飽食戦線

ボンジャー

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おじさん、若い子の機械わかんない

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 何事にも裏道と言う物が存在する。



 いがみ合い殺しあう連合枢軸の間にも、中立国を通した最低限の交渉チャンネルと言う物があるのだ。



 そんな中立国を通り、幾人もの人手を渡り、その贈り物は遠く離れた、イマイチ連携の欠ける同盟国である日本から、ドイツに送られた。



 その贈り物、小さな小箱に分けられ、随分と行方知れずを出しながら、五月の初めに届いた贈り物の説明を聞いた総統の第一声は。



 「何言ってんだバーカ!」



 であった。



 だがそんな総統閣下であるが、ドイツ全土で欠乏するカフェインの補充を一瞬で解決されれば、ニコニコ顔でイギリス人が親の仇より憎む黒い溝水を飲もうと言う物だ。



 なんでもコピアルクと言い最高級品であるらしい。毎日飲んでいるので相当に気に入ったのであろう。



 

  カフェインが十分、脳に回った、自分をアーリア人と思い込むゲルマンだがフン族だかの末裔たちは、贈り物の効果的な使い方について短いながらも喧々諤々の議論を行う。



 小箱一つに収まる贈り物なんだろ?とお思いであろう。



 この辺で未来人がどうやって平衡世界から膨大な物資を送っているかをお答えしよう。



 贈り物。日本軍が支那全体でこれでもかと撒き散らし、いまこの瞬間も特大ブラッドソーセージと熱々のダージリンティーに襲われる英軍に噴霧している物体。



 見た目には無色透明な砂にしか見えないその集合体の名をフェムトマシンと言う。



 量子工学と四次元立方工学の粋を集めて作成され、今ではあり触れた、平衡世界の向こうで五千年前の枯れた技術である。



 時代のトレンドは情報の物質化と、感情のエネルギー化と言うのだから恐れ入る。



 そこは置いて置こう。神にも等しい文明等理解出来ようもない。



 ナノマシンを越えて更に小さく複雑で自己増殖を行う、この機械こそが贈り物であり、平衡世界からの転移装置を兼ねている。



 よくグレイグーを起こさないな?



 火星はそれで消えたらしい。であるので問題は解決されているのだろう。



 大日本帝国だってよくわかって使っている訳ではない。なんか凄い新兵器で思考停止しているだけだ。



 危急存亡の時である。使える物なら何でも使おう、そんな感じでなのである。



 だからナチスドイツにも詳しく説明はしない。したってわからないし、解析しようとした所で二十世紀の科学では分かろうはずが無い。一部の科学者は自己増殖の所でピンときて止めようとしたが聞く奴などいない。



 ただ任意で増える超兵器兼食料生産装置との説明。秩父山中に落下した宇宙人の技術だ!位のホラは吹いたようだが。



 ナチスドイツに渡されたのは、一掴みのフェムトの砂、それが転送してきた説明書と操作用のタブレット端末だけ。外付け電脳式や網膜同化脳内操作は流石にこの時代には難しいだろうとの配慮だ。



 傍から見ていい年をした厳めし面のおじさんたちが、おっかなびっくりタブレット操作しているのは笑いを誘うし、それが好悪…悪しかないが…は別として歴史の登場人物なのだから、密かにモニタリングしている成原と田中は爆笑している。



 「今度のコミケはタブレット端末に悪戦苦闘するナチス高官と国防軍将官の写真集で決まりだ!」



 成原は田中の横で叫んでいた。特にああでもない、こうでもないと弄り回す、ヒトラーとナチ高官が面白いとの事。



 一推しは間違って狼の巣がシャンパンの津波に襲われ流されゆくヒトラーらしい。



 隠れて高級チョコを出しては食べているのも良いとの弁。



 

 さて、総統閣下突然のサーフィンと言うトラブルもあったが議論は纏まらない。いまドイツは赤い津波と空からの脅威に絞め殺されようとしている。



 どちらを先に始末するかだ。いかな超兵器を持っていようとそれを敵の所まで持って行かねばならない。筆髭をウォッカで漬け殺すのが先か、禿げ頭をタンニン漬けにするのが先かだ。



 答えは出ないがやる事はやろう。兎も角贈り物の量産計画…その編の土と混ぜてタブレットの生産ボタンを押しただけだだが…は開始されドイツ全土にフェムトマシンは散布される。



 最早余裕はないのだ。国民も尻に火が遂いて総統人気は下がり続けている。いくら宣伝大臣が頑張っても、毎夜B17が爆弾を降らせてくる。



 豪勢な食事を毎日提供!それも党のラベル入り!まだドイツは負けてない!我が党健在!NSDAPです!国家社会主義ドイツ労働者党を宜しく!



 お気づきであろう?この瞬間にドイツは永遠に大日本帝国に金玉を握られたのだ。総統だって気づいてはいる。だが背に腹は代えられない。無限の食料をぶら下げられて飛びつかない奴はいない。



 これが五月の末である。当然の事であるが次は六月だ、であるなら次に来るのは、、、、



 「秋の日のヴィオロンのため息の身にしみてひたぶるにうら悲し」



 結論は出た。英国死すべし。

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