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1.求婚 ダメ。王子の魅力は破壊力があり過ぎ。抵抗は難易度高な模様。
11 賞金ハンターの誤算
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奉行所に戻ると、ちょっとしたパニックが待っていた。
奥奉行が奉行所にやってきたようだ。役員が集められ、そこにわたしの上司も入れられて、会議室から一時間余り誰も出てこないという状況のようだった。そこにちょうど私とジョンが奉行所に戻ってきたということらしかった。
私は奉行所につくなりぐちょぐちょのブーツを脱いだ。そして、仕事中にはくために奉行の机の下に置きっぱなしにしているサンダルに履きかえた。
隠れてこっそり、ついでに足も洗った。
「ねえねえ。一体何の用で奥奉行がやって来たのかしら?」
席につくなり、皆がその話題でコソコソ話しているのに気づいたが、知らんぷりした。
奥奉行が戻ると案の定、わたしは上司に呼ばれた。
内線電話がかかってきて、かなり丁寧な口調で上階の会議室に呼ばれた。
「わかりました。」
私は席をたち、スタスタと上階の会議室まで行った。おそらくパニックになった上司は、私の口からも事実を聞こうとしているのだろう。
「失礼します。ええっ?」
私は指定された会議室をノックすると、静かに中に入った。そこには役員一同がひれ伏した状態で待ち構えていた。驚いた私が思わず後ずさると、静かに後ろのドアが誰かによって閉められた。うちの上司も後ろの方で縮こまってひれ伏している。
「沙織さま。このたびはおめでとうございます。」
「あの、顔を上げてくださいっ!そんな、まだ結婚すると決まったわけではございませぬので。」
「ご結婚の申し込みをお断りなされたと言うのは誠ですか?奥奉行は、王子が結婚の申し込みをされたが、沙織さんがいったんお断りなされたので、お妃候補というのを内密にして欲しいと言っていましたっ!」
そういう所長はすごい形相だ。ひれ伏して敬っているのか、王子の結婚の申し込みを断った不届きものの部下に説教をたれているのか、もはや分からない剣幕だ。
「いや、その、断ったわけではなく・・・」
私がしどろもどろでそう言うと、ぱあっと顔を輝かせた役員たちが一斉にほほえんだ。
「じゃあっ!まもなく正式にご婚約でらっしゃいますねっ!ほほっ!」
一番若い女性役員が先走ったことを口走った。
「そうだな」
「そうですね」
「いやあ、めでたいっ!」
「早く公表できる日が待ち遠しいっ!」
会議室中で先走っためでたい雰囲気があれれかえる中で、私はなんでこうなったという想いで、あとずさった。
王子は婚約を既成事実にしようとしているな・・・な、なぜ、そんなに急ぐの?
ゲームに参加したいだけのはずなのに、なぜ正式に婚約まで必要なのか、本当に意味が分からない。
私は会議室に入る前と違った気持ちで、会議室を後にした。
完全に誤算だ。契約はしたが、本当に正式に婚約するつもりはないと思っていた。それなのに私の職場にもう伝えてしまっている。
こうなったら、何がなんでも早くゲーム召喚を消化しよう。目標額を手に入れたら、お妃候補の座から速やかに降りよう。そうでなければ、何かまずいことが起きそうだ。
私は王子のお姿を思い出して、くらっときてしまった。あんな人が私の彼氏ならば、この世は卒倒しそうなレベルの浮世ということになる。私がそんな位置に辿り着こうとした途端に、何か阻止しようとした動きが起こるに違いない。貧乏な私にそんな大役が正式に回ってくるはずがない。
職場の周囲の期待値の高さに目眩を覚えながら、私は慎ましいおにぎりとパンを奉行所のただのコーヒーで流し込んだ。
奥奉行が奉行所にやってきたようだ。役員が集められ、そこにわたしの上司も入れられて、会議室から一時間余り誰も出てこないという状況のようだった。そこにちょうど私とジョンが奉行所に戻ってきたということらしかった。
私は奉行所につくなりぐちょぐちょのブーツを脱いだ。そして、仕事中にはくために奉行の机の下に置きっぱなしにしているサンダルに履きかえた。
隠れてこっそり、ついでに足も洗った。
「ねえねえ。一体何の用で奥奉行がやって来たのかしら?」
席につくなり、皆がその話題でコソコソ話しているのに気づいたが、知らんぷりした。
奥奉行が戻ると案の定、わたしは上司に呼ばれた。
内線電話がかかってきて、かなり丁寧な口調で上階の会議室に呼ばれた。
「わかりました。」
私は席をたち、スタスタと上階の会議室まで行った。おそらくパニックになった上司は、私の口からも事実を聞こうとしているのだろう。
「失礼します。ええっ?」
私は指定された会議室をノックすると、静かに中に入った。そこには役員一同がひれ伏した状態で待ち構えていた。驚いた私が思わず後ずさると、静かに後ろのドアが誰かによって閉められた。うちの上司も後ろの方で縮こまってひれ伏している。
「沙織さま。このたびはおめでとうございます。」
「あの、顔を上げてくださいっ!そんな、まだ結婚すると決まったわけではございませぬので。」
「ご結婚の申し込みをお断りなされたと言うのは誠ですか?奥奉行は、王子が結婚の申し込みをされたが、沙織さんがいったんお断りなされたので、お妃候補というのを内密にして欲しいと言っていましたっ!」
そういう所長はすごい形相だ。ひれ伏して敬っているのか、王子の結婚の申し込みを断った不届きものの部下に説教をたれているのか、もはや分からない剣幕だ。
「いや、その、断ったわけではなく・・・」
私がしどろもどろでそう言うと、ぱあっと顔を輝かせた役員たちが一斉にほほえんだ。
「じゃあっ!まもなく正式にご婚約でらっしゃいますねっ!ほほっ!」
一番若い女性役員が先走ったことを口走った。
「そうだな」
「そうですね」
「いやあ、めでたいっ!」
「早く公表できる日が待ち遠しいっ!」
会議室中で先走っためでたい雰囲気があれれかえる中で、私はなんでこうなったという想いで、あとずさった。
王子は婚約を既成事実にしようとしているな・・・な、なぜ、そんなに急ぐの?
ゲームに参加したいだけのはずなのに、なぜ正式に婚約まで必要なのか、本当に意味が分からない。
私は会議室に入る前と違った気持ちで、会議室を後にした。
完全に誤算だ。契約はしたが、本当に正式に婚約するつもりはないと思っていた。それなのに私の職場にもう伝えてしまっている。
こうなったら、何がなんでも早くゲーム召喚を消化しよう。目標額を手に入れたら、お妃候補の座から速やかに降りよう。そうでなければ、何かまずいことが起きそうだ。
私は王子のお姿を思い出して、くらっときてしまった。あんな人が私の彼氏ならば、この世は卒倒しそうなレベルの浮世ということになる。私がそんな位置に辿り着こうとした途端に、何か阻止しようとした動きが起こるに違いない。貧乏な私にそんな大役が正式に回ってくるはずがない。
職場の周囲の期待値の高さに目眩を覚えながら、私は慎ましいおにぎりとパンを奉行所のただのコーヒーで流し込んだ。
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