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これ詰まらないものですが、、、

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 1939年6月 ハバロフスクが陥落した。



 モンゴルは言わずもがな、ウランバートルに雪崩れ込んだ骨の騎兵は、古の作法に乗っ取り、モンゴル人民共和国の政府要人を袋に詰めた。



 これに激怒したスターリンであるが、チタ、ウラウンデ、イルクーツクが死都へと変わり、ノボォシビルスク周辺に、モンゴル帝国軍(日本軍は「彼」の墓を探し当てたのだ)が出没したとの情報を前に講和を選んだ。



 モスクワで行わた講和会議の席に置いて、ソ連代表のモロトフは腰を抜かしそうになる。日本側代表団と共に来たのは「彼」の使者だった。



 信じたくはない現実だ。死体が動いて、皺枯れた舌で喋っている。



 新旧二つの帝国が要求したのは、ソ連としては受け入れがたい物であった。



 クラスノヤルスク以東の割譲と、モンゴル帝国の復活である。



 会議は荒れた。ロシア語と日本語と古のモンゴル語が飛び交い、これ以上調子に乗るなら、全面戦争も辞さないとソ連側が席を立つまでに至る程だ。



 ソ連が血涙を流しながら、死者の帝国の要求を受け入れたのは、「彼」の使者の通訳を介した一言があったからだ。



 「では、冥府よりカァンの馬と狗たちを呼び戻すか?」



 現世に舞い戻った死者たちはやる気だなのだ。



 ソ連側代表の背に、冷たい物が走った事は言うまでもない。ロシア人の根源的恐怖であるタタール、が大挙して押し寄せてくる可能性がある。



 負けはしないだろう、今は中世ではないのだ。だが眠りも、疲れもしないタタール騎兵が、粛清の余波がくすぶるソ連邦で暴れまわったらどうなる?



 最悪の結末を迎えるだろう。動く死体を墓に追い返す前に、人民を酷使して、、、、違った。人民が血と汗を流して作りあげた工業基盤は灰になってしまう。



 鉄の男は、必ずの復讐を誓い、要求を受け入れる事を了承した。



 「いずれ必ず、あの汚らわしく、非科学的で、社会主義を冒涜する、帝国主義者の亡霊どもをこの世から消し去ってくれる」



 ソビエト連邦の人民は耐え難い屈辱と恐怖の中、講和文書に署名する事になったのである。





 好き放題にすぎる。中華を踏みつぶし、そして今度は、良くわからん内に、ソ連を下して、今度はモンゴル帝国の復活だ。



 国際社会はこれを見てどう思うだろう。傍から見たら魔王軍の到来としか思えない。



 

 

 この世にファンタジーが乗り込んできて、早三年、列強各国は、世界は大日本魔王帝国をどう見ているのだろうか?何故に西欧列強は疾く十字軍を結成し、この世界の癌を切除しないのであろうか?







 「そこが、難しいところだ、、、」



 合衆国大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトは大統領執務室で、一人悩んでいた。



 彼の悩みは、合衆国の対日姿勢についてである。現在、日米の関係はややこしくなっている。中国侵略については許せないところであるが、あっと言う間に方が付き、新政府樹立、兵力撤兵とやられると、振り上げようとした拳の行き場がなくなってしまった。



 その上、大日本帝国は、合衆国の安全保障の懸案である海軍を、自分から削減してさえいるのだ。これには拍子抜けと言う他はない。



 「侵攻するには、厄介ではあるが、脅威とはなり得ない」



 これが合衆国上層部の日本評だ。未だに信じがたい(信じたくない)死者の兵隊は確かに脅威と言える。ただし、それは海を渡ってこれるならの話である。



 「この度の、突然のソ連側侵略行為に対する、自衛戦闘では、海軍条約を結ぶ各国に、不安を与えてしまった。帝国は締結国にたいして誠意を見せる為、戦艦の削減を行う」



 大日本帝国は此方が何か言う前に、勝手に戦力を削減している。陸軍にしてもそうだ。合衆国の調査では、近代化を理由に、師団定数の削減を行っているのは確かなのである。



 自滅の道をひた走っている様にしか見えない。



 それが合衆国から見た、帝国陸海軍の姿だ。



 だが、この好機に圧力を加え、太平洋の覇権を、、、、と言うには、無理がある。海上戦力は圧倒的に有利になってきたが、陸上で殴りあうには、嫌すぎる。



 「お宅のお子さんを、死者の津波の真っただ中に、放り込んで良いですか?」



 そんな事聞けば、民主党は一晩で政権を追われるだろう。英国も良い顔はしない。



 日本は中国に軍事通行権を持っているのだ。至宝たるインドが、雪崩に襲われる事など、あの業突く張りどもが許すはずもない。陰に日向に嫌がらせを仕掛けて来るに間違いない。



 で、あるならば如何するか?



 今、「経済的な攻勢」と言う言葉が、合衆国上層の脳裏には過っている。



 幸いと言うか、能天気と言うか、日本は、支配下に置いた中国で、経済的な進出を、外国企業にフリーハンドを許している。



 「フロンティアたる中国に、妨害を受けずに進出できるなら、放って置いてもいいか?」



 大統領が思わず口に出した言葉は、合衆国経済人の偽らざる本音だ。



 「それに、、、それにだ、、あれは、、あれは、、余に魅力的過ぎる」



 悩みはまだある。近ごろ、日本帝国が、法外な値段で各国に売りつけている物についての悩みだ。



 「あれを、売らんと言われたら、、、間違いなく私は、次の選挙に落ちる、、、矢張り、、如何にか、アレの製法を、解析できるまで手出しは出来ないか、、、」



 ん?アレとは何だろうか?人種について、ごく一般的な、現代的思考を持ち合わせる大統領が、対日姿勢を改める事を考えざるを得ない程の輸出品とは?



 「考えても仕方ない、、、か、、今はドイツの方が問題でもある、、日本がドイツ側に行ったら大事だからな、、難しい、、うーむ、、どうしたものか、、、」



 考えは尽きない。敵に回すには厄介で、味方にするには、不気味で嫌悪すら覚える帝国の扱いに付いて、大統領は日々頭を悩ませている。



 「閣下、そろそろお時間です。会議室に移動をお願いします。」



 そんな大統領に、ノックの音と共に秘書官の声が聞こえた。



 「分かった、今行く」



 (考え事はこれまで、今は仕事だ、、)



 そう思うと、彼、合衆国大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトは、「己の足」で椅子より立ち上がり、責務を果たす為、歩き出した。



 「二度と歩けないと思っていたが、、、そこはあの化け物共に感謝しないとな、、」



 執務室を去る寸前。彼は忌まわしい帝国に少し感謝するのであった。

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