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第三十三話 キラーピッグオークの誕生

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 裸かが見たいわ!そのオークの裸を見せて頂戴!



 どもども皆さん。平和なオーク村を襲撃した残虐非道のエルフ娘です。村にいたオークは四十人程、強くなければ生き残れない北の大地に適応してますので、皆さんお元気、これは良いお婿さんお嫁さんになって、貰えそうです。



 開始早々、襲撃現場からの中継を見せられ、皆さまには唐突では有るでしょうが、この龍頭大地に置いて少数派であるエルフには、早急な数の確保が必要とされています関係上、この様な襲撃と相成っております。



 

 





 訳をお話しましょう。あの日、世界樹の門を通り、霧の森に帰還を果たした第一号は、北の大地に送りだした五男猛き狼でした。



 喜びの余り速攻で抱き付いた私を片手で剥がしながら我が息子は語りました。その言葉は根雪の様に重く、百年という短い歳月で有りながら苦労を重ねた男の物でした。



 「支援を頼みたい」



 名前に会いたいしく、狼の毛皮を身に纏った五男は、私に遅れて駆け付けて来たお兄さまに向けて跪いて頼むのです。彼の後から門を通り現れた者達を見て、北の大地が如何に厳しく、そして其処に送り出した私の浅はかさを思い知らされたのでした。



 



 「美味いなこれ」「父ちゃんお代わり!」「久しぶりの味だ」「この赤いのホントに食えるのか?」



 山と積まれた森の幸に貪りつく者達、エルフが多数派ですがオークもチラホラ、皆大きな体では有りますがその体は引き締まって、、、いえ、少し痩せて見える程でした。



 「母を恨んではいない、だが家族を飢えさせるのは辛いのだ。分かって欲しい」



 一夜明け一休みした息子は、急遽開かれた歓迎の宴の席で、お酌している私に言いました。



 「北は辛い所だ。何しろ食える物が少ない。特に冬はな毎日毎日少ない肉と木の皮ばかり、俺たちは良い、エルフは食わんでも死にはしない。でも家族は違う。オークは大食漢が多い、其れを少しの食で養うのは難しい」



 今年仕込みました黒山葡萄酒を大杯で干した五男は酔いも回って来たのか、幾分か安心した様でこれまでの苦労話をしてくれました。



 たどり着いた樹氷の都は私から聞いた通り完全に雪に埋もれていたそうです。都の中心、氷付いた世界樹の子の根元に新たな種を植えた彼らは、都を根城に新しい生活を始めましたが、其処に有ったのは苦難の連続で有ったと言います。



 五男の嫁、クロちゃん事黒鉄の牙は、一族を増やすのに狙い目は、追放者達で有ると教えてくれました。追放者、オークたちは、その部族の中でも取り分け醜い者や弱い者を雪原に追放し部族の少ない資源を節約する伝統があるとの事でした。



 厳しいですね、酷いとお思いの方もいるでしょう。でもねぇそこは仕方がない部分もあるんですよ。地球世界の極北に生きる先住民の皆さまにも、弱った者を捨てる様な伝統はあったと言いますし、醜い者も捨てるのは如何なの?と私も思いますがそれが北で生きる者の定めと言う奴なんでしょう。



 クロちゃんはその者達を新エルフにして新オークの拡大にご協力頂く事を夫に進言し、北エルフ、自分たちで雪エルフと名乗っている氏族は新たな歩みを始めたのだそうです。



 所でオークの醜いの基準昔お話しましたよね?オークの証である緑の肌の色が薄く、牙が短い者たちです。部族の追放者達はそんな特徴を多く持つものが多いのですが、それエルフ的そして人間さん的感覚からすると、美人もしくは美男子が多いんですよ。



 あれですね北で生きるのに顔の良さなんて基準にならないんですよ。寧ろ邪魔、オークはエルフ+髭達磨÷二+極地生存能力で作られた訳ですから、エルフ的特徴が出るのはマイナスにしかならないのでしょう。



 髭達磨的特徴は悔しいですがプラス、筋肉達磨に成るのですから、背が少し低くなる位、オーク遺伝子で補えるマイナス面なんでしょう。



 親たちに連れられ、森を訪れたハーフエルフにしてハーフオークの子たちを見ますに、弱いオークの特徴を次いで居る事が見て取れます。肌の色は赤銅より薄く寧ろピンク、顔はオークに多いワイルド系と違い垂れ目で穏やか、筋肉質と言うより脂肪が乗って触り心地良さそうにピカピカしてます。



 勿論、野生エルフの血が入ってますから、その内側には筋肉の鎧を纏っているんですが、なんか見た事ある様な?、、、、、ああ!既視感の正体がわかった!養豚だ!



 人間で有った時、陸奥旅行した時見た巨大豚そっくり!これは言わないでおこう。驚きましたね、森で暮らしていた頃にできた黒ちゃんの子はそんなでも無かったのですが、北の大地で暮らしているとハーフの子は面白い進化を遂げる物です。



 食欲も凄い、親であるオークに負けない位食べる食べる、ハーフエルフも純エルフと同じく食事をそうとらないでも良いはずなんですが、食べるなぁ。これでは北では辛い筈ですね。

 

 猛き狼が支援を要請するのも頷けます。この食欲を支えるのは大変だったでしょう。



 「分かってくれたか?もうこいつ等食うわ食うわで、大雪原の狼共も食いつくす所だったんだぞ」



 たけちゃん苦労したんですね。お兄さまに似た背中が煤けて見えます。肩を落とした所もそっくり。



 「子共とはそんな物だ。俺の苦労がお前も一人前の大人のなって分かっただろう?」



 横で飲んでるお兄さまが、お前も同志になったなと言わんばかりに慰めています。そうですねぇ、子供の頃はこの子もやんちゃでしたから苦労しましたもんねぇ。



 拾い食いしてはお腹壊してましたねぇ、たけちゃん、、、火皮猿の初のエルフボスになったのもこの子でしたよ。良い思い出です。

 

 「父よ!俺も今なら貴方の苦労が分かる!済まなかった!」



 「息子よ!大きくなったな!」



 がっしりと抱き合う親子、、、酔い過ぎました?キャラ壊れてますよ?もっとこう二人とも重々しい人物でしたよね?



 私置いてけぼり、、、うん?抱き合い熱い涙を交わす二人の間、キラリと冷たい光を放つ物が見えます。たけちゃんの胸飾りです。其処にあったのは、、、、



 「あああああ!それたけちゃん!それそれどこで!」



 「どうした母?これが気になるのか?都に幾らでもあるぞ、綺麗な物だから皆付けているのだが?」



 へ?幾らでもある?マジで?たけちゃん!詳しく聞かせて!



 「怖い!顔が怖い!食いついて来るな!それとタケちゃん言うな!」



 「食いつきもします!それははねぇ、、、、」





 

 後日、タケちゃんから聞き取りをした私は、止める皆を蹴散らして北の大地を踏みしめました。目的はタケちゃんが幾らでも有ると言った物。



 たけちゃんが持っていた物は、その正体は、エルフ帝国が対髭達磨用決戦兵器として生産し、配備まじかで失われた物なんですから。



 オーク君達、、、貴方たち悪いんですがいなくなってもらえますか?北の大地はエルフと新オークの物にならなきゃ困るんですよ?



 悪い顔してますよ私、これが見つかるならそんな顔もします。予定は繰り上げです、人間さん世界を滅ぼす前にオーク世界を先ずは滅ぼすと致しましょう。

 
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