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普段大人しい人ほど危ない

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 百鬼夜行の大行進となっている、大日本帝国の中枢であるが、何時の間に、この様な事態になってしまったのであろうか?



 皇居、吹上御苑にある森。その地下に広がる納骨堂にて、やらかした当人は首を捻っていた。



 当然の事であるが、この納骨堂、カタコンベと言うべき広大な地下空間は、死霊術師永山の根城である。



 比類なき歪んだ魔力を持ち合わせる魔人にとって。空間を捻じ曲げるなど容易いこと、、、、と言う設定で用意されたクラフト機能で作ったのがこの場所である。



 設定に妙に拘る癖のある永山は、快適な空間アセットなど課金していない、DLCでは死霊術師のロールプレイセットに重課金にしている。今になって後悔しているが、、、



 水道がない!、風呂がない!、なんか周りが黴臭く、五分に一回すすり泣く声がする!、一般人が一たび足を踏み入れれば、発狂確実の、禍々しい空間であるが、永山にとっては不便なだけの空間である。



 そのせいか、永山は、日常の生活では帝国ホテルで暮らしている。



 その永山が、態々、QOLの低い根城で首を捻っているのは訳がある。いくら住みにくくとも根城は根城、永山が企てる邪悪な計画に必要な物は揃っているからだ。



 ここにいる理由は必要にかられて、では首を捻っている訳は?



 なぜかノリノリの大日本帝国の上層部の所業についてである。なんかおかしいのだ、自分の死霊術はゲーム内とは随分と違う効果を発揮している筈だ。



 それが何故に、ノリの良い悪鬼の群れを、作り出してしまったのであろうか?



 永山は、首を捻りながら過去を振り返り、その理由を思い返しているのだ。



 邪悪なる魔法使いである、自分は、この地に生れ落ちてより、それはもう酷いことをしてきた。

 

 東北の零細自作農に生まれた自分は、虐待じみた扱いをしてきた親を呪い殺し、引き取って育ててくれた、祖母の土地を、奪おうとしてきた村の有力者は、全て動く死体に変えている。



 そして、村を恐怖で支配し、奪い取った地主の資産でもって上京したのだ。

 

 先年、祖母が亡くなり、自分を縛る良心の鎖がなくなった事を感じての上京だった。



 「優しかった祖母ちゃん、、、」



 老衰にて死んだ祖母は、自分の魔術により無事、吸血鬼に魔界転生し、女領主として、故郷の村に君臨している。それを思い出すと、永山はホロリとした。



 「祖母ちゃん、ムチムチ女吸血鬼になっても、煮しめとか出してくれたなぁ、あの体型で囲炉裏の傍で、もそもそしてるのはどうかと思う。着物が合わないからって、ドテラで過ごすのもなんかなぁ」



 「上京する時も見送ってくれたっけ、浮いてたなぁ。白髪ダイナマイトバディ、ズーズー弁ミストレス、、、、」



 涙ながら孫を送り出す祖母の顔を思い出し、更にシンミリとする永山だった。



 「だからおかしい。祖母ちゃんは殆ど性格変わらなかった、若返っても人の血を啜る魔物になっても、優しい祖母ちゃんだったんだ、、、あの人らなんなん?」



 反乱軍の首をねじり切る陛下、数十人を夫婦で平らげる侍従長、ナイトストーカーと化した達磨さん、、、皆ノリノリ。



 なんか皆、日ごろのストレスから解放されてスッキリした顔をしていた。そこに化け物に変えられた嫌悪感とか無いのだ。



 陛下なんか、嬉々として死霊術の腐敗に染められ、生態系の歪んだ皇居の学術調査をされている。あと、気に食わないのを誘い出して眷属に変えている。たしか一番初めに狙われたのは近衛連隊だった。



 「やっと心から信頼できる、、有難う」



 「陛下、、、、、苦労されていたのですね」



 恨み事を言われるかと思えば、礼を言われた事を思い出し永山は同情する他はなかった。



 帝国顧問魔術師。胡散臭い事この上ない肩書であるが、そのような肩書で正式に永山は召し抱えられている。



 裏から心を操り、恐怖と魔術で支配するつもりがこれである。



 「歪みすぎだろ大日本帝国!ホントに近代国家か?」



 呆れる。邪悪で冷酷な自分から見ても呆れる。



 自分が邪神に授けられた力の元ネタであるゲーム「ダークエイジ オブ フォールン エンパイア」の世界の帝国の方がまだましだ。



 あれは崩れ落ちつつある帝国を守る為、力の限りを尽くす人々が多くいた、皇帝も、元老院議員も、親衛隊も、なんとか世界を救おうと奮闘していたのだ。それを滅茶苦茶にするロールプレイをしたのは自分だが、、、



 「君、ホントに我が帝国が近代国家だと思ってたのかね?お目出たいねぇ。この国は陛下と軍事で持たしているだけの張りぼてだよ?支配?不死者の帝国?無理無理!そんなカッコの良い国ではない、死体蠢くど田舎村が精々だ」



 達磨さんもも辛辣。なんかカッコいい感じの、こう魔王軍!とか夜の貴族!とかが支配する専制帝国にこの国を変えようとしていた自分が馬鹿のようだ。



 「どうすべぇ」



 永山は捻っていた首を元に戻し呟いた。皆ノリが良かった事の訳に気付いたのだ。



 「あの人たち、僕がいるから責任を投げるつもりなんだ」



 支配されている自分は、もう関係ありません、支配者さん好きにやって下さい。化け物になったんだから、自分は自由でーす。そう言いたいのであろう。だからスッキリした顔をしていたのだ。



 「君、超常の魔法使いなんだろ?名乗ってたよね?覚えているよ、朕の寝所を襲った時、随分と大仰な演技をしていたの。だから後は宜しく!」



 恥ずかしい!あんなロールプレイしなければ良かった!社会経験の少ないのがモロにでた!永山は羞恥のあまり頭を抱えた。



 「汚い!大人汚い!国家運営なんて出来ない!責任とか嫌!僕、一億国民をどうとか考えたくない!」



 仄暗き納骨堂に邪悪な死霊術師の悲鳴が木霊する。



 果たして、大日本帝国はどのような暗黒の道を走っていくのだろうか?

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