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1.求婚 ダメ。王子の魅力は破壊力があり過ぎ。抵抗は難易度高な模様。
出会い(桜の咲く季節に)
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その日は風が少し強くて、とても天気が良い日だった。春の日差しを浴びて街路の木々も気持ちよさそうに葉を揺らしていた。桜の木にはピンク色の桜の花が咲いていた。
「うらやましいなあ」
わたしはセグウェイを飛ばして桜の木の上を飛んで帰る同僚たちをうらやましく思いながらぼうっと眺めていた。わたしが立っている街路樹のそばには買ってきたばかりのマンゴリランとアヤツリンゴの入った袋が置いてある。高級デパート鷹ホーの袋で、私は人生で初めてその袋を手にした。
小高い丘に立ち、私は奉行所からセグウェイで帰る同僚たちをぼうっと眺めていた。
初めて高級デパートで買い物をした帰りで、わたしの気持ちは少し高揚していたのだと思う。気持ちの落ち込む母を慰めるために、奮発して高いフルーツを買ったのだ。
わたしは誰も見ていないことを確かめてから、得意のなりきる術を使った。オオワシになったのだ。
「よっし、本物とわたしを比べてみよう。」
遠くを飛ぶオオワシと自分とで比べてみたくなり、そのまま空に飛び上がった。そして大きな森の中の木の麓で、野性のオオワシたちに混ざって歩き回っていた。
そこでいきなりナディアにとびかかられたのだ。
「きゃあっ」
びっくりしたわたしは背中にナディアを乗せたまま飛び上がった。そのまま飛行した。
ナディアは頭になにかカメラのようなものがついたバングルをつけていて、種族として忍びではなかった。わたしのことを本物のオオワシと勘違いしているようだった。
わたしはナディアに指示されるがまま、木の根元に飛び降りた。そしてまた飛び上がっては飛び回るというのを繰り返した。
そうしてしばらくたったころだ。わたしは「カメラアプリミッションクリアしました」という声を聞いた。ナディアの頭についたカメラが確かにそう言うのを聞いた。
その瞬間に自分が鷹ホーの袋を置いた街路樹の前に再び立っていることに気づいた。すぐさま鷹ホーの袋の中を確かめた。わたしが買った果物はちゃんと袋の中に入ったままだった。
「今のはなんだった?」
わたしは困惑してそうつぶやいたのを覚えている。なんだかわけの分からないことに巻き込まれたと感じて、トボトボそのまま歩いて家まで帰った。
これが禁じられたゲーム召喚だと気づいたのは、2回目にナディアから呼ばれた時だった。
どうやらナディアがゲームの中で助けを求めると、わたしが毎回呼ばれることになったらしいと気づいたのは、3回目のゲームに参戦したときだ。
***
わたしが王子に話した内容はここまでだ。
クローゼットいっぱいの素敵な新しい服と真新しいセグウェイをプレゼントされた代わりに、王子には話した。
わたしがお昼休みに城のお台所が用意してくれたお弁当をもって、奉行所の天井桟敷に行くと、そこには王子がすでにやってきて待っていたのだ。
王子はバレないように変装してやってきていた。頭にはカツラをかぶって漆黒の髪を隠していた。だて眼鏡をかけていた。服装も普通の街で買える既製服の忍び服を着ていた。
ガヤガヤと奉行所に勤める人たちが天井桟敷のオープンスペースまでやってきて、当たりがにぎやかになるまでには、早口でナディアとわたしの出会いについて、王子に説明し終わった。
広げられた艶やかな五段弁当をパクパク食べながら、王子はわたしの話を聞いていた。王子は遅れてやってきたジョンに手をあげてきさくにあいさつした。
「よっ、ジョン。」
「え、いらしていたんですか。」
「うちのシンデレラガールに変な虫がつかないように、ね。」
王子はフッと笑いながら言った。
「確かに、美人はシンデレラガールでしたね。」
ジョンは綺麗なふわふわの黄色い卵焼きをつまみながら言った。そして王子はグッと身を近づけてきて、わたしにささやいた。
「なんで命が狙われているのかの具体的な理由までは聞いていないんだけど。」
「それは。」
「まだ、話していないんだ。話すべき。」
黙り込んだわたしの顔をチラッとジョンは見て、お弁当箱のエビを手に取りながら言った。
王子には話したくないような気持ちがあった。それがなぜなのかはわたしも分からなかった。
「うらやましいなあ」
わたしはセグウェイを飛ばして桜の木の上を飛んで帰る同僚たちをうらやましく思いながらぼうっと眺めていた。わたしが立っている街路樹のそばには買ってきたばかりのマンゴリランとアヤツリンゴの入った袋が置いてある。高級デパート鷹ホーの袋で、私は人生で初めてその袋を手にした。
小高い丘に立ち、私は奉行所からセグウェイで帰る同僚たちをぼうっと眺めていた。
初めて高級デパートで買い物をした帰りで、わたしの気持ちは少し高揚していたのだと思う。気持ちの落ち込む母を慰めるために、奮発して高いフルーツを買ったのだ。
わたしは誰も見ていないことを確かめてから、得意のなりきる術を使った。オオワシになったのだ。
「よっし、本物とわたしを比べてみよう。」
遠くを飛ぶオオワシと自分とで比べてみたくなり、そのまま空に飛び上がった。そして大きな森の中の木の麓で、野性のオオワシたちに混ざって歩き回っていた。
そこでいきなりナディアにとびかかられたのだ。
「きゃあっ」
びっくりしたわたしは背中にナディアを乗せたまま飛び上がった。そのまま飛行した。
ナディアは頭になにかカメラのようなものがついたバングルをつけていて、種族として忍びではなかった。わたしのことを本物のオオワシと勘違いしているようだった。
わたしはナディアに指示されるがまま、木の根元に飛び降りた。そしてまた飛び上がっては飛び回るというのを繰り返した。
そうしてしばらくたったころだ。わたしは「カメラアプリミッションクリアしました」という声を聞いた。ナディアの頭についたカメラが確かにそう言うのを聞いた。
その瞬間に自分が鷹ホーの袋を置いた街路樹の前に再び立っていることに気づいた。すぐさま鷹ホーの袋の中を確かめた。わたしが買った果物はちゃんと袋の中に入ったままだった。
「今のはなんだった?」
わたしは困惑してそうつぶやいたのを覚えている。なんだかわけの分からないことに巻き込まれたと感じて、トボトボそのまま歩いて家まで帰った。
これが禁じられたゲーム召喚だと気づいたのは、2回目にナディアから呼ばれた時だった。
どうやらナディアがゲームの中で助けを求めると、わたしが毎回呼ばれることになったらしいと気づいたのは、3回目のゲームに参戦したときだ。
***
わたしが王子に話した内容はここまでだ。
クローゼットいっぱいの素敵な新しい服と真新しいセグウェイをプレゼントされた代わりに、王子には話した。
わたしがお昼休みに城のお台所が用意してくれたお弁当をもって、奉行所の天井桟敷に行くと、そこには王子がすでにやってきて待っていたのだ。
王子はバレないように変装してやってきていた。頭にはカツラをかぶって漆黒の髪を隠していた。だて眼鏡をかけていた。服装も普通の街で買える既製服の忍び服を着ていた。
ガヤガヤと奉行所に勤める人たちが天井桟敷のオープンスペースまでやってきて、当たりがにぎやかになるまでには、早口でナディアとわたしの出会いについて、王子に説明し終わった。
広げられた艶やかな五段弁当をパクパク食べながら、王子はわたしの話を聞いていた。王子は遅れてやってきたジョンに手をあげてきさくにあいさつした。
「よっ、ジョン。」
「え、いらしていたんですか。」
「うちのシンデレラガールに変な虫がつかないように、ね。」
王子はフッと笑いながら言った。
「確かに、美人はシンデレラガールでしたね。」
ジョンは綺麗なふわふわの黄色い卵焼きをつまみながら言った。そして王子はグッと身を近づけてきて、わたしにささやいた。
「なんで命が狙われているのかの具体的な理由までは聞いていないんだけど。」
「それは。」
「まだ、話していないんだ。話すべき。」
黙り込んだわたしの顔をチラッとジョンは見て、お弁当箱のエビを手に取りながら言った。
王子には話したくないような気持ちがあった。それがなぜなのかはわたしも分からなかった。
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