29 / 84
1.求婚 ダメ。王子の魅力は破壊力があり過ぎ。抵抗は難易度高な模様。
20 仕事おわりにワープ
しおりを挟む
「ねえ、沙織さんってば。」
わたしは二ノ宮さんから強めに話しかけられて、ハッとして顔をあげた。
「さっきから声かけているのに、反応しないんだもん。」
二ノ宮さんは、不服そうな心配そうな複雑な表情でわたしを見つめていた。
「ごめんなさいっ!ちょっと疲れていて、申し訳ないです。」
ゲームに使われているタイムスリップ技術について考えているうちに、いつしか手元は止まり、寝ているような考えているようなぼうっとした状態になっていたようだ。
二ノ宮さんはわたしに栄養ドリンクをくれた。疲れた顔をしているから気遣っているのだろう。わたしは素直に礼を言って、その場ですぐに飲んだ。疲れているのは間違いないのだから。
それから思い出したように、王子に差し入れてもらったイチゴの乗ったケーキを美味しくいただいた。飲み物は奉行所のただのお茶だ。信じられないほど甘くて美味しかった。城には、とんでもなく腕のいい料理人が揃っているようだ。
わたしは術の一つである『縮地之秘法』という術とは全く違うタイムスリップ技術について考えるのはすっぱりやめた。仕事に集中しなければならない。
こうして午後の時間は平和に過ぎていった。
今日は部屋に帰ったら仮眠しよう。そう心に決めた。一旦は体力回復に努めよう。城に行くのを断るかどうか、それからよく考えよう。また多摩川の河川敷の土手で目が覚めて良いとは思えなかった。令和の東京が雨という可能性もある。昨日、寝る前に天気予報をチェックするのを忘れていた。
「お疲れさまー」
二ノ宮さんはみんなに真っ先に声をかけて帰宅して行った。
「お疲れっす。」
「おつかさまです!」
あちこちで声がかかり始めて、みんなが帰りはじめた。わたしはその波に乗ってさっさと帰る支度をはじめた。仕事中のサンダルから、今朝、服と一緒に王子が用意してくれていた高そうなブーツに履き替えて、弁当箱の包みを手にセグウェイ置き場まで急いだ。
新品のセグウェイ。王子がプレゼントしてくれたセグウェイ。わたしの心は浮き立った。後ろからジョンが追ってきて、セグウェイ乗り場にやってきた。
「王子は気前がいいな。」
「そう。服もブーツもそうだから、気前がいいよね。ありがたいよね。」
「いいところあるよな。王子って。」
ジョンは素直に王子を褒めた。
ピンク色の夕暮れが広がる空に向かって、他の翼竜が飛び交う中、二人で一気にセグウェイに乗って飛びたった。ジョンの乗るセグウェイがピタリとわたしの乗るセグウェイの横に並んでいる。
「気持ちいいっ!」
「うん。地球ってやっぱ最高だよな。」
すぐさま護衛の衛兵の乗るプテラノドンが、わたしのそばに空中で駆け寄ってきた。空中でかけよるとは変な表現だが、他に言いようがない。奉行所の終了時刻に合わせて待機してくれていたようだ。
一緒に飛び始めようとしたそのときだ。強い力で何かにぐわんとつかまれた。夕暮れの空がゆがむ。何かに引っ張られて沈む。
「ゲーム召喚っ!」
わたしはジョンに向かって小さく叫び、ジョンがセグウェイから手を離してわたしに飛びついた。その瞬間、二人でぐうっと暗闇に引きずられて、はるか昔の地球にワープした。
目を開けると、昔のパリのルーブル美術館の前身の館の前にいた。
――十三世紀?十四世紀?十五世紀?
――ここは一体いつだ?
わたしは二ノ宮さんから強めに話しかけられて、ハッとして顔をあげた。
「さっきから声かけているのに、反応しないんだもん。」
二ノ宮さんは、不服そうな心配そうな複雑な表情でわたしを見つめていた。
「ごめんなさいっ!ちょっと疲れていて、申し訳ないです。」
ゲームに使われているタイムスリップ技術について考えているうちに、いつしか手元は止まり、寝ているような考えているようなぼうっとした状態になっていたようだ。
二ノ宮さんはわたしに栄養ドリンクをくれた。疲れた顔をしているから気遣っているのだろう。わたしは素直に礼を言って、その場ですぐに飲んだ。疲れているのは間違いないのだから。
それから思い出したように、王子に差し入れてもらったイチゴの乗ったケーキを美味しくいただいた。飲み物は奉行所のただのお茶だ。信じられないほど甘くて美味しかった。城には、とんでもなく腕のいい料理人が揃っているようだ。
わたしは術の一つである『縮地之秘法』という術とは全く違うタイムスリップ技術について考えるのはすっぱりやめた。仕事に集中しなければならない。
こうして午後の時間は平和に過ぎていった。
今日は部屋に帰ったら仮眠しよう。そう心に決めた。一旦は体力回復に努めよう。城に行くのを断るかどうか、それからよく考えよう。また多摩川の河川敷の土手で目が覚めて良いとは思えなかった。令和の東京が雨という可能性もある。昨日、寝る前に天気予報をチェックするのを忘れていた。
「お疲れさまー」
二ノ宮さんはみんなに真っ先に声をかけて帰宅して行った。
「お疲れっす。」
「おつかさまです!」
あちこちで声がかかり始めて、みんなが帰りはじめた。わたしはその波に乗ってさっさと帰る支度をはじめた。仕事中のサンダルから、今朝、服と一緒に王子が用意してくれていた高そうなブーツに履き替えて、弁当箱の包みを手にセグウェイ置き場まで急いだ。
新品のセグウェイ。王子がプレゼントしてくれたセグウェイ。わたしの心は浮き立った。後ろからジョンが追ってきて、セグウェイ乗り場にやってきた。
「王子は気前がいいな。」
「そう。服もブーツもそうだから、気前がいいよね。ありがたいよね。」
「いいところあるよな。王子って。」
ジョンは素直に王子を褒めた。
ピンク色の夕暮れが広がる空に向かって、他の翼竜が飛び交う中、二人で一気にセグウェイに乗って飛びたった。ジョンの乗るセグウェイがピタリとわたしの乗るセグウェイの横に並んでいる。
「気持ちいいっ!」
「うん。地球ってやっぱ最高だよな。」
すぐさま護衛の衛兵の乗るプテラノドンが、わたしのそばに空中で駆け寄ってきた。空中でかけよるとは変な表現だが、他に言いようがない。奉行所の終了時刻に合わせて待機してくれていたようだ。
一緒に飛び始めようとしたそのときだ。強い力で何かにぐわんとつかまれた。夕暮れの空がゆがむ。何かに引っ張られて沈む。
「ゲーム召喚っ!」
わたしはジョンに向かって小さく叫び、ジョンがセグウェイから手を離してわたしに飛びついた。その瞬間、二人でぐうっと暗闇に引きずられて、はるか昔の地球にワープした。
目を開けると、昔のパリのルーブル美術館の前身の館の前にいた。
――十三世紀?十四世紀?十五世紀?
――ここは一体いつだ?
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

聖女の幼なじみ
野原もな
ファンタジー
初めての作品になります。
どうか、広い心でお読みください。
ここは精霊や魔物もいるきらきらした世界だ。
そんな世界で変なゲームのような記憶を思い出し、聖女の幼なじみと友達になったエレアの物語です。
裏側もあります。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
蕾令嬢は運命の相手に早く会いたくて待ち遠しくて、やや不貞腐れていました
しろねこ。
恋愛
ヴィオラは花も恥じらう16歳の乙女なのだが、外見は10歳で止まっている。
成長するきっかけは愛する人と共に、花の女神像の前に立ち、愛を誓う事。
妹のパメラはもう最愛の者を見つけて誓い合い、無事に成長して可憐な花の乙女になった。
一方ヴィオラはまだ相手の目処すら立っていない。
いや、昔告白を受け、その子と女神様の前で誓いを立てようとしたのだけれど……結果は残念な事に。
そうして少女の姿のまま大きくなり、ついたあだ名は『蕾令嬢』
このまま蕾のままの人生なのか、花が咲くのはいつの日になるのか。
早く大きくなりたいのだけど、王子様はまだですか?
ハッピーエンドとご都合主義と両想い溺愛が大好きです(n*´ω`*n)
カクヨムさんでも投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる