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第二十三話 聖なる都の熱い夜

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 娘はああ言いましたが、面白い事とは何じゃらほい?自分の目で見てこいとの事なので「疲れたとので一休みしてから合流する」とお言いの娘に見送られ、私はサメの巣亭の扉を開けました。



 閉めました、、、、少しお待ちを。今目の前を、悲鳴を上げて逃げる衛兵隊の隊員が、四つん這いで高速移動する人間さんらしきナマモノの集団に追い回されているのが見えた様な気がしましたので。娘よあれは何ですか?



 「何ですかも何も、母さんの希望通りの暴徒だけど?衛兵隊も彼らをもう止められない、町のあちこちで追いかけられてる」



 暴徒は良いのですよ、衛兵隊が壊滅寸前なのもグットです。ですが、あれは想定した暴徒とはチョット違うかなーとお母さん思うの。



 「何が問題?帝都は暴徒の手に落ちたも同然。腰抜けの第一皇子派や貴族は皆、宮殿に立てこもって出てこない。後は母さんの行けの命令さえあれば、宮殿は落ちる」



 そうですか、そんな事になってるのですか、、、、えー!其処まで行ってるの?いい具合に市街戦にでもなってるかと思ってたのですが、思いのほか偉い方々根性がないのですね。



 「さっきも言ったけど、母さんは人間を甘く見過ぎ、それだけ不満も溜まっていた。皆いい感じに野生を解放して暴れ狂ってる。あれは追い詰められたお化けネズミと同じ」



 さいですか。そこまで不満がねぇ。でもなぁ。今見たあれは完全に獣でしたよ?供給した血酒や月光草の量だけであれだけ野生に帰ります?



 「そこが面白い所。まあ自分の目で見てきて」



 押さないで下さい!私は怪我人ですよ!



 「良いから行ってこい!此処まで来たなら責任を取って、家の宿六を王に押し上げろ!そうでもしないと彼奴は働かない!」



 蹴りだされました。バタンと扉は閉められて戻る所が無くなる私。あのーそこは私のお店なんですが?返事が有りません、締め出されてしましました。



 しょうがないですね。家なき子は外に出て混乱の帝都に居場所を求める事にしましょう。とうっ!



 壁蹴りジャンプで屋根の上。エルフの身体能力でしたら簡単簡単。道は暴徒とかち合いそうですから、屋根から屋根へ密集した帝都の街並みを走り抜けるとしましょう。



 随分と寝て様で、今は中点に輝くお月様が綺麗なお時間となってます。所で、あのお月様が大いなる方が邪龍を捕まえる際に混沌領域に開けた大穴と言ったら皆さん驚きますか?



 あそこから神様は腕を突っ込み可哀そうな邪龍君をガシッと捕まえたのです。ですので、お月様の光は太陽光の反射ではなく、大いなる混沌からの頓智機エネルギーな訳なのです。月光草を代表とします、面白おかしい効果を持つ草花はその御かげで、妙ちくりんなパワーを蓄えているのですよ。



 これは人間さんも同じ、月の光が届く所では妙に興奮したり、なーんか不思議な感情に囚われたりしています。これは人間さんが月を正確に観測し、唯の岩の塊と思い込むまで続くでしょうね。



 そんな月光を背にワイルドな空気が流れる帝都を行くと、私の目に、同じく帝都の屋根を飛び回る影が幾つも見えます。私の子供たちが走り回っている所です。



 お待ちなさい、何やら愉快そうな我が子よ。



 「どったの母ちゃん」 「今面白い所だから邪魔しないで」「人間、面白い、何時もの澄ました顔が嘘みたい」



 この子たちは、、、遊びじゃないのですよ!今夜はエルフが帝都を支配できるかどうかの瀬戸際、それにですね、面白愉快な人間さんが暴れているのです、怪我してしまうかもしれないじゃないですか!



 「母ちゃんは心配性だ。俺らそこまで間抜けじゃない」「そうだ」「そうだ」



 これだから若い子は無邪気と言うか無謀と言うか。この子らは十二を頭に三人組で活動している男三人なんですが、まだまだ子供。忠犬村で腕白に育ったものか、村の子供の様に私を母ちゃんと呼ぶのです。



 今回の作戦は人手不足な者で子供も投入したのですが、上の子らと違いましてどうにも遊び気分が抜けないのが問題ですね。ハーフエルフなのも問題なんでしょうか?矢張り純エルフと違い、ハーフエルフは人間さん成分が多めな物か冷静に事を運ぶのは嫌いなようです。



 お黙りなさい馬鹿息子共!母ちゃんは貴方たちが心配で言ってるのです。いかなハーフエルフと言えども流れ矢が急所に当たれば死にます。百年も生きないでこんな所で死ぬ親不孝は許しません!



 「はーい」「へーい、、、クソ婆」「馬鹿!何でもない、今の無し!」



 婆と言ったのはこの口か!この口ですか!横に伸ばしてやる!スラムで悪い言葉ばかり覚えていやがりましてこのお子さま軍団は!



 「いふぁい!止めへ!おかあはま!せふぁいいいひ、うふくしいおはあさま」



 それで良し。こんど生いったら、お姉さんたちに下水迷宮最下層の旅に連れて行って貰いますからね!



 それで、貴方たちは何をしていたのですか?ただ遊んでいたのではないのでしょう?



 「義兄ちゃんがもっと面白くしようと言ったんだそれで」「小鬼キノコに俺たちの血を混ぜて」「共同水道に投げ込んでる」



 ほう。その他には?



 「火事を消そうとするから、火の中にも投げ込んでる」「煙を吸ってバタンキュー」「ガウガウにゃおーん」



 ほうほう、それで?



 「衛兵が切ろうと殴ろうとみーんな無視!」「喉に噛みつく!足に噛みつく!」「何かその時、凄い声が俺たちだけに聞こえた。たしか、これぞ花戦争!とか叫んでた」



 「そうそう、色んなとこから聞こえる。女の様な男の様な」「年寄り?若者?獣?人間?エルフ?」「むーちょむーちょぐらしあす、しぇきなべいべぇ、この町はてわんてぺくとする!とか言ってる」



 アステカあぁ!まだいらしてたのですか。近頃何も言って来ないので、てっきりお帰りになったとばかり思ってましたが、お祭り好きな神々がそう簡単に帰る訳ないか。



 それに婿殿です。此処来てあかん方向に覚醒してしまったのでしょうか?一歩引いた所で、崩壊する国を見てたと思ってたのですが、祭りの熱は厭世的な彼でさえ変えてしまう物が有るのかもしれません。



 ほどほどにしておきなさい子供達。あんまり付き合ってるとジャガーになってしまいますよ。帝都を灰に変えたい訳ではないのですからね。



 「「「はーい」」」



 それで彼はいずこに?



 「あっち」「酒坊主もいっしょにいるよ」「火吹き坊主にレベルアップしてる」



 何それ?あっちと言うと帝都の中央、大噴水のある場所ですね。母ちゃんは行きますが、貴方たちは適当な所で切り上げて入り江に戻りなさい。夜更かしし過ぎると背が伸びませんよ、お姉ちゃんよりチビは嫌でしょう?



 行きましょうかね。後ろの方で、今度はキノコ三倍でやってみようとか聞こえますが、良いでしょう。今は婿殿です。









 「であるからして、神はお言いになった!兄弟よ姉妹よ愛し合いなさい!許しあいなさい!我らは一つなのです!本来はエルフも長髭もオークも神の元にあっては皆兄弟!我らは神の元に一つにならなければいけない!」



 帝都の中心にある大噴水は、二十万都市である帝都を支える、重要なインフラの一つです。エルフ帝国時代から稼働する浄水機能は流石の髭達磨たちも破壊せず、此処から上水道を通して未だ帝都を潤し、また、その偉容をもって帝都に人間に安らぎを与えているのですが、、、、



 スゲー事になってますね。良い事いってる破戒僧の周りで、皆さん噴水池に顔を突っ込みガブガブやってます。噴水池のそこかしこにワイン樽や小鬼キノコがぶちまけられ、赤く染まった池には恍状態の人間さんがプーカプーカ。



 破戒僧の説教に答える声も、ウガーとかギャオーンとか人に言葉になってません。一応聞いてはいるようですが、あれは別の物が見えてる顔です。





 「おお!奥方!御出でになられましたか!ご覧ください!この敬虔なる信徒たちを、貴賤の別なく、全てのに人間が集っておりますぞ!拙僧も感動に打ち震えております。人は神の大いなる愛の元此処まで真なる信仰に目覚める事ができるのです!」



 真なる野生の間違いじゃないかしらん?私が気絶してる間、貴方一体なにをしたんですか?



 「拙僧は何も。これは神のご意思!貴方様が倒れられて直ぐに会場に罰当たりな衛兵隊がなだれ込んで来ましてな、市民を打擲しはじめたのです。拙僧も聖職者の端くれ、争いを止めんと大乱闘の最中に飛び込んだのですが」



 そこは流石に坊主ですね。勇気ある行い、聖職の鑑と言えます。ですが、それでこんな事態にはならないでしょう。それに、何やってるんですか!貴方の役割は煽動でしょう?止めてどうする!更に言えば止めたのにこの様!まあ結果的に大暴動になったから良いですが。



 「いやぁ失敬、失敬。その場の乗りでつい」



 その場の乗りで行動するなこの河童頭!



 「お恥ずかしい限りで。ですが、その時です。殴り倒され、地に伏した拙僧に神の声が聞こえたのです!民を導き、偽りの信仰を打破せよと!ピラミッドを建立せよとか、聞こえた気もするのですが、それは気のせいでしょう。兎も角!その御声が聞こえた私は勇気千倍!市民を率いて悪しき支配に敢然と立ち向かいました!」



 そうですか。どう考えてもその声、別の神様の声ですよ。試しにまた聞いてみましょうか?神様!この河童こんな事言ってますが良いの!



 お空に流れ星が数条流れていきました。何か色とりどりです。可愛い子が何か燃えてるから良いよとのサインです。盛り上がっているから邪魔するなとかそんな意味も有りそう。



 神様は大らかなんだかズボラ何だか、私、最近分からなくなってきました。まあ、信仰が有ろうとなかろうと、神の力は目減りも増えもしないのです、何を足そうと引こうと無限は無限。あの方に取って人間さんは腕白坊主と一緒、なにをしてもOKなのでしょう。羨ましい限りです。



 親公認なら良いでしょう。ですがこの飲んだくれ集団は如何した事ですか?私、ここまで血酒を供給してませんよ?



 「そこはそれ、奥方の御子供集が手伝ってくれましたな。ここが一番効率が良いとの事で、噴水に血酒をぶち込み、余った月光草と、、、小鬼キノコでしたか?あれを混ぜました。いやぁ、拙僧もやりましたがいい味ですな!水をワインに変えるとは!」



 細かい指示を出せなかかったのが仇になりましたね。混乱を起こせの文言だけ、大暴走してます。頭いてぇ。



 良いやもう。もう少しスマートな案もあったのですが、ここまで言ったらこのままで行きましょう。でっ婿殿は何処に?あなたと一緒では?



 「殿下は先に手勢を率いて宮殿に向かわれましたぞ?ご存じ無かったのですか?」



 わーお。婿殿気張ってるー。ここに来て反乱の血が目覚めたのですかね?そう言うことでしたら、河童!此処の野獣、、、、いえ、信徒を宮殿に向かわせなさい!最終決戦です!



 「承知致しました!遂にこの帝都は聖都に変わる事になるのですね!いざ行かん!立て兄弟姉妹たちよ!聖戦の時はいまぞ!」



 破戒僧、確かに信仰の炎に燃える、火吹き河童が叫び何だか雄叫びなんだか分からない号令を掛けると、周りの野獣集団も吠え声をあげます。忽ち辺りは獣の声に満たされ、燃えるお兄さんとお姉さんたちは、宮殿に走り始めました。四つん這いで、、、、、

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