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1.求婚 ダメ。王子の魅力は破壊力があり過ぎ。抵抗は難易度高な模様。
23 半分城の住人に
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魔歴22年の朝、わたしは自分の部屋で目が覚めた。
急いで出勤用の服に着替えた。王子が贈ってくれた服を身につける。そのまま小走りで急いで部屋を出て、城に向かった。 セグウェイは城においてきている。わたしが隣の部屋にはいないことに気づいた王子と五右衛門はどう思うだろう。
わたしは走るように通りを急いだ。
今、ナディアからのゲーム召喚が来てしまったらどうしようと、恐怖がみぞおちあたりに込み上げて来るのを感じる。魔暦のわたしはドラキュラではない。血を求めて誰にも襲いかかろうとは思わない。 おそらく、人間の体だと耐性がないのだ。早くわたしは解毒剤を飲まないと、完璧な令和のドラキュラになってしまうだろう。
そもそも令和でも、わたしが目覚めた多摩川河川敷土手からわたしの部屋は歩ける距離だった。私の部屋から城の王子の部屋までもおそらく徒歩圏内だ。
とにかく、走って走って走って、一気に王子の住む城の城門についた。
門番はわたしの顔を見ると慌てて、門を開けてくれた。秘密のお妃候補と知れ渡るのは良いことが多い。
そのまま城内を走った。わたしとすれ違った衛兵たちは、驚いた表情を浮かべながらも敬礼をしてくれた。
王子の部屋の前に着くと、王子とジョンは二人で崩れるように床で寝ていた。ベッドには子供が寝ている。
良かった。二人はわたしの不在に気づいていなかったようだ。素早く薬をおいてあるはずのカゴを見た。
ーーまだ薬が残っている!
わたしは王子の部屋にあったコップに水を注ぎ、そこに薬を混ぜて一気に飲み干した。
ーーお願い!薬よ効いて!
もう1つだけ、薬をたもとにしまった。念の為、お昼ご飯の時にも飲もうと思ったのだ。
わたしは薬を服用した安堵のあまりに、床にヘタリ込んでいた。
「あ、沙織。おはよ。」
王子とジョンが目を覚ました。
二人は身支度をしたわたしを見て、キョトンとした表情になったが、すぐさまベッドで寝ている子どもの様子を確かめた。
「大丈夫そうだな。」
「ええ、もう大丈夫でしょう。」
「さて、弁当を用意してもらいながら、朝ごはんを食べようか。」
王子は朝ごはんの支度を3人分頼むために、部屋から出て行った。
ジョンは王子が部屋から出て行ったのを見計らって、わたしに聞いてきた。
「夜、どこにいっていた?隣の部屋をのぞいたら沙織はいなかった。王子は知らない。」
「ちょっと城の中を歩いていたわ。眠れなくて。」
ジョンはわたしの顔をじっと見つめていた。わたしの心のブロックは固くしまったままだ。わたしの心をジョンは読めないはずだ。わたしは嘘をついた。令和に生きているとは言えない。誰にも信じられない話なのだから。
「そういえば、沙織、昔のルーブルで首のところに子供からキスされなかったか?」
ジョンははっと思い出したようだ。
「そうなの。だから、さっき薬を飲んだ。夜、眠れなかったのはそのせいかもしれない。」
「そうか。もう1つ薬をお昼に飲んだ方がいいかもしれない。」
「うん。ほら。持っている。」
わたしはニッコリして、たもとからお昼に飲む予定の薬をジョンに出してみせた。
「そうか。なら良かった。」
「ご飯を食べて、奉行所に行こう。」
「そうだね。」
***
わたしが城から出勤するようになって早くも1ヶ月が経った。朝、セグウェイで城に行き、夜もセグウェイで城から部屋に寝るためだけに戻る。つまり、寝る時だけは、自分の部屋で寝るというのを王子に許してもらったのだ。
令和のわたしは、雨の日だけ欲望がときどきうずくのを感じる程度までになった。わたしの中のドラキュラは少しだけ残ったが、日常生活には害がないほどまでに押さえ込まれていた。
魔暦のわたしの服は新しく用意されたものになり、毎日城のお台所が用意してくれる弁当に変わった。
子供を助けて以来、ナディアからの召喚が止まっていた、子供はすっかり元気になり、金髪の髪のくるくるの髪の毛も伸びたので、数日前にわたしが散髪してあげたばかりだった。子供はフィリップスという名だった。
「沙織!」
「フィリップス!危ないから戻って!」
わたしが毎朝セグウェイで奉行所に出勤しようとすると、一緒にセグウェイに乗ろうとフィリップスは追いかけてくるのだ。
「フィリップス!」
王子がうまくフィリップスの小さな体を抱き止めてくれて、わたしはその隙にセグウェイで飛び上がり、衛兵に守られて奉行所に向かった。
青い空のもと奉行所まで飛んでいると、セグウェイで出勤していくいろんな人とすれ違った。
わたしがお妃候補であることは、まだ秘密だった。会社の上司陣も黙って見守ってくれていた。
王子とはあれから6回キスをした。なので、全部で8回キスをした。それ以上の進展はまだない。まだだ。最後のキスはフィリップスが駆け寄ってきたから慌ててやめた、中庭の木陰でだった。
わたしたちはフィリップスを救うのに必死だったし、フィリップスが元気になると、わたしは仕事で忙しかった。
王子はフィリップスがそばにいると、なぜわたしが命を狙われることになったのかの話の続きを聞いてこなかった。わたしもあまり自分から言いたい話ではないので黙っていた。
急いで出勤用の服に着替えた。王子が贈ってくれた服を身につける。そのまま小走りで急いで部屋を出て、城に向かった。 セグウェイは城においてきている。わたしが隣の部屋にはいないことに気づいた王子と五右衛門はどう思うだろう。
わたしは走るように通りを急いだ。
今、ナディアからのゲーム召喚が来てしまったらどうしようと、恐怖がみぞおちあたりに込み上げて来るのを感じる。魔暦のわたしはドラキュラではない。血を求めて誰にも襲いかかろうとは思わない。 おそらく、人間の体だと耐性がないのだ。早くわたしは解毒剤を飲まないと、完璧な令和のドラキュラになってしまうだろう。
そもそも令和でも、わたしが目覚めた多摩川河川敷土手からわたしの部屋は歩ける距離だった。私の部屋から城の王子の部屋までもおそらく徒歩圏内だ。
とにかく、走って走って走って、一気に王子の住む城の城門についた。
門番はわたしの顔を見ると慌てて、門を開けてくれた。秘密のお妃候補と知れ渡るのは良いことが多い。
そのまま城内を走った。わたしとすれ違った衛兵たちは、驚いた表情を浮かべながらも敬礼をしてくれた。
王子の部屋の前に着くと、王子とジョンは二人で崩れるように床で寝ていた。ベッドには子供が寝ている。
良かった。二人はわたしの不在に気づいていなかったようだ。素早く薬をおいてあるはずのカゴを見た。
ーーまだ薬が残っている!
わたしは王子の部屋にあったコップに水を注ぎ、そこに薬を混ぜて一気に飲み干した。
ーーお願い!薬よ効いて!
もう1つだけ、薬をたもとにしまった。念の為、お昼ご飯の時にも飲もうと思ったのだ。
わたしは薬を服用した安堵のあまりに、床にヘタリ込んでいた。
「あ、沙織。おはよ。」
王子とジョンが目を覚ました。
二人は身支度をしたわたしを見て、キョトンとした表情になったが、すぐさまベッドで寝ている子どもの様子を確かめた。
「大丈夫そうだな。」
「ええ、もう大丈夫でしょう。」
「さて、弁当を用意してもらいながら、朝ごはんを食べようか。」
王子は朝ごはんの支度を3人分頼むために、部屋から出て行った。
ジョンは王子が部屋から出て行ったのを見計らって、わたしに聞いてきた。
「夜、どこにいっていた?隣の部屋をのぞいたら沙織はいなかった。王子は知らない。」
「ちょっと城の中を歩いていたわ。眠れなくて。」
ジョンはわたしの顔をじっと見つめていた。わたしの心のブロックは固くしまったままだ。わたしの心をジョンは読めないはずだ。わたしは嘘をついた。令和に生きているとは言えない。誰にも信じられない話なのだから。
「そういえば、沙織、昔のルーブルで首のところに子供からキスされなかったか?」
ジョンははっと思い出したようだ。
「そうなの。だから、さっき薬を飲んだ。夜、眠れなかったのはそのせいかもしれない。」
「そうか。もう1つ薬をお昼に飲んだ方がいいかもしれない。」
「うん。ほら。持っている。」
わたしはニッコリして、たもとからお昼に飲む予定の薬をジョンに出してみせた。
「そうか。なら良かった。」
「ご飯を食べて、奉行所に行こう。」
「そうだね。」
***
わたしが城から出勤するようになって早くも1ヶ月が経った。朝、セグウェイで城に行き、夜もセグウェイで城から部屋に寝るためだけに戻る。つまり、寝る時だけは、自分の部屋で寝るというのを王子に許してもらったのだ。
令和のわたしは、雨の日だけ欲望がときどきうずくのを感じる程度までになった。わたしの中のドラキュラは少しだけ残ったが、日常生活には害がないほどまでに押さえ込まれていた。
魔暦のわたしの服は新しく用意されたものになり、毎日城のお台所が用意してくれる弁当に変わった。
子供を助けて以来、ナディアからの召喚が止まっていた、子供はすっかり元気になり、金髪の髪のくるくるの髪の毛も伸びたので、数日前にわたしが散髪してあげたばかりだった。子供はフィリップスという名だった。
「沙織!」
「フィリップス!危ないから戻って!」
わたしが毎朝セグウェイで奉行所に出勤しようとすると、一緒にセグウェイに乗ろうとフィリップスは追いかけてくるのだ。
「フィリップス!」
王子がうまくフィリップスの小さな体を抱き止めてくれて、わたしはその隙にセグウェイで飛び上がり、衛兵に守られて奉行所に向かった。
青い空のもと奉行所まで飛んでいると、セグウェイで出勤していくいろんな人とすれ違った。
わたしがお妃候補であることは、まだ秘密だった。会社の上司陣も黙って見守ってくれていた。
王子とはあれから6回キスをした。なので、全部で8回キスをした。それ以上の進展はまだない。まだだ。最後のキスはフィリップスが駆け寄ってきたから慌ててやめた、中庭の木陰でだった。
わたしたちはフィリップスを救うのに必死だったし、フィリップスが元気になると、わたしは仕事で忙しかった。
王子はフィリップスがそばにいると、なぜわたしが命を狙われることになったのかの話の続きを聞いてこなかった。わたしもあまり自分から言いたい話ではないので黙っていた。
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