私はウルフ沙織。王子お一人だけを見つめるのはお預けのようです。

西野歌夏

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3ー愛の着地

51 ドギマギしてしまう(王子側の視線)

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 俺は沙織を抱き寄せていた。

 沙織のたもとからのぞいた白い肌に思わずドギマギしてしまい、俺はためらった。なりきる術を使って空を飛んだので、少し袂が乱みだれてしまっていたようだ。沙織の唇に思わず視線が吸い込まれそうになり、俺は慌てて目をそらした。

 ――今日の俺はどうかしている。一気に色々なことが起こりすぎたからだろうか。

 沙織に潤んだ瞳で見つめられるとどうにかしてしまいたくなり、慌てて体を離した。
 どうも調子が狂う。何か急に沙織がとてつもなく愛しい存在に感じてしまい、自分の気持ちを制御できないように思う。

 いや、俺は既に沙織と一緒になりたいのだ、今、自分の気持ちに気づいた。
 ――結婚しよう。けれどもこれほど強い衝動を感じてしまっては、問題がある。沙織の中の吸血鬼度はまだ高いままだ。

 沙織の髪から微かに汗の香りがし、それが微かに俺の鼻をくすぐり、そのまま抱きしめたままではいられなくなりそうな衝動を感じる。

 ――まずい。
 ――俺はまず、沙織の解毒用の特別薬を調合しなければならない。

 俺は沙織の帯を解き、帯がゆかにスルスルと落ちる音を聞いた。浴衣の前を開けて、浴衣はそのままはらりと床に衣ずれの音をさせて落ちた。
 ――でも、よく見えない。
 俺の口づけが止まらない。
 そのままベッドに沙織をベッドに抱えて運ぶ。



 よく見えないけど俺の手が沙織の胸にのあたりに手をかけて、そのまま唇が近づけようとした瞬間……



 ガブリと首を沙織に噛まれた。


 ――えっ!
 よく見えないのに、噛まれたのだけは分かった。


 いつの間にか俺は自分の浴衣も脱ぎ捨てていてほぼ裸で、沙織に抱きしめられて首筋に噛みつかれていた。


 ――嘘だ!


***
 
 そこでハッと目が覚めた。
 夢だった。
 10年前の柳原名誉教授の解毒術の教室にタイムバックして、閉じ込められたんだった。どうにもならなくて、10歳の俺に頼んで部屋で一緒に寝させてもらっていた。俺はソファに寝ていて、夢を見たらしかった。

 ――怖かったなあ。
 ――沙織に噛みつかれるのは本当に怖かった。

 ――とにかく、なんとかして調合薬を完成させなければ。
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