夫である伯爵に裏切られましたが、王家に輿入れすることになりました

チェスターの同志（３）

　俺は、残りの待ち時間の全てを彼女と夢中になって話し込んだ。時間を忘れて女性と話し込んだのは生まれて初めてだ。

　俺の身に起きたキャロラインにまつわる出来事を全て彼女に話した。彼女は夢中になった。

「また会えるかしら？あなたの体に彼女がくることはあるかしら？」
「うーん、キャロラインが危機的状況に陥ったときに起こるみたいだ。最初は馬車に轢かれそうになった時、次は襲われたとき、次も荒くれどもに襲われた時だったしね」

「いやん、会いたいわ。また会える確率があるってことよね？」
「まあ、なくはないな。俺もその時に備えてドレスを着て格闘技の練習とかしているし」
「あら、私の衣装を貸すわよ」
「いいの？」
「もちろん！」
「助かるよ！」

　俺たちは思わず抱き合って、喜んだ。

　彼女はまたキャロラインに会えるかもという期待に胸を膨らませて。俺はドレスを着て本格的に格闘技の練習ができる期待に胸を弾ませて。

「同盟を結んだわよ」
「俺たちな」

　俺たちは握手した。生まれて初めてできた女性の友達だ。俺は不思議な感覚にワクワクしていた。

「さあ、準備ができました」

　スタッフが小部屋に入ってきたのはその時だ。

　高い塔からワイヤーで釣られて一気に駆け降りるワイヤーアクションを、俺とビッグスターはこれからやるのだ。

　俺とビッグスターはハイタッチして「よろしく」とお互いに言って、プロの顔にサッとなった。