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第三十二話 オークと言う生き方

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 俺たちオークの生き方は簡単だ。戦って勝つそれだけだ。



 男も女もガキも年寄りもそうやって大昔から生きて来た。酋長の言う事にゃ、父祖が住んでいた金の平原からこの地来てからずっとそうだ。



 戦いという奴はに何も相手の頭に剣を振り下ろす事だけを言って訳じゃねぇ、、、、それが一番おもしれぇが。



 北で生きると言う事ぁ、全てが戦いだ。スクねぇ実入りしかだしやしねぇ畑を耕すのも、餓えた熊とどっちが今日の晩飯に成るか決めるのも戦いと言う奴だ。



 負けるのは恥じゃあねぇ、生きてる限り何度だって挑めるんだ、最後に勝てれば良い。だが諦めるのはご法度だ。



 一度挑んだ戦いは勝てるまでやらなきゃなんねぇ。其れで死んだら胸を張って金の平原に帰れるってもんだ。



 オークと生まれたからにゃ、戦いからは逃げられねぇ。家から三歩出たら気に入らなねぇ野郎と鉢合わせして、殺しあう事だってめずらしかぁねぇ。



 喧嘩は良いぜ、特に大きな奴は良い。チビどもの土地に喧嘩を売りに行くのも、ヒョロヒョロ野郎の土地に略奪に行くのも最高だった。



 あいつ等チョット小突いただけで死にやがる癖に数ばかりいやがるから喧嘩相手には不自由しねぇ。



 だがなぁ、今じゃどうだ?少し前ならクソみてぇなこの土地でも略奪品と喧嘩の加勢で良い暮らしが出来てたってのに、今じゃそれもできやしねぇ。



 近頃チビどもは穴倉に、ヒョロヒョロ野郎、、、、、言っててめんどくせぇな、人間だ人間!人間どもはじょーへきとか言うのに閉じこもってでてきやしねぇ。



 死んだ爺が言ってたが昔は良かったそうだ。なんていったか?ああそうだエルフとか言うのを血眼になって探して、大陸中に村やら町があった。



 戦の種もそこら中だった。家のクソ親父、去年百四十で死んだあの野郎がケツの青かった時分には、「でーねーらん」とか言うので随分と儲けたらしいが今じゃ時化た村を襲うのが精々だ。



 詰まんねぇ話だ。だからこうやって俺たちゃぁ身内同士で喧嘩してる。此奴は面白れぇが食い扶持は増える訳じゃぁねぇ。



 



 



 「どいつもこいつ飯に困ってるんだ。奪えた所で大したもんにはならねぇはなぁ。あれだよ俺らはも~少しこう、ケンセツテキな事をする必要があるんじゃねぇか?」



 村の集会場、、そう言うと聞こえは良いが、ただの飲んだくれの溜まり場で、俺は俺と同じく腐ってやがる連中に言ってやった。



 何だ傷鼻?字も読めねぇのに学が有るなだと?よーし!その喧嘩買った!表出やがれ!テメェの頭の骨で盃拵えてやろうじゃねぇか!



 あん?外が騒がしいな?おう、テメェどうしたそんなに急いで?



 カチコミだ?この村にか?誰が?山向こうの血まみれ団の奴らか?違う?じゃああれか走り狼か?あいつ等、用もねぇのに狼に乗ってそこら中走り回る馬鹿どもだろ?人間をテメェらの狼の餌にするだけじゃ飽き足らずに遂に俺らまで餌にするつもりだろ?



 違う?じゃあなんだよ!はっきりしやがれ!それでもオークか!自分で確かめろ?使えねぇ野郎だ。よぉ!野郎ども!喧嘩の時間だ!





 



 「チクショウ!離しやがれ!何だテメェら!」



 卑怯な奴らだ飛び道具使いやがった。しかも何時の間にか村に入り込んでやがった連中が妙ちくりんな技を使ってあっという間に男どもを伸しちまった。



 情けねぇ野郎どもだ。俺みたいに少しはていこーって物をしろよ!



 「あん?何だよその目は?俺を変な目で見るんじゃねぇ!」



 なんだよその目!スケベったらしい目しやがって!テメェら何考えてやがる!



 「ハイハイ、どうもご苦労さまです。戦果は如何?おや?随分と生きの良いのを捕まえましたね」



 村を襲った連中、顔中入れ墨だらけの赤い肌の奴らの中から、一人の女が出てきてこっちを見て来た。なんだよ見せ者じゃあねぇ!殺すなら殺せ!



 「うーん五点ですね。そこは悔しそうにクッ殺せ!と言いましょうよ?その方が、私興奮します」



 なに言ってんだこのアマ?頭確かか?俺に興奮?馬鹿じゃねぇの、俺の顔を見ろよ!この短い牙、薄い色、なんで俺が男どもに混じって喧嘩してると思ってるんだ。嫁の貰い手が無いからだよ!何が盾の乙女だ!好きで乙女でいるわけじゃねぇ!俺はもう三十四だ!



 「あら俯いてプルプルしてます?何かトラウマ刺激しちゃいました?ゴメ~ンね。可愛い顔が台無しですからそんなに怖い顔しないの、ね?」



 殺す!馬鹿にしやがってこのアマ!何が可愛いだ! 



 オークをこんな縄一つで捕まえられると思うな!殺してやる!そう思った俺は目の前にアマに飛びかかった。



 「あら怖い?でも駄目。鬼さん此方、手の鳴る方へ」



 ちょこまか動くな!何だ此奴捕まえらんねぇ!この、、、、!



 「はい、お仕舞い!」



 女の体が夏場に出くわす省の悪い腐り蛇みたいにうねる、そう見えた。直ぐに俺の頭に一撃が飛んで来る。避けきれ、、、、、、



 「ホントに意気の良い事ですねぇ。誰かこの子が欲しい子はいますか?おおぅ意外といますね。では丁重にお運びしてください。ではね、次にお会いする頃には貴方も森の、、、、雪の御仲間です」



 なに言ってんだ、、、この糞アマ、、、駄目だ、、なんにも考えられねぇ、、、、



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