8 / 60
終らないパーティーを始めよう!
しおりを挟む
死霊術師と眷属たちの、ワクワク大収穫祭は牟田口廉也の手で、盧溝橋により始まった。
史実と違い、これは偶発的な戦闘ではない。
まだ正気の人間のいる政府はともかく、パーティーノーライフズはヤル気だ。
やけくそとも言う。主人たる死霊術師と、さらに上位の邪神は破壊と混乱、そして、際限のない喜劇の連鎖をお望みなのだ。
色々正気ではない始祖吸血鬼とは言え、元は恥も外聞も持っていた日本国民である。そんな彼ら彼女らは、せめて邪悪なる主人に伝えられた歴史をなぞり、予測不能の事態が起きないよう制御に気を払っていた。
であるので、初めくらいは、時間通りに、事が始まって欲しい。どうせ後々無茶苦茶になるのだから。
牟田口廉也は、その為に選ばれたのだ。
彼は上手くやった。主人たちから言い含められた事は、最大限に曲解し、散々楽しんで上でであるが、予定の通りには兵力の接触と言う奴を始めたのだ。
続発する謎の失踪事件を始まりとして。
盧溝橋事件は、演習中の、予期せぬ武力衝突として始まらなかった。
その前から、大都市北京では、骸転がる阿片窟、消えゆく子供と老人たち、殭屍目撃事件など、奇々怪々な事件が続発し、その全てに、日本軍の影がチラついていたからである。
北京の市民たちの怒りと恐怖は余りある。
弱腰の当局であるが、どうにもならなくなり、明らかに怪しい、一人の日本軍士官を捕縛しようとしたのが、盧溝橋事件の初まりである。
因みに、容疑は、引き連れた殭屍と酒盛りの末、大酩酊し、冥婚相手を探すと称して、葬儀に乱入、齢十六で死んだ少女の死骸を略奪したことであった。
捕まって当たり前である。火あぶりにした方が良い。
だが相手が不味い。この士官は、皇族の血を分け与えられたと有頂天になる、牟田口が無暗と増やした眷属の一人であった。
連行途中、迷信深い民衆により、銭剣と札で追い回された士官は逃走、盧溝橋近くで包囲され、後を追いかけてきた殭屍の群れと、一緒に大乱闘し、当局側に一方的に被害を与えてたのだ。
後は無茶苦茶である。怒りに燃える民衆は日本軍側に殺到し、何だかか分からない日本側はこれに発砲、無駄に侠気を出した現地軍は、逃げ惑う民衆を救わんと応射、事態は拡大し、そして衝突は始まった。
支那駐屯歩兵第1連隊、連隊長、牟田口廉也は、この報告にニンマリした。
ゾロリとした乱杭歯を、むき出しにしてである。
牟田口はとしては、奴さんがた、幾ら挑発しても、仕掛けてこないからジリジリしていた。
殺りたくてたまらない。出世や名誉の為ではない、殺りたいから殺るのだ。
瑞々しい生者の魂を踏みにじり、温かい血を貪れるのは最高である。
彼はどうやら、元ネタのゲームの方の吸血鬼に適正があった人物らしい。
忽ち、殺戮は開始された。
たかが一個連隊に何ができるとお思いだろう?
定命の軍隊ならば当然だ。武器弾薬に水に食料、医療品だって山ほど必要、そう長くは戦えない。
だが彼らは違った。
昼のうちは、芸者か?と思うほど、特製の日焼け止めをベットリと塗り、日傘をさして督戦する牟田口は大人しかった。
だが日が落ちると大ハッスル。
日が落ちたので、戦闘も一旦下火かと皆が考えた時分に、連隊基幹要員(当の昔に転生済み)を連れて切り込みを掛ける。驚いたのは、事情を知らない、定命の日本軍連隊員である。
「馬鹿か?」「なんで連隊長が切り込んでんの?」「誰か見た?見てない?」「何時の間に?死んだろあれ?」
戻ってきた。ゲハハ!と笑い、首をぶら下げ牟田口は戻ってきた。無論、一緒に突撃した要員も首をぶら下げて。
唖然とする定命の兵たちを、満面の笑みで見渡した牟田口は首を放り投げると、止める間もなく突撃を再開。7月7日だけで彼らは数百にわたる首級を上げていたのだ。
1937年7月7日、盧溝橋で始まった惨劇は、これから起こるであろう、日中の戦争の様相を良く表していると言える。
たかが数百の首を上げた所で、大勢は決しない?今は中世ではない?鎌倉時代に帰れ?
確かにそうだ。だが、今までの、そしてこれからも、人類が行うであろう戦争行為とは一つ違ったことがある。
心底楽しんでいる奴らが、参加してくるということだ。もう楽しくて、楽しくてたまらず、寝食忘れて(敵兵を食いながら)殺戮する悪鬼が、大量に流れ込んでくるのだ。
そして、そいつ等はそう簡単には滅びず、ゴキブリの様に増えて、犠牲者を殺すだけには飽き足らず、徹底的に辱め、己の先兵に仕立て上げる、奴隷使いでもある。
1937年。悪鬼が、自分たちを、支配すべき奴隷としてでは無く、広い牧場で草を食む、太った家畜と見ていることを、日本との闘いに覚悟を決めた蒋介石も、二虎競食の計を狙う毛沢東も気づいてはいない。
史実と違い、これは偶発的な戦闘ではない。
まだ正気の人間のいる政府はともかく、パーティーノーライフズはヤル気だ。
やけくそとも言う。主人たる死霊術師と、さらに上位の邪神は破壊と混乱、そして、際限のない喜劇の連鎖をお望みなのだ。
色々正気ではない始祖吸血鬼とは言え、元は恥も外聞も持っていた日本国民である。そんな彼ら彼女らは、せめて邪悪なる主人に伝えられた歴史をなぞり、予測不能の事態が起きないよう制御に気を払っていた。
であるので、初めくらいは、時間通りに、事が始まって欲しい。どうせ後々無茶苦茶になるのだから。
牟田口廉也は、その為に選ばれたのだ。
彼は上手くやった。主人たちから言い含められた事は、最大限に曲解し、散々楽しんで上でであるが、予定の通りには兵力の接触と言う奴を始めたのだ。
続発する謎の失踪事件を始まりとして。
盧溝橋事件は、演習中の、予期せぬ武力衝突として始まらなかった。
その前から、大都市北京では、骸転がる阿片窟、消えゆく子供と老人たち、殭屍目撃事件など、奇々怪々な事件が続発し、その全てに、日本軍の影がチラついていたからである。
北京の市民たちの怒りと恐怖は余りある。
弱腰の当局であるが、どうにもならなくなり、明らかに怪しい、一人の日本軍士官を捕縛しようとしたのが、盧溝橋事件の初まりである。
因みに、容疑は、引き連れた殭屍と酒盛りの末、大酩酊し、冥婚相手を探すと称して、葬儀に乱入、齢十六で死んだ少女の死骸を略奪したことであった。
捕まって当たり前である。火あぶりにした方が良い。
だが相手が不味い。この士官は、皇族の血を分け与えられたと有頂天になる、牟田口が無暗と増やした眷属の一人であった。
連行途中、迷信深い民衆により、銭剣と札で追い回された士官は逃走、盧溝橋近くで包囲され、後を追いかけてきた殭屍の群れと、一緒に大乱闘し、当局側に一方的に被害を与えてたのだ。
後は無茶苦茶である。怒りに燃える民衆は日本軍側に殺到し、何だかか分からない日本側はこれに発砲、無駄に侠気を出した現地軍は、逃げ惑う民衆を救わんと応射、事態は拡大し、そして衝突は始まった。
支那駐屯歩兵第1連隊、連隊長、牟田口廉也は、この報告にニンマリした。
ゾロリとした乱杭歯を、むき出しにしてである。
牟田口はとしては、奴さんがた、幾ら挑発しても、仕掛けてこないからジリジリしていた。
殺りたくてたまらない。出世や名誉の為ではない、殺りたいから殺るのだ。
瑞々しい生者の魂を踏みにじり、温かい血を貪れるのは最高である。
彼はどうやら、元ネタのゲームの方の吸血鬼に適正があった人物らしい。
忽ち、殺戮は開始された。
たかが一個連隊に何ができるとお思いだろう?
定命の軍隊ならば当然だ。武器弾薬に水に食料、医療品だって山ほど必要、そう長くは戦えない。
だが彼らは違った。
昼のうちは、芸者か?と思うほど、特製の日焼け止めをベットリと塗り、日傘をさして督戦する牟田口は大人しかった。
だが日が落ちると大ハッスル。
日が落ちたので、戦闘も一旦下火かと皆が考えた時分に、連隊基幹要員(当の昔に転生済み)を連れて切り込みを掛ける。驚いたのは、事情を知らない、定命の日本軍連隊員である。
「馬鹿か?」「なんで連隊長が切り込んでんの?」「誰か見た?見てない?」「何時の間に?死んだろあれ?」
戻ってきた。ゲハハ!と笑い、首をぶら下げ牟田口は戻ってきた。無論、一緒に突撃した要員も首をぶら下げて。
唖然とする定命の兵たちを、満面の笑みで見渡した牟田口は首を放り投げると、止める間もなく突撃を再開。7月7日だけで彼らは数百にわたる首級を上げていたのだ。
1937年7月7日、盧溝橋で始まった惨劇は、これから起こるであろう、日中の戦争の様相を良く表していると言える。
たかが数百の首を上げた所で、大勢は決しない?今は中世ではない?鎌倉時代に帰れ?
確かにそうだ。だが、今までの、そしてこれからも、人類が行うであろう戦争行為とは一つ違ったことがある。
心底楽しんでいる奴らが、参加してくるということだ。もう楽しくて、楽しくてたまらず、寝食忘れて(敵兵を食いながら)殺戮する悪鬼が、大量に流れ込んでくるのだ。
そして、そいつ等はそう簡単には滅びず、ゴキブリの様に増えて、犠牲者を殺すだけには飽き足らず、徹底的に辱め、己の先兵に仕立て上げる、奴隷使いでもある。
1937年。悪鬼が、自分たちを、支配すべき奴隷としてでは無く、広い牧場で草を食む、太った家畜と見ていることを、日本との闘いに覚悟を決めた蒋介石も、二虎競食の計を狙う毛沢東も気づいてはいない。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる