世界は兄弟!皆死体!ネクロ大戦大日本

ボンジャー

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死の舞踏

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 死だ、死が世界を支配している。



 津波の様にやってくる死の群れは、ここ北アメリカ大陸では日常となっていた。



 満月に照らされ、吠えるキャリバーと降り注ぐ砲弾。打ち砕かれ、細切れになり、最早原型を留めないほどに滅茶苦茶になった体を天高く舞い上げながら群れはやってくる。



 最後の希望であった、核兵器が巻き起こした放射能混じりの粉塵が、辺りに舞い散り、ガスマスクと厚い防護服を身に着け、銃身が焼け爛れようと撃ち続ける兵士たちに降りかかる。



 1945年の最後の年、国土を焼きながら敗走する合衆国軍は、明白なる天命に約束された大地を、只管に汚しながら、抵抗を続けている。



 「そこまでして戦う必要はあるのだろうか?」



 「負けを認めたらどうであろうか?」



 アメリカ合衆国、そして世界全体で戦い続ける連合国に言わせれば、



 「戦っている相手を見てから言えボケ!」



 となる。



 見るが良い、迫りくる群れの姿を。



 瘦せ衰えた者、ブクブクに膨らんでガスをまき散らす者、無残に擦り切れた軍服の者、いや軍服ですらない者も交じっている。



 どう見ても民間人だ。寸鉄帯びない民間人達が、ヨロヨロと足を引きずりながら、長大な塹壕に迫ってきている。



 迫りくる兵士たち?の装備もおかしい。錆びだらけの小火器、そこいらから拾ってきたとしか思えない棍棒、竹やりにピッチフォーク……



 ピッチフォーク?竹やりなんて物を装備しているのだから、相手は日本軍だろう?



 ああ違う。黄色も白も黒もいる。



 ボロボロの旗が見える、日章旗、青天白日旗、槌と鎌、ユニオンジャック、そして星条旗。



 御旗の元に続く軍勢は、痛ましく悍ましい姿をしている。



 ポッカリと空いた二つの穴だけが残る眼窩には、生きとし生ける者を憎むがごとき青い炎が燃え、襤褸切れの間から覗く両の手は白い骨と化していた。



 「地獄の蓋が開いた」



 国家と国民の意思の元、戦場に送り込まれ、死んでいった者たちが、生ある者を道づれにせんと迫ってきている。



 恐慌に駆られそうになる合衆国の男たち、、、、違った、子供も女も老人もいるのだから国民たちと言うのが正解だろう。指揮官たちが行う必死の鼓舞に応え射撃を行う彼ら彼女らの耳に嘶きが聞こえた。



 嘶きだ。1945年の戦場からは既に追い出された筈の騎兵が迫ってきている。



 死の群れに純粋な機械力はない。



 骨と化すか腐った肉のこびり付く二本の足と、彼らと同じく、生命活動を終えた筈の四足動物、それに、悍ましい何かが、その軍隊を構成している。



 嘶きは生者の精神を砕くが如く、砲声響く戦場に木霊し。土煙と共に大地を覆う騎兵の群れは現れた。



 大地を駆けるその四つの足に肉はなく、その眼窩もまた主人たちと同じく青い炎が燃えている。



 乗っている者も当然にして骨と腐肉の集合体だ。



 振りかざすは軍刀にサーベル、抗日刀。



 錆びと赤黒くなった血に塗れた冷たい武器を手に騎兵たちは突撃する。



 鉄条網?地雷?十字射撃?なんの意味があるのだ?



 彼らを止めたければ、重砲で吹き飛ばすか、250キロ爆弾でも投下する他はない。現に幾つかのバンカーは死の群れに飲み込まれ、最後の抵抗と航空爆弾で自爆している。



 天晴な物だ。国民の命を耐久消耗品と勘違いしている、ファシスト諸国家や社会主義国ではなく、民主主義国のアメリカで自爆してまで戦う意思を示しているのだから。



 ともあれ大勢は決した。突撃してきた騎兵の躯が全ての地雷と鉄条網を破壊し、開けた穴から死の群れは続々と侵入しつつある。



 彼らに疲れと言う物はない。第一線を抜けばそのまま次の塹壕線に突き進むだけなのだ。



 遂に限界に達した合衆国の人々は撤退を始める。撤退と言えるほど、規律は宜しくないが……



 崩壊、もしくは壊乱の方が正しかろう。



 踏みとどまるとか逆襲に転じるだとか、弾性防御に努めるだとか言う、高度な事を出来る人材は、当の昔に死に、今まさに同じ国民である筈の勇士たちに襲い掛かっている。



 逃げ遅れたのであろう。這いつくばりながら必死の形相を見せる兵士(十代中頃だろう)の背中に錆びだらけの銃剣が突き立てられる。



 組みつかれ喘ぐ兵士が、冷たい手で絞殺され、腐肉交じりの蹄が走る兵士を踏みつぶす。



 悲鳴が辺りに満ち、殺戮は続く、そして陽気な笑い声も……



 笑い声だ。笑い声なのだ。



 ゲタゲタと、さも嬉しそうに死者たちは笑っている。どこから声が出ているのだろうか?



 どうでも良いことか……兎に角、彼らは歓喜に満ちそして……

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