガス灯、夜な夜な声がして不気味なんですが?」
「動物との共生都市計画は良い事です。でもその性で家のタマが狸と宴会して困ってるんですよ、、、毎晩踊っていて五月蠅くて敵いません」
「なんで新造の建物は全部ゴシック様式なの?」
「この霧どうにかして!洗濯物が乾かない!」
「浄水場が新しくなってから、水道水が、妙にトロトロして青く光るんですが、、、、健康に良い?さいですか」
「緑化政策は結構です。防火にもなります。でもなんで公園が墓と一緒なの?」
「開発で稲荷の宮が潰されたと、狐の集団が長屋を占拠したぞ!どうしてくれる!」
まあ、色々問題は出ているようだが、概ね発展はしている。大死霊術師は日本の中心を魔都に変えたのだ。
そして、それは計画の第一段階が終了したと言う事である。現実世界において、彼の力は問題なく長期に渡って影響を維持でき、それを妨害する存在もまた対処可能であるとの結果が出たのだ。
皇居地下、大カタコンペにて
「よくぞ揃った!我が精鋭たちよ!」
その会議の首座に座るお方はノリノリで叫んだ。何だか色々吹っ飛ばしたお方はパーティーピーポーな気分なのだ。
「「「イェーイ!」」」
揃った方もノリノリであった。尊い方の隣に立っている永山のみが胃を抑えている。近ごろ、激務続きでこの死霊術師の顔色は悪い。
さて、この場こそが大日本腹黒帝国の中枢にして、最高意思決定機関だ。表の政府機関など、この場にいる不死者にとって飾りでしかない。
不死の者共は全てを掌握し、二度と人手に渡すつもりは髪の毛一筋もない。彼らは、己の不死の血統と永遠の支配を可能にする力でもって、選挙だろうとクーデターだろうと吹き飛ばせる。
今次大戦が終了したら、己たちの所属する組織から、定年を撤廃し、永遠に居座ろうとすら画策している。腐敗の魔術は、彼らの権力欲をイイ感じに刺激しているのだ。
「うむ。皆元気そうでなにより、ではこれより、世界征服の第二段階について、永山君から話がある。それにしても世界征服、、、何だかワクワクしてくるな。では永山君どうぞ」
軽い、凄く軽い、不死者は軽くて気楽なのだ。何せ死なない、限りある人生に追い立てられる事は無く、ライバルは、絶対に自分より早く死ぬのだから、皆いつもこんな調子だ。
何よりも、死霊術ある限り、他者の死に、責任なんか感じなくてもいい。死んだらあの世から呼び戻せば良いのだ。何回でも。
生ある侍従たちでは、即ライフをドレインされ、即死確実の空間でこの場で、忙しく立ち働いている、エルダーリッチとしてリビングした珍田捨巳が良い例である。可哀そうな元侍従長は、天国から強制的に呼び戻され、不死の帝王に再度仕えている。気心の知れた人間が、近くに欲しいとの、かの人のオーダーに永山が応えたのである。
そんな感じの軽い支配者に促され、顔色にの悪い死霊術師は、この場に居並ぶ不死の貴族たちに、己が計画の第二段階について話始めた。
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